- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041315330
作品紹介・あらすじ
1960年代の新宿-。吃音と赤面対人恐怖症に悩む"バリカン"こと建二と、少年院に入り早すぎた人生の挫折を味わった新次は、それぞれの思いを胸に、裏通りのさびれたボクシング・ジムで運命の出会いを果たす。もがきながらもボクサーとしての道を進んでいく2人と、彼らを取り巻くわけありな人々の人間模様。寺山修司唯一の、珠玉の長編小説。
感想・レビュー・書評
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群像劇。
「モダンジャズの手法で書いた」と本人は言っているけれど。
ポールトーマスアンダーソンの映画みたいな。
それぞれが闇を抱えていて、それぞれの人生が交差する場所としてのリング。
世の中に問題提起している感じがする。
荒野。
って、いいことばだな。
バーのカウンターは、荒野。
リングは、荒野。
ベッドは、荒野。
みんな別の方向を向いている、そしてそれぞれが重みを持って生きている、それがひとつの物語で収束している感じがいい。音楽的。
この、孤高なロマンチストな感じが、今俺でもやり直せそうな青春を感じさせてくれるよな寺山修司。 -
久々の感想;読むのに夢中で(^_^;)華恵ちゃんが表紙のこの寺山修司の文庫本シリーズ表紙がすきだし、寺山修司(何やら有名らしいとしか知らない)を読むなんてかっこいいのかもしれないと、前々から読みたかった本夏目漱石とかまではいかなくても、それなりに昔の人で、難しい本と思ってたら全く違うやん…!武者小路実篤系と思いきや、ね青春小説っぽいすきかといえば、話は別 笑
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映画鑑賞後の後追いですが、時代を現代に置き換えた映画版とあまり変わらない内容な事に驚いた。
寺山修司がいかに現代的な(または普遍的な)感性を持っていたかということもあるが、地震などまさに今にリンクする事象も多く興味深く読んだ。
また映画を観直したい。 -
2021年、2冊目は、最近、プチブームの少し前の話題作シリーズ(菅田将暉主演で映画化されたため)であり、敬愛する寺山修司の作品(敬愛するとか言っておいて、今さらかい⁉️)。
吃りと赤面対人恐怖症に悩む〈バリカン〉建二は、〈片目〉の堀口のボクシングジムの門を叩く。同じ頃、堀口はレコード店の前で、新宿新次をジムにスカウトする。二人は、同期のボクサーとして歩み始める。
1960年代の新宿歌舞伎町を中心に、新宿西口周辺を舞台に、〈バリカン〉建二と新宿新次、その周りの人々で物語は展開されていく。
序盤はやや緩慢な印象も、徐々にテンポ感が出てくる。さらに、今で言うところの差別用語や、寺山修司の独特な言い回し、表現に馴染めない方々は早々に脱落の恐れあり。
個人的には、各章ごとに巻頭歌が添えられていたり、『ポケットに名言を』的なモノや、当時の流行歌の引用等、寺山修司的遊び心溢れていて非常に楽しめた。
一方で、キャラ設定と大まかなストーリーだけ決めて、そこから、各キャラを躍動させていくと言う、「あとがき」で言うところの『モダンジャズの手法(ジャムセッション的手法)』で書かれているため、長編小説としては、物語の幅や奥行きに、少し物足りなさ、弱さを感じるのも否めない。
それでも、自分的には、★★★★☆評価の価値は充分にある。 -
言葉とかひたすら難しかったな。官能的なシーンが多かった記憶。
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河出文庫版。烏が表紙のやつ。何年も積読やったんやけど、平成が終わる前に昭和の臭いしかしないこれを読み終えたぜ。
この時代の新宿などわたしが知るはずないけど、路地裏なんかの換気扇の臭いがしてきそうな雰囲気。
バリカンくんせつないなー。でもそれが彼の向き合い方で自己表現の仕方なんやな。
バリカンくんと新次くんがどうやって親交を深めたのか、そこが掘り下げられればもっと面白かったと思うんやけど…群像劇っぽい感じだから、他の人の話読んでるうちにしらんまに仲良くなってた。 -
寺山修司を初めてしっかり面白いと思った。全編通して、薄汚さ、下世話さみたいなものの漂う上にストーリーが乗っかってる。どちらを楽しむべきなのかよく分からないけど、話が純粋に面白くてなんとなくでも楽しめた。結局何もかも曖昧で終わるのかと思いきや、きっちり決着がつけられていて、その描き方に脱帽した。
