山本一力が語る池波正太郎 私のこだわり人物伝 (角川文庫)

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感想 : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041323427

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭文章は「初めての池波宅訪問」。直木賞を獲ったあと、文春出版局長から訪問の打診を受けた山本一力は、一もニにも快諾(懇願)した。それほど山本は池波ファンだった。しかし、その家に池波正太郎は不在だった。既に亡くなっていたからである。
    ‥‥というような文章が続く。
    本の体裁はまるで池波正太郎読本の如しであるが、半分以上の記述は池波正太郎にかこつけた山本一力の半生になっている。
    これは作家の業なのだろう。

    ところで、
    知らない人も多かろうが、私は池波ファンである。
    読むべき本は読んだので
    ブクログには数冊しか入っていない。
    社会人として初めて東京に遊んだ時に選んだホテルが山の上ホテルだった。
    池波の愛したホテルだ。
    こじんまりとして格式があって、
    お高い。
    確かにひとりゆったりできる机があり、
    丁寧に応対してくれるギャルソンがいて
    そのためだけに数万円上乗せする。
    ということを学んだ。
    流石に部屋に池波の絵はなかったが
    何か曰くありげな絵があった。
    山本一力も
    「粋」とは何かを力説する。
    一度泊まったきりだったけど今から考えれば
    何か大切なことを学んだ気がする。

    知りたくもない山本一力の半生を聞き齧りながら
    それでも作家、池波正太郎の「かんどころ」は
    キチンと押さえて語る。
    「酸いも甘いも分かった、ええ男」と褒めるご母堂
    白黒の中間の色合い「融通」を座右の銘にする山本
    おとながいた町を描き分ける力量
    野暮じゃなくて粋を尊ぶ「男の財布」

    「NHK知るを楽しむ 私のこだわり人物伝」のテキストを基に改稿・加筆した。
    それは半分で終わり、後の半分は池波正太郎の短編三遍を載せる。
    そのうちの一つは鬼平シリーズの魁となった「白浪看板」(『にっぽん怪盗伝』)。あとは、いつもの食エッセイ「食べる」(『男のリズム』)と「縄張り」(『江戸の暗黒街』)。

    古本屋の80円棚で発見。

    • ひまわりさん
      kuma0504さん、おはようございます。池波正太郎さん、私も大好きです。そして今村翔吾さんも。
      kuma0504さん、おはようございます。池波正太郎さん、私も大好きです。そして今村翔吾さんも。
      2023/04/19
    • kuma0504さん
      ひまわりさん、こんばんは。
      池波正太郎生誕100年ということで、出版や映画化が相次いでます。というか、随分前に亡くなったと思ってたけど、今1...
      ひまわりさん、こんばんは。
      池波正太郎生誕100年ということで、出版や映画化が相次いでます。というか、随分前に亡くなったと思ってたけど、今100年というと、案外若死にだったんだな。

      「藤枝梅安」二部作観ました。
      面白かった。
      あゝこの死生観懐かしい。
      山本一力、私ファンを出来るだけ増やさない方針なので読むつもりはありません(人生は短く、読みたい本はあまりにも多い)が、昔気質の時代小説家で、もしかしたら希少作家なのかもしれません。
      2023/04/19
    • ひまわりさん
      ほんと、ブクログを見てると、あれもこれも読みたくなって、時間が足りませんね。
      ほんと、ブクログを見てると、あれもこれも読みたくなって、時間が足りませんね。
      2023/04/19
  • 本を読む人間と読まない人間と。そしてもう一種類は?《赤松正雄の読書録ブログ》

     先日、新聞各紙に一面ぶちぬきで、池波正太郎『鬼平犯科帳』DVDコレクションの広告が出ていた。いまなぜ池波正太郎か。今の世に、男っぽくないだらしない奴が大勢いるからかもしれぬ。この人の熱烈な信奉者によるものを、このところ偶々たて続けに二冊読んでいたので、少々不思議な気がしている。佐藤隆介『池波正太郎直伝 男の心得』と山本一力『山本一力が語る池波正太郎』である。共に、直接、間接の違いはあれ、文学の世界における濃密な師弟関係を感じさせて興味深かった。

     「本を読む人間と、本を読まない人間と。人間はこの二種類に分かれるね。本を読んでない奴は目を見ればわかるよ」―池波正太郎は、佐藤隆介に初めて会ったその日にこう言った。思わず我が目玉に力が入った。ただし、「読む人間」といってもその中身は分かれよう。「本は量だけが問題だ。乱読でも読み飛ばしでもいいから、ひたすらたくさん読むことだ」という佐藤。

     ただし、「書を読むにはただ一冊の書だけを看よ。毎日ただ一段ずつ読んで初めて自分のものとなる。もしこれを看、あれを看するならば、一通り目を通したからといっても、ついには熟読することはないのだ」と宋代の儒者・朱子の言を引き、「読み飛ばした本なら数え切れないが、『読書百遍』という本がお前にあるかといわれると考え込んでしまう」とも言う。私もそんな本に出会いたいと思い続けて片っ端にあれこれ読み続けて半世紀。未だに殆ど出くわさない。

     家人から「いくら読んでいてもあなたは何も身についていない」などと揶揄される私としては、もう一種類、読んでも身につかない人間という種族がいるのかもしれない、などとつい弱気になる。

  • 前半は山本一力氏による池波正太郎へのラブレター。後半は短編二つとエッセイ一編。いずれも再録。どんな番組だったのだろう。

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著者プロフィール

1948年高知市生まれ。都立世田谷工業高校卒。旅行代理店、広告制作会社、コピーライター、航空関連の商社勤務等を経て、97年「蒼龍」でオール讀物新人賞を受賞。2002年『あかね空』で直木賞を受賞。江戸の下町人情を得意とし、時代小説界を牽引する人気作家の一人。著書多数。

「2023年 『草笛の音次郎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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