- 本 ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041314234
作品紹介・あらすじ
貴族のお姫さまなのに意地悪い継母に育てられ、召使い同然、粗末な身なりで一日中縫い物をさせられている、おちくぼ姫と青年貴公子のラブ・ストーリー。千年も昔の日本で書かれた、王朝版シンデレラ物語。
感想・レビュー・書評
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1945年、大阪空襲に焼け出された田辺聖子は樟蔭女専で18歳の学徒だった。いまだ何も持ってはいないけど、ほとばしる才気隠れようもなく(cf.「田辺聖子18歳の日の記録」)、古典の教養は凄かったと確認している。
本書は、日本版シンデレラと呼ばれる「落窪物語」を田辺聖子が脚色したものです。原作を採長補短、楽しいものにしています。大河ドラマのお陰で平安女子の生活もイメージし易くなっているけど、1979年段階でここまでエンタメに寄りかかり表現出来る人は少なかったのではないでしょうか。
本筋は、継母に虐められていたお姫様が落ち窪んだ部屋に閉じ込められて針子扱いさせられていたが、姫の女房・阿漕と右近の少将の従者・帯刀の助けを借りて、見事結婚するというお話です。シンデレラと言われる所以です。
古今東西、虐めに遭っている女の子は、王子様が救いに来てくださるのを夢見るものなんですね。女の子は美人で決して欲深く無く、優しいけど、自分を主張できない。男はハンサムで冒険心に富んでいるけど、隠された部屋にある宝物は見つけたら一生をかけて手にしたいし、大事にする。2人にとって、困難はあればあるほど良い。
田辺聖子は、そういう普遍的な面も評価するけど、「少将は、その頃の男性には珍しく、姫君ひとりに純愛を一生捧げ」ているところが、一千年間世の女性読者に支持されているところだと喝破します。同時に中流男女の阿漕と帯刀の活躍も珍しいと評します(「おわりに」)。うーむ、確かに。
継母は、姫に恋人が出来たと聞いて、老人で助平な典薬に姫をやると約束してしまいます。阿漕は姫が犯されないように知恵を絞って妨害します。老人に出した代書手紙に〈枯れ果てて今は限りの老木には、いつかうれしき花は咲くべき〉と書きます。当時の常識人が読めば(おまえさんなんかに花が咲くもんか)という意味らしいのですが、典薬も、「私も」、「おゝ花が咲くのを期待してくれるのか」と解釈してしまいました。老人男は、若い女の子からこんな返事もらったら、昔からそう思うものなのではないかしら。
1990年、文庫化されてからなんと32年間で60刷されています。2023年本屋大賞発掘部門。積読解消。
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今から千年も昔、平安朝時代の日本にあった『落窪物語』というお話を現代語に訳された、田辺流シンデレラ物語です。
みすぼらしい部屋で、つぎはぎだらけの着物を着て、せっせと縫い物をしている若い美しい娘。
その娘は、床が一段落ちくぼんでいるところに住んでいるので、「おちくぼの君」と呼ばれていました。
物語の中で、この時代の結婚形式をわかりやすく説明してくれているので、古典初心者にも安心して読めます。
意地悪な継母の目を盗んで、姫君と少将との恋を応援するお付きの人たちの活躍ぶりが、はらはらどきどきで時にはドタバタで、登場人物たちがみな生き生きと魅力的で、平安時代の恋物語が、想像以上にロマンティックで、ほんとうに面白かったです。 -
とっても読みやすくて面白かったです。
ハッピーエンドになることが分かっているからか、安心して読めました。
まあとにかく少将さまが素敵なんですけど、結構この人執念深いというか、ねちっこいというか(笑)そのおかげでスカッとするし、読みながら「少将!もっとやったれ!」って激を飛ばしていました。
虐げられている姫君のお付である阿漕がパワフルで頼もしいし、そんな阿漕に尻に敷かれている帯刀もいい味出しているしで、姫君は可哀想な境遇だけどどこか面白みを感じる、そんなお話でした。 -
平安時代に書かれた「落窪物語」を田辺聖子が現代風にアレンジして訳したもの。
そんな昔ににシンデレラのような物語があったなんて。。。
ある程度の脚色はあるにせよ、ステレオタイプの継母とおもしろキャラクターがいて、エンタメ性抜群でした。 -
日本版、シンデレラ物語。田辺聖子さんが、落窪物語の中で、特に、面白い部分を抜き取って、わかりやすく物語に仕上げています。
なんといっても、不幸なお姫様の侍女、阿漕の活躍につきると思います。とても賢く立ち回る姿に、ほれぼれしました。
会話が多く、短いお話なので、すぐに読めます。お話の途中でも、平安時代のしきたりや、風俗などをわかりやすく、ストーリーの邪魔にならないように説明されているので、それが、とても良かったです。
不幸なお姫様が、周りの人達の協力で、幸せになっていく。話のあらすじが、あらかじめ、わかっているので、安心して読めます。 -
田辺聖子さんの最初の語りに惹かれて購入。
古典文学の類のものを自ら手に取ったのは初めてだったけれど、「若い読者のために現代語訳」されているので、とても読みやすかった。テンポ感やコミカルな流れに引き込まれ、と同時に昔の人々の今とは違う習慣も垣間見れて凄く面白い作品だった。次は原典も読んでみたいと思った。
「人間のよろこびやかなしみ、恋やにくしみなどは、時代がかわっても、おんなじなんだよ」 -
本のうらすじにも表現されている通り、王朝版(日本版とも言えそうです)シンデレラのような物語です。
原作となっている落窪物語を分かりやすく要約されています。昔の物語だと表現などが現代と違い、分かりにくいものが多いです。しかしこの本ではロマンティック・コネ・ルートといった現在使われている言葉で表現されています。また、登場人物の会話も今と大きな差異はなく、古典は苦手だけど物語を読んでみたいと思う方には読みやすいと思います。
内容としては、「おちくぼの君」と呼ばれ両親や姉妹に虐められていた姫と高い身分である右近の少将の恋物語です。
読んでいると阿漕と呼ばれる侍女の活躍が目立ちます。姫の事を思って行動を起こしていく阿漕が力強く思えました。誰かを思って行動に移せる姿が美しいとも思います。
読み終わってから、原作の落窪物語にも興味が持てると思います。古典に触れるきっかけを持ちたい際には、読んでみるのもありだと思います。 -
古典や歴史小説的なのは殆んど読まないのだけれど田辺聖子さんの本だしきっと面白いだろうと思い読んでみた。
分かりやすく訳してくれているし、馴染みの無い漢字には何度もルビ振ってくれてるから凄く読みやすく、そして面白かった。
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溜飲を下げるスカッと痛快なお話。なんか大岡越前や水戸黄門的な、してやったり感あり。いけすかない北の方の鼻を明かしてやったゼ。あからさまが過ぎるけど、知恵を使うことや聡明であることの大切さを学んだ。
著者プロフィール
田辺聖子の作品





