ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041314180

感想・レビュー・書評

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  • 感想
    いつかは終わる。なぜ当たり前のことが受け入れられないのか。それさえ受け入れられれば今よりもっと楽しく、瞬間瞬間を慈しめる。

  • 「足が悪いジョゼは車椅子がないと動けない。ほとんど外出したことのない、市松人形のようなジョゼと、大学を出たばかりの共棲みの管理人、恒夫。どこかあやうくて、不思議にエロティックな男女の関係を描く表題作「ジョゼと虎と魚たち」。他に、仕事をもったオトナの女を主人公にさまざまな愛と別れを描いて、素敵に胸おどる短篇、八篇を収録した珠玉の作品集。」

    「9篇のストーリーの主人公は、精神的に自立した大人の女性たちだる。結婚していても、していなくても、ひとりで生きる覚悟がある。愛には終わりがあると知って居て、だからこそ目の前の人との時間をいつくしむ。ジョゼも、「恒夫はいつジョゼから去るかわからないが、傍にいる限りは幸福で、それでいい」と思っている。「恋の棺」の宇禰も、「いけどられて」の梨枝も、いとしい男との別れを直視している。だからこそ、相手に優しくできるのだ。
    (『いつか君に出会ってほしい本』田村文著 の紹介より)

  • 大人だったら、男女問わずわかる世界。
    それぞれの短編で、いずれも後に引きずって想い巡る。
    それとほんのりエロチシズムが心地よい

  • 田辺聖子さんの作品は、時に話に明確な終わりを見せないので、いくつもの妄想が広がる。その為、読んだあとも暫くは楽しい。

    表題作は映画を観ていなかったので、この本を読んだ後に映画を観てみた。
    ネタバレになるので詳しくは書かないが、
    やはり映画故に終わりがハッキリしているので、
    本を読んだあと程のワクワク感は得られなかった(原作のある映画はどれもそうなってしまうのかもしれないが)。

  • 文章も、内容の深みもとてもよかった。ひとつひとつの話が身になる感じ。

  • これくらいの歳の頃の女性心理をうまく現してるなと思った。
    世代がちょっと上だけど、昭和生まれの私としては、この感覚、まぁ分かるなと。
    表題の「ジョゼと虎と魚たち」、映画にもなったから分かりやすくはあると思うけど、男性が読んだら、この胸を掴まれる感じ、分かるのかな…??

  • 映画版がよかったので、原作も読んでみた。
     
    映画のほうがよかった。
    原作の小説にも「原石の輝き」はもちろんあるけれど、映画版を「宝石」にまで磨き上げたのは脚本家と監督の功績だと思う。

    原作は短編だから、映画の中のエピソードの多くは原作にはないのだ。アニメ『火垂るの墓』と原作の短編小説(野坂昭如)に近い関係。

    とはいえ、映画版『ジョゼと虎と魚たち』に惚れこんだ人は、原作も読んでみるとよいと思う。あの映画がより深く理解できるから。

    原作の印象的な一節を、メモがわりに引いておこう。

    《ジョゼのいうことは嘘というよりは願望で、夢で、それは現実とは別の次元に、厳然とジョゼには存在しているのだ》
                  
    《大学のキャンパスで見る女の子たちはみな、すこやかな雌虎のようにたけだけしく、セクシュアルだったが、ジョゼには性の匂いはなく、旧家の蔵から盗み出してきた古い人形を運んでいるような気が、恒夫にはした》
                 
    《恒夫はこれがはじめての経験ではなく、女子学生と何べんか体験はあったが、こんなこわれもののようなもろい体ははじめてだった。その日、はじめてジョゼの繊い脚を直接に見て、これも人形のような脚だと思った。しかし人形は人形なりに精巧にできていて、少なくとも女の機能はかなり図太く、したたかに、すこやかに働いているのがわかった》

    動物園の虎の檻の前でジョゼが言うあのセリフは、原作では微妙に違って、こんなふうだ。

    「一ばん怖いものを見たかったんや。好きな男の人が出来たときに。怖うてもすがれるから。……そんな人が出来たら虎見たい、と思てた。もし出来へんかったら一生、ほんものの虎は見られへん、それでもしょうない、思うてたんや」

  • 昔映画を見て原作があるのね、と思って読んだ。こっちのラストの方が好き。山崎まさよしの「水のない水槽」のイメージ。

  • 男を翻弄する女、しかし女自身も心ゆれている――つかみどころのない、ゆくえも知れぬ欲望がそれぞれに見える9篇。足もとが暗いまま、先の展望もうかがえないような閉じ方ばかりでちょっとした"愛とホラー"?

    『恋の棺』が印象深く、ゆっくりかみしめるように読んだ。
    10歳下の甥っ子の「世間知らずのういういしい信頼」を、そうと看破しつつも「兇器をかくしもったやさしさで」自分の望む方向へもっていってしまう宇禰。主導権を握ってストーリーを作り上げたけれど、うつくしく完結したらそれを繰り返すつもりはない。若い男のほうは"このさきも、また"を欲していると分かっていながら・・・。
    それが「女の生きる喜び」と言い切る宇禰は、悪女なのか、愛を知らない寂しい女なのか。

    『荷造りはもうすませて』もいいなぁ。夫が前妻と子どもに会いに行く、そのことについて女があれこれ思いを巡らせる話。

  • 途中でギブアップ。
    昔の言葉遣いや関西弁についていけなかった。自分が関西圏に住んでいないからか、関西弁が出てくると脳内でぎこちない関西弁に変換されて冷めてしまう。

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著者プロフィール

1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大)卒業。1957年、雑誌の懸賞に佳作入選した『花狩』で、デビュー。64年『感傷旅行』で「芥川賞」を受賞。以後、『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』『ひねくれ一茶』『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』『新源氏物語』等が受賞作となる。95年「紫綬褒章」、2000年「文化功労者」、08年「文化勲章」を受章する。19年、総胆管結石による胆管炎のため死去。91歳没。

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