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だが新宿新次は村田英雄が嘘つきだということを知っている。「おまえの時代」というものなど存在しない。ただ「おれの時代」を奪い合うエネルギーだけがほんものなのだ バリカン健二 ども跛吃りの治し方 吃り対人赤面恐怖症 「歌による自己表現」「スポーツによる自己表現」皮膚の下で何かが唸るのを感じた 心なんて、一種の排泄物みたいなもんで、「夜になるとたまって来るが、朝になると出ていっちまう」ものだ。 忽ちマンガ的に戯画化されて話題になった 薄利多売法 渥美清 長持ちする顔 老人に必要なのは、諦めではなくて、もっと酷い絶望か、或いは偽りの希望かの、どっちかなのだ。 西田佐知子 東京ブルース 話のネタになる本 若尾文子とオルガスムを分ちあいながら 「誰にも迷惑かけない性行為なんて、まったく無意味で、味気ないよ」 藤猛 北叟笑んだ アウト・ボクサー(点取虫) 拳闘の世界では「一番多く憎んだもの」にチャンピオンという称号が与えられる 彼の夢は大統領になること。すなわち、チャンピオン・ベルトをしめてリングの中を一周することである。そして、その資格を有するものは、少なくとも素晴らしいヘラクレス並みの肉体の持主でなければならないのだ。彼には新宿を歩いている青ざめた顔のサラリーマンたちが皆、間抜けに見える。 アデノイド症的な 幸せなら手をたたこう 坂本九 「誰だって、自分の宿命に勝ちたいからね。後天的なものを信じようとするのさ。生まれた時の星に逆らってみない人生なんて味っ気もありやしないじゃないか」 「野生の家畜」といった趣きがあった 「栄養剤を飲むといいんだよ。少し活力をつけると、あんな感傷的な人生観は、たちまち変わってしまうんだ。詩を書いたり、名曲喫茶に朝から閉じこもっているような連中を見てると、俺はいつでも(かわいそうだにあ!)って思ってしまう。奴らはリポビタンかアスパラを飲んで、体を鍛えればまだ立ち直ることが出来るんだ」これは新次の信念であった。彼にとって、ボクサーが負けるということは悪徳であり、その原因は突き詰めて行くと必ず栄養不足ということになるのであった。素晴らしい肉体が、精神などという小細胞を自由にできない訳がない。「己に勝て」などという精神主義的な金言は嘘っぱちで、まず、精神を支配できるような強健な肉体を作ることこそ先決なのだ。 幻影を持たない奴は、いつか消えていってしまうんだ。 馬鍬まぐわ つまり、欲求不満のエネルギーがあの人達の生き甲斐になってる訳なのよ。 あなたは病気にかかってませんか?人類彼の最後にかかる、一番の重い病気は「希望」という病気です。 川崎敬三(そっくり) 豊作兵助 それは「嘗て、あんなに何かを憎むことの出来た俺が、いま、何も愛せない訳がないさ」という自信である。彼等はそのことを自分の真実として、いまの怠惰を「世を偲ぶ仮の姿」だと考える。その考えは悪くない。だが、彼等は「世を偲ぶ仮の姿」のままで日々を送りながら、何時の間にかそれが「本物の自分の姿」になってしまっていることには気付かないのである。 猫の屍体したい 跛びっこ 曇天どんてん 弟子屈町 心臓の瓶詰め 薬一服煎じて飲んだら 植木等 学生節 少なくとも「暴力」行為には、疎外などのつけこむ空隙くうげきがないからである。 相手を傷つけずに相手を愛することなどできる訳がない。勿論、愛さずに傷つけることだってできる訳がないのである。 ボーイ・ソプラノ 雑念を払う為に去勢手術 学芸大学前 目黒 世の中には「偶然のない人生もある」ということがわかってきました。そこで、「偶然」をあきらめて、自分で一挺いっちょうやらかしてみようと思ったのです。 詠嘆している暇はなかったのである ダンプリング入りシチューチキン 花園町から歌舞伎町に抜け 俺の波田は俺が拭くそれははちきれるような欲望の処理というよりは、寧ろ自らを救済する一刻といった感じのほうが強かったのではあるまいか。 茎を握り出す マヤコフスキー ジューク・ボックス付きの女体だ バーブ佐竹 感謝にも似たエクスタシーの顔 昭和40年 モダン・ジャズの手法 コラージュ 極めて率直にお金を出して買ってくれた読者のあなたに捧げたいと思う。シナトラの唄ではないが、もしも心が全てなら愛しいお金は何になるという現実主義の名誉にかけて。1966年秋
著者プロフィール
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