くノ一忍法帖 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041356500

作品紹介・あらすじ

大坂城落城により、天下を握ったはずの家康に驚倒すべき情報がもたらされた。真田幸村の秘策により、五人のくノ一が信濃忍法を駆使して秀頼の子を身ごもったというのだ。しかも、その五人は家康の孫娘、千姫の侍女の中にいるという。隠密のうちに禍根を断つことを決意した家康は服部半蔵に命じて、伊賀国鍔隠れの谷から五人の忍者を呼び寄せるが…。千姫と家康の確執、伊賀忍法と信濃忍法の妖しく凄絶な争い。著者自ら忍法帖の代表作として推した傑作中の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • これを読んだがために山風忍法帖の深い沼に嵌まり、抜け出せなくなってしまったという記念碑的な作品です。当時まだ10才くらいでしたが、同級生から「凄い時代小説があるよ。とにかく凄いから読んでみて」と教えられ、好奇心に駆られて図書館で手に取ったのが運の尽きでした。

    よく「エログロ時代劇」という評を見かけますが、「グロテスク」というよりも「バイオレンス度が高い」と評する方がまだ的確なのではと思います。尤も、戦国時代の物語に暴力的な描写が無いなどということはあり得ませんから、その点は敢えて特筆することでもないでしょう。
    一方、エロティックであることは間違いありませんが、何しろ10才の子供が読める程度のエロチシズムです。「エロ」に過剰な期待をして読むと物足りなさを覚えるかもしれません。総じて凄惨かつエロティックでありながら、どこか笑えるような、ユーモラスな味をも伴うのが本著の特徴ではないかと思います。

    さらに、物語の展開が全く想像出来ないところも本著の面白いところです。ただしこれは本著だけではなく、山田風太郎先生の小説すべてに言えることでしょう。
    一つだけ読者に分かるのは、「相手は所詮女、しかも妊婦」と高をくくっている男たちが、首尾良く相手を倒したと思った矢先に想像を絶するような罠に嵌まり、悶絶しながら死んでいく羽目になる、というパターンが手を変え品を変えて繰り返されるということです。本来は暴力に滅法弱い筈の妊娠中の女性たちが、自信たっぷりの伊賀者を次々と返り討ちにしていく展開は「痛快」の一言に尽きました。

    そうした本著の中でも格別に忘れ難いのは「丸橋の方」の強烈なキャラクターです。忍者ではなく一介の妊婦に過ぎない登場人物ですが、本著を読んで以来、彼女の勇姿がある種のトラウマのように深く心に刻まれてしまい、それ以上の刺激的なキャラクターを求めて小説や漫画を次々と読み漁るようになりました。何しろ、あの本多忠勝や森長可ですら色々な意味で負けるのではないかと思える程のキャラクターです。こう書けば未読の方でもその強烈さをある程度は想像できるかもしれませんが、しかし百聞は一見に如かずです。特に山風忍法帖を未体験の方は是非ご一読を。

  • 奇想天外な展開は、まさに風太郎節。
    内容もさることながら、表紙のエロティックさに、思わずカバーをかけて読んでいました。

  • 再読。

    よくもまあ色んな術を思いつくもの。
    とんでも忍術大会だけでなく史実も織り交ぜられてて歴史好きならそこも楽しい。
    くノ一チームはそんなキャラが立ってなかった。悪役や脇役の方がキャラ立ちしている。
    忍法帖シリーズは1冊読むと何冊か続けて読みたくなる魔力あり。なので、次も蔵書BOXから召喚しよっと。

  • くノ一が全員妊婦というすさまじい発想。感服だ。

  • 家康の孫娘で、政略結婚として豊臣秀頼に嫁いでいた千姫に仕える侍女に、秀頼の子を孕んだ者が五人いるという。それは家康に対する千姫の復讐であり、その五人の侍女達は恐るべき秘術を身に付けた、真田家の女忍者達であった。
    苦悩した家康は、伊賀の精鋭五人に侍女達の抹殺を命じる。家康と千姫の確執、伊賀忍者と真田忍者の壮絶な闘いが幕を開ける―。

    くノ一忍法帖とだけあって、女忍者達が使う忍術は全て男にとって恐ろしいものです。
    筒涸らしや天女貝など、読んでて痛々しくなる術がたくさんでてきますが、かかってみたいとも思ってしまったり・・・(笑)。
    伊賀忍者達も性に関する術を使います。忍法帖シリーズの中で一番奇術が登場するものではないでしょうか。

    中だるみを感じましたが、それでも十分面白いです。
    特に男性諸氏にお勧めします。

  •  作者自身が忍法帖の代表作というだけのことはある。すごいね。

     とにかくストーリーの流れがすさまじいことと、発想が「ぶっとんで」いることは忍法帖の大原則だけど、確かにこれはすごい。とても思いつかないようなネタから始まって、これで終わりかと思ったところでまた別の発展をして、とんでもない落ちにつながっていく。すごい。

     忍法帖は、結局トーナメント戦というか、剣道や柔道の試合のような所があるのだけれど、これは案外ひとつの忍法を使い捨てにしていない。それは結構意外だった。逆に人間は実に使い捨てにする。だいたいこのシリーズの場合、忍者という人間は忍法を宿す器に過ぎないような所があって、実に単純に死ぬために登場してくるんだけど、この作品の場合それが忍者に限定されない。前半はそれで吹っ飛んだ。

     そもそも「出産」を含め、人間を欲望と生理と機能だけに還元しきったような乾いた物語作りがすごいのだけど、それがめちゃくちゃ魅力的で、肌がうずうずしてきてしまったりするのもまたすごいのである。

     まいった、まいった。
    2006/10/19

  • 『甲賀忍法帖』と同じく、寺田克也の表紙に惹かれて…。特に若い人にぜひ風太郎を読んで欲しいです。くのいち忍法帖なんてタイトルからしてよこしまな気持ちが無いと買えないですよ。期待して下さい。

  • 表紙は天野さんの講談社文庫で読んだ。
    ここでの検索で見つけられなかった。

  • 新聞の書評欄を見て購入。
    くノ一恐るべし…。
    8冊。

  • やっぱり山田風太郎は天才だあー!と喝采せずにはいられません。ミステリもそうだが、なんて最後の一文が上手いんでしょう。しかも決してあざとくなく。

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著者プロフィール

1922年兵庫県生まれ。47年「達磨峠の事件」で作家デビュー。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で探偵作家クラブ賞、97年に第45回菊池寛賞、2001年に第四回日本ミステリー文学大賞を受賞。2001年没。

「2011年 『誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 山田風太郎ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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