くさり ホラー短篇集 (角川文庫)

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  • 本 ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041305270

作品紹介・あらすじ

地下にある父親の実験室をめざす盲目の少女。ライフルを手に錯乱した肥満の女流作家。銀座のクラブに集った硫黄島での戦闘経験者。シリアスからドタバタまで、おぞましくて痛そうで不気味な恐怖体験が炸裂。

感想・レビュー・書評

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  • ホラーとしてはそこまでの怖さはないけど、
    ショートショートとしての切れ味は抜群によかったので好き

    1ページものもあれば、
    30ページ強のものもあり、
    バリエーションに富んでる

  • 31歳の男が本に触れてこなかった事、本への苦手意識がある事を60歳の上司に話した所、勧められたのが筒井康隆作品。
    「映画はどんなのが好き?」と聞かれ、好みを伝えたところ、「ホラーの短編なんかいいんじゃない?」と言われ、言われるがままに本作を購入。
    親世代が勧めてくる物だろうし、どうせ古臭い、読みにくいような物なんだろうと高を括っていた所、一つ目の「生きている脳」から、古臭さなど微塵も感じない設定と、シチュエーションが目に浮かぶような読みやすさに驚き、気がつけばそのまま読了してしまっていた。
    この短編集がきっかけとなり、今では様々なジャンルの本に食指が動いている。
    本への苦手意識を払拭してくれた上司と、筒井康隆作品に感謝。

  •  ホラー短篇集。といっても、筒井康隆のホラーなので、ニヤリと笑えたり、くすりと笑えたり、怖いのだけどどこか笑えてしまう面白さがある。だけど、だからといって油断していると、突然「怖い!」物語が入っていたりするのでご用心。…とはいえ、わたしはホラー系がかなり駄目で、「怖い!」と思う沸点がとても低目。他の方が読まれたら、こんなの全然怖くないやん。と思われるかもしれませんな…。

     この短編集には「新未発掘短篇」の「大怪獣ギョトス」が収録されているのもウリな模様。これはなかなかに強烈な皮肉が効いている作品だった。わたしは「星は生きている」が一番好き。これは他の短編アンソロジーで読んだことがあったのだけど、シュールでとても面白い。わずか4ページあまりの話なのだけど、面白くてついつい何度も読み返してしまうほど面白いのです。

     背筋を寒くするようなホラーを求める人には向かないと思うけれど、シニカルな面白味が好きな方にはおすすめなホラー短篇集です。

  • 風刺が効いていて良い

  • 狂人しか出てこない。短いからか登場人物に共感も、愛着も湧かない。途中でオチが想像できてしまうものもあった。途中までの展開や設定が面白く期待して読み進めたのに、結末がイマイチのものもあった。幻覚か妄想にとらわれた人物が人を殺しまくるって話しばかりだった。【世にも奇妙な物語】などのショートドラマで映像化すると映えるのでしょうね。

  •  今から10年以上前になるかもしれませんが、世にも奇妙な物語というテレビドラマで放送された「鍵」という江口洋介さんが主演した作品が印象的だったので、その原作が納められたこの本を手に取りました。購入した当初はいくつかの話を読んだら、あまり合わないのかな、と思ってそれきり読むのをやめましたが、つい先日部屋の掃除をしていた時に出てきたので読んでみたら、引き込まれて10年以上かかってようやく読破しました。
     
     この短編集はショートショートを含む全22篇からなるもの。ホラー短編集ということもありシリアスな物語で基本的には構成されています。
     その中でも印象的だったものについて感想を述べようとおもいます。

     「ふたりの印度人」について。
     私は帰りの電車の中でふたりの印度人を見かけた。彼らは電車を降り、家に帰ろうとする私を追いかけてきて、どうにか家に侵入しようとする。侵入されたもののどうにか追い出し、出刃包丁を握る私からそれを奪い取った片方の印度人。彼はその出刃包丁でもう片方の印度人を切断し、それを拾った後、駅の方へ向かって歩いていった。次の夜、印度人は三人になってやってきた。
     何とも言えず怖い話です。何故追いかけてくるのかわからず、コミュニケーションも取れず、片方の印度人は平気でもう片方を包丁で切断し、その切られた印度人には血が流れておらず、スポンジ状の割れた消しゴムの様な断片がのぞいている。
     生きていてもわけがわからないことはたくさんありますが、この作品はそんな正体不明の恐怖がよく描かれていると思います。7ページながらとても印象に残りました。
     
     「さなぎ」について。
     この世界にはさなぎセンターというものがあり、親に反抗した子どもはそこで反抗したことが失敗に終わる夢をひたすた見せられる。主人公には付き合っていた彼女がいたが、一年前にさなぎセンターに送られ、その日友人も送られることになる。その日の夜、主人公はちょっとしたことから父親の不満を買い、暴力を振るわれる。ここで反撃してはさなぎセンターに入れられると思い、父親が老いて動けなくなった頃に復讐をしてやると心に決める。5年経ち、10年経ち、20年が経った。父親が死に、自分だけが父親に痛めつけられたられたのは不公平だと、今度は復讐の矛先を自分の息子に向けることを決める。かつて父親がやったように、何かあればさなぎセンターに入れてやるということを盾にして。
     後味が良くない話です。自分が憎んでいた存在にいつの間にか自分もなろうとしている。よくあることなのかもしれませんが、やりきれない気分になります。親たちの都合で蝶になる前のさなぎに留められた子どもたちが、やがて親となった時に、自分の子供たちを同じようなやり方で反抗しない所有物のように扱う。悲しみが胸を覆った作品でした。

  •  『大怪獣ギョトス』が良い。中学時代から著者の文庫本に親しみ、当時を懐かしく思い出す。

  • 安心と安定の筒井節。
    ホラーと銘打ってありますが、所謂ホラー的な物は「くさり」「鍵」位かなと云う印象で、後はシュールだったりコミカルだったり。
    「くさり」は怖いです…盲目の少女の視点(と云うのもおかしいですが)で進むので、情景の暗さ、手探りのみの進行が非常にスリリングでした。
    個人的には「ふたりの印度人」が好きでした…相手の意図が全く分からないだけに恐怖感がある、と云えば殊勝な物ですが…絵的に面白いな~と。
    あと「亭主調理法」も。いいのかこれ(笑)
    手軽く読める一冊。
    町田久美さんの表紙絵も素晴らしいです。

  • 久しぶりな筒井作品。
    普通のホラーとは違いやはりちょっと筒井ティストの入った作品集。

    最後の鍵がホラーっぽいといえばぽいか。

  • 筒井康隆は色んな色を持っていてすごいなぁ。

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著者プロフィール

筒井康隆……作家、俳優。1934(昭和9)年、大阪市生まれ。同志社大学卒。1960年、弟3人とSF同人誌〈NULL〉を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が〈宝石〉に転載される。1965年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。1981年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、1987年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、1989(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、1992年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。1997年、パゾリーニ賞受賞。他に『家族八景』『邪眼鳥』『敵』『銀齢の果て』『ダンシング・ヴァニティ』など著書多数。1996年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。

「2024年 『三丁目が戦争です』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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