一歩の距離―小説 予科練 (角川文庫)

著者 :
制作 : 生頼 範義 
  • 角川書店
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本棚登録 : 62
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041310212

作品紹介・あらすじ

司令は静かな口調で命令した。「戦局を一変させるべく、帝国海軍では、この度、必殺必中の兵器を動員することになった。全員、目を閉じよ。兵器への搭乗を志願する者は一歩前へ!」塩月は躊躇した。前に出る練習生の靴音が聞こえる。出なければ、出なければ。死ぬために来たのに、何をためらっているのか。両親や兄弟のことを思った。脇の下を冷たい汗が流れる…。生と死を隔てる"一歩の距離"を前にして立ち竦む予科練の心理の葛藤を通して、戦時下の青春群像を描いた表題作、他一編。

感想・レビュー・書評

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  • もうすぐ終戦記念日。この本は母から借りたものです。特攻隊員になる事を恐れず、国の為、天皇陛下の為に命を惜しまなかった予科練の学生たち。彼らはまだ16前後という若さだった。
    この本は戦争の悲惨さ、それも戦場でというよりも戦場に行くまで訓練の過程での悲惨さにも焦点をあてています。涙が止まらなかった。

  • 士官、下司官の無能、理不尽ぶり。世論、教育の影響のおおきさ。

  • 中高の頃に読解問題で出会ってから、ずっと頭から離れなかった「一歩」だった。
    何年も経って、ようやく全てを読むことができた。
    「一歩の距離」も「マンゴーの林の中で」も特攻隊を扱った小説だが、どちらも多少の違いはあれど、現実にあったことなのだろう。
    そう思うにつけ、一歩踏み出すその覚悟は酷く胸に迫った。
    戦時中を扱った作品はこれまでにも読んだことがあるが、立場や人によって姿が違って見えるのだから、不思議で仕方ない。

  • たった一歩前に出るかどうか、死と確実に直結したその一歩を踏みだす決断を16,7歳の少年にある日突然求める、この残酷さは到底理解できないもの。読んでいてただただ身につまされる・・・
    軍隊の日常もマンガのような苛烈さで、戦中を生き抜いた人も出身階級によって軍隊や戦争に対する認識が異なるのもうなずける。

  • 「指揮官たちの特攻」と同様に第二次世界大戦の終わり。海軍予科練に入隊した少年に焦点をあてた話。筆者が同様の経験をしており、その視点で書かれた貴重な話だと思います。当時の少年の視点、思考はその時を経験した人でなければ書けないものがあると思います。また、「マンゴーの林の中で」という別の短編もあります。人の命がなんと軽く扱われた時代だったのか。小手川の死に涙を抑えられなかったです。

  • 終戦間際の予科練を舞台にした小説。「一歩の距離 予科練」と「マンゴー林の中で」の二本が収録されています。

    これを読み終わって知ったのだけれど,作者の城山三郎氏も海軍に志願入隊して,特攻の部隊に配属されて終戦を迎えていた方だったんですね。一歩間違えば,この小説は残されていなかったというわけ・・・。

    結構感情的な書き方だったり,登場人物の心の動きなんかが詳細に書かれているので,あくまで小説,フィクションとして読んだんですが,なかなかよかったです。
    青春群像劇,と言った感じです。

    飛行機乗りというのは当時の少年達の憧れだったんですねー。今でもパイロットというのはかっこいい職業の一つではあると思うんですけど,不景気の世の中,安定的な選択をする子が増えていると思うんですよね。多分。
    少年たちへの飛行機への純粋な憧れが胸を打ちます。「錘りでもなんでもいいから飛行機に乗りたい」とか,「教員からの懲罰も,その後の飛行機があるから我慢できる」と思い,ひたむきに日々の訓練に取り組む予科練生たち・・・。青春。

    まだ人生経験も浅く,この世に未練も少ないだろうからと特攻に選ばれた若き予科練生たち。
    誰がそんな事考えたんだかー。まだ若いからこそ,これから未来が沢山あるのに。手軽に死んでもらえる,とかちゃんちゃら可笑しい。
    親も本当に悲しかっただろうなーと容易に想像がつきます。切ないなあ・・・。

    塩月は「一歩の距離」について煩悶懊悩するけれど,この時,誰が死んで誰が生き残るかなんて,紙一重だろうと思います。

    城山さんが生き残ってくれてよかったなあと思います。面白い小説が読めたので。

  • 特攻に志願したものとしなかったもの、その間に横たわる「一歩の距離」を中心に、旧軍の無意味な体罰、非合理的な特訓と殉職、若者の純粋な気持ち、そして終戦直後の身の振り方など、あまり特定の思想に偏ることなく、ほぼ予科練にいた主人公(たち)の「見たまま」が淡々と描かれる。

    「自分のできることをきっちりこなす」ことが必ずしも善ではないのだと身につまされる。あまり考え過ぎなくても生きていけるのだと安心できる。そんな中編。

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プロフィール

城山三郎(しろやま さぶろう)
1927年8月18日 - 2007年3月22日
愛知県名古屋市中区生まれ。大日本帝国海軍に志願して入隊し、特攻隊の部隊に配属されたが、訓練中に終戦となった。東京産業大学(一橋大学の前身)を卒業後に1963年までは大学講師を務めながら作家活動を続けていた。経済小説を一ジャンルに格上げした先駆者のひとり。伝記小説、歴史小説も多い。
1957年に『輸出』で第4回文學界新人賞、1959年『総会屋錦城』で第40回直木賞、同年『落日燃ゆ』で吉川英治文学賞と毎日出版文化賞、1996年『もう、きみには頼まない 石坂泰三の世界』で第44回菊池寛賞をそれぞれ受賞。2002年に朝日賞を授与される。
代表作としては上記作品に加え、二度テレビドラマ化された『官僚たちの夏』、妻との想い出を描いた遺稿のエッセイ『そうか、もう君はいないのか』、よくタイトルが人物評としても用いられる、『粗にして野だが卑ではない』が挙げられる。

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