刺青殺人事件 (角川文庫 緑 338-3)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041338032

感想・レビュー・書評

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  • つい最近どこぞのサイトでレビューを見て、再読を決意。細部はほぼ忘れていたが、この論理のアクロバットとでも言うべき発想の転換の切れ味は、ややもすると古めかしく感じられる道具立ての只中にあって普遍的な輝きを放っている。ただ、やっぱり探偵役に感情移入できないんだよなあ……神津恭介、完璧すぎて鼻につくw これで御手洗みたいなエキセントリックな人柄ならまだ諦めもつく(?)んだけど、普通に常識人だし。

  • 牡丹、唐獅子、金太郎、般若、花和尚、九紋竜。
    本郷の東大標本室をアラベスクのように彩る幾十枚の人皮と、それを見つめる「刺青博士」ことF博士。
    標本室の中央の机上で、ひと際目を引くトルソ。
    名人の名をうたわれた刺青師・彫安その一代の傑作「大蛇丸」
    そして妖術師「大蛇丸」と、大がま使いの「自雷也」大蛞蝓にのってあらわれる「綱手姫」の三すくみの呪い。

    冒頭から魔術的に引き込まれる刺青の妖しさ。
    海外ミステリのそれとは違う怪奇幻想と不可能犯罪。
    風呂場で発見された頭部と四肢を切断された屍体と、現場から持ち去られた「刺青」を背負った胴体。

    古い作品なのでミステリを読み慣れた方ならば、大枠の真相は予測でき犯人の目星は付くとは思いますが、それでも楽しかったです。
    横溝正史『本陣殺人事件』を読んだときも感じましたが、やっぱり僕はトリックだけが凄い作品よりも、トリックが作品世界の雰囲気と絶妙に絡み合い、豊かな味わいを醸し出している作品の方が好きなようです(もちろんトリックが素晴らしく、作品の雰囲気もいいのが一番です。そして『本陣殺人事件』『刺青殺人事件』共にハイレベルだと思います)。

    日本家屋は天井裏と床下で各部屋が全て繋がっているので、密室ミステリを成立させるには不向きだとは、恥ずかしながら作中で指摘されるまで気づきませんでした(これは作中トリックのネタバレではありません)。だから横溝『本陣』では離れの一部屋が、本作ではタイル張りの外風呂が犯行現場だったのだとメタ的に納得。

    密閉されたタイル張りの外風呂での殺人。
    その密室殺人の表層的な解決も面白かったですが、本当の意味での密室の謎には感心しました。
    『人形はなぜ殺される』と並んで、高木彬光の代表作と評される『刺青殺人事件』 
    噂に違わぬ傑作でした。そしてとても好みでした。

  • 2011.09.21

  • 中学生の頃に読んだ
    なんか怖かった記憶

  • 神津恭介もの。終戦後の東京にて刺青のささやかな発表会にて松下研三は、野村絹枝という大蛇丸の刺青をした女性と出会い、殺害されそうだと研三に伝え写真を渡した。それから数日のうちに、絹枝の家で家で胴体がない死体が発見される。その殺害現場にはナメクジがおり、三竦みを連想させる事件が始まる。
     面白かった。戦後一年ぐらいの年代のため、少々時代背景がわからなく読みにくい部分もあったりしたが、本作品が時代背景ならではというわけでもないので助かりました。内容的にもわかりやすい展開で(といっても、トリックがわかりやすいというわけではない!)警察による捜査情報を得た後、名探偵神津恭介が登場し解決するという展開。神津が登場する前には、さり気なく読者への挑戦状も仕掛けられていました。
     トリックについては全くわかりませんでしたが、犯人についてはなんとなく想像がついた程度。ただし、読者への挑戦状を挿入するだけの材料があったかどうかはちょっとわかりませんでした。なんだろう、今となってはこの作品もそういう意味では色褪せているところもあるのかなあ、なんて。とてもよい作品だったのですが。

  • 東大医学部のうす暗い標本室に並ぶ、首もなく、手足もなく、刺青をした胴体だけの塑像。不気味な色彩で浮かびあがる妖術師「大蛇丸」。この一枚の人皮から、醜くも、恐ろしい惨劇が始まった。密室殺人と、怪しく耽美な世界に挑む、名探偵・神津恭介。戦後、本格推理小説の礎となった、高木彬光の処女長編、ここに登場。

  • 神津恭介
    刺青物

  • すばらしいトリックに驚いた。グリーン家に優るともとも劣らない作品。刺青という題材を上手く生かしているし、エログロにもなりすぎない程度に毒々しい。一読の価値あり。

  • 密室。
    胴体のない死体。
    なくなった写真。
    もうひとりの女。
    きになる要素がいっぱいつまった本。面白かったです。

  • 今読むとしょぼく感じる人も多いと思われます。古典ですが名作です。神津恭介に惚れましょう。(この作品では無理かも)

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著者プロフィール

1920年9月25日、青森県生まれ。本名・誠一。京都帝国大学工学部冶金科卒業。48年、失業中に書いた「刺青殺人事件」が江戸川乱歩の推薦で出版され作家デビューし、「能面殺人事件」(49-50)で第3回探偵作家クラブ賞長編賞
を受賞する。79年に脳梗塞で倒れるが過酷なリハビリ生活を経て再起、「仮面よ、さらば」(88)や「神津恭介への挑戦」(91)などの長編を発表。作家生活の総決算として「最後の神津恭介」を構想していたが、執筆途中の1995年9月9日に入院先の病院で死去。

「2020年 『帽子蒐集狂事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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