花失せては面白からず: 山田教授の生き方・考え方 (角川文庫 し 4-13)
- KADOKAWA (1999年1月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041310205
感想・レビュー・書評
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経済小説の先駆者、城山三郎氏とその師である山田雄三氏の評伝。
城山氏の作品が醸し出す素地がこういうところに起因していたのかと分かる一冊でした。
忠君愛国以外に生き甲斐なしと信じ、海軍少年兵に志願入隊した著者は、敗戦によって価値観の根本的な考え直しを迫られ、東京商大に入学。そこで、山田雄三教授と出会う。出会いから40年、探究心で結ばれた師弟の歴史。
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指導教授のあるべき姿
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一橋の石川先生のオススメ本。城山三郎の2冊ある自叙伝的小説のうちの一つ。城山三郎と、彼の大学時代の指導教官でその後生涯を通して師となる山田雄三教授との師弟愛を描いたもの。城山三郎が一橋で理論経済学を学び、作家に転身する前は学者だったなんて知らなかった。さらに驚くべきは、山田ゼミの当時のゼミテキストがモルゲンシュテルンとノイマンの『ゲーム理論と経済行動』だったこと。ケインズかマルクスかの時代に当時外務省にのみ入っていたというゲーム理論のテキストを学んでいたなんて、今日のその分野の隆盛を見ればその先見の明に驚かされるばかりです。もっと言えば、この数理経済学の難解さが城山を文学の世界へと誘い、大小説家「城山三郎」が誕生するわけです。城山と山田教授の<二人ゼミナール>のテーマは経済に関するものは勿論、『花伝書』の解釈にまで及び、タイトルはそれに由来します。「花のしおれたらんことこそ面白けれ」。