虚像淫楽 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)

  • 角川書店 (2010年7月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784041356548

作品紹介・あらすじ

性的倒錯の極致がミステリーとして昇華された初期短編の傑作「虚像淫楽」。「眼中の悪魔」とあわせて探偵作家クラブ賞を受賞した表題作を軸に、傑作ミステリ短編を集めた決定版。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

性的倒錯をテーマにした短編ミステリーの傑作集で、特に表題作はその独特な魅力を存分に発揮しています。読者からは、短編ごとの鋭い切れ味や、切なさと恐怖が交錯するストーリーが高く評価されており、特に「黒衣の...

感想・レビュー・書評

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  • 「眼中の悪魔」……久生十蘭 「湖畔」みたいな手紙犯行告白ミステリー。『チーム・バチスタ』みたいな視界の欠損がからんでくる。

    「虚像淫楽」……「外科室」みたいな医師と患者の秘められた想い。「D坂」みたいなSM趣味が裏にある。

    「厨子家の悪霊」……「藪の中」みたいに事件の真相が複数の視点から異なって語られる。f.v.d.g.スティーヴンソン「ハーフ・ホワイト」みたいにハンセン病が簡単に伝染しているが実際はそんなことはない。

    「黒衣の聖母」……閨室で明かりを消してしまっただけで、ほんとに右も左もわからなくなってしまうものなのか?『エム・バタフライ』みたいに。

    「死者の呼び声」……これにも書簡が登場するが、書簡の中に書簡が、さらにまた意表を突く書簡が……。『カササギ殺人事件』みたいな多重入れ子細工ミステリー。

    「黄色い下宿人」……ホームズのパスティーシュ。漱石が出てきて推理で活躍する。”アレ”とか”アレ”みたいに。だが本作はなんと昭和28年の作品。

  • 山田風太郎の傑作短編ミステリ集である。十分面白かったが、忍法帖や明治物に比べると、今ひとつ物足りない。これが短編を積み重ねて一つの物語にする連作のスタイルならば、満足感が大きいのだが、単発で終わると物足りなく感じてしまう。ちょっと贅沢かもしれないけど。

  • 「黄色い下宿人」目当てで読む。ミステリーの中に、中国人を入れるなよ、というなんちゃらの法則を逆手にとった感じだった。

    その病気は感染しないよな……と思ったらちゃんと注意書きがありました。よかった。

    「恋罪