- 本 ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041305263
作品紹介・あらすじ
社会を批判したせいで土に植えられ樹木化してしまった妻との別れ。誰も関心を持たなくなったオリンピックで黙々と走る男。現代人の心の奥底に沈んでいた郷愁、感傷、抒情を解き放つ心地よい短篇集。
感想・レビュー・書評
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リリカルと言うよりはシニカルなのでは…と思う作品も多かったです。
表題作と『わが良き狼』が良かったです。ウルフとマーティが切ない…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(Mixiより, 2010年)
静かな筒井ブーム到来してます。筒井作品はこれで2冊目という初心者ながら、作者の文章の上手さに驚かされました。まったく小難しくなく、あくまでエンターテイメント作品なんだけど、安っぽい所のない絶妙な質感。今作は尺も短く、ラストにオチがつくショートショートの色合いが強い作品が多いと感じたのですが、星新一作品にはない叙情性が一つ加味され、なんとも大人な味わいになっているなーという印象。好きなのは「底流」「ヒッピー」のような猛烈なおしゃべり小説。 圧倒的な字面に混乱させられる感覚がたまりません。 -
97年までの作品はそれこそ全部読み尽くした筒井好きだったが、その後はぷっつりだった(満足してしまったのだ)。最近、筒井の名前を(時評含め、パプリカ、時かけetc)聞く事が多く、また読みたくなって、買った。
それぞれ何時ごろの作品か明示していないが、ほとんどは読んだ記憶があった。そういうものは冒頭の3行で思い出せた。筒井は、どれもが筒井の文体なのに、作品だけの文体がある。すごさだな、と思う。
『下の世界』の最後の一行に、ガツンといかれた記憶を思い出した――いまでは、トオルをまるで自分みたく感じる。『走る男』の、オリンピックの事務員に以前感じた索莫としたやるせなさを、「こうならないように時代をどうにかしよう」と前向きに捉えられるのは、以前に読んだ10代の頃限定の特権だな、と思った――このやるせなさに、いまは暖かみすら感じる。
あの頃の自分の一番、はふたつあった。『わが良き狼』と『佇む人』だった。
涙が出た。感想は書けない。10年後に、もう一度読もうと思った。
6年ほど前か、高校生の頃読んだ時、分かったつもりになっていた事が、今度は「しっかりと」、「まだ」分からないと感じられた。掴めないなりに泣かせる(6年前と同じく)ものがあった。
小説には、ワインと同じで、読むべき時があると思う。
この2つの作品を、本当に味わうには、どこか若いな、自分、と思えた。
僕は、筒井でよく笑ったのとたぶん同じくらい、よく考えて、よく泣いた。『懲戒の部屋』で怯えて泣いたし、『霊長類、南へ』で茫然として泣いた。『俗物図鑑』でも感動で泣いた。これは変だと思うが、ともかくビル屋上に孤立し、最期の時まで、全くもってよくわからない世間に立ち向かいながら、屹立して死んでいく俗物の姿に泣かされた。
『七瀬ふたたび』や『旅のラゴス』でも、やっぱり泣いた。リリカル筒井と言えば、長編ではこのふたつだと思う。
自分が筒井に、そのリリカルを銘打った短編集で何を求めたかというと、20も半ばになって、でももう一度泣かせて欲しかったのだ――そしてこの短編集は、この上なく、期待通りだった。 -
四角い顔した昭和おじさんの夢物語(ほめてる)。
きもかわいく愛おしい短編集。
「きつね」「睡魔のいる夏」が良かった。
それにしても、皆さん、奥様大好きで微笑ましい。 -
荒唐無稽な設定ばかりなのに、どの物語も人間が生き生きと描かれていて、荒唐無稽だと思わせない。感傷的でありながら、じめっとしすぎない。それでいて共感できて入り込める。特に表題作「佇む人」は今まさに読むべき。
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好みの問題かもしれませんが、あまり面白くなかったです。これはっていう作品が一つもなくて。
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読了 2021
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ぐれ健が戻った
碧い底
睡魔のいる夏
わかれ
死を経験し死後を見てきたかのような小説 -
無常と不浄
下の世界 -
はじめて筒井康隆を読んだ。星新一みたいなショートショート。とくに説明のない日常風味に(当然でしょ?という雰囲気で)異世界という世界観を理解させるのがうまい。それは星新一といっしょだが、星新一は現代からみた落語的なオチがつくのに対して、筒井康隆は異世界が異世界に閉じているままおわるのが新鮮だった。
ショートショートはお話によって違う世界観を理解するので疲れる・・・
印象に残った話
・わが良き狼
物語になるような宇宙海賊が年をとって故郷に帰ってくる話。雰囲気的に宮崎駿のシャーロック・ホームズ思い出した。狼。。。
・母子像
買ってきたさるのおもちゃが異次元空間に母子をひきずりこんでしまう話。夫は懸命に取り戻そうとするが・・・。めっちゃくちゃ怖くなった。総毛立った。
著者プロフィール
筒井康隆の作品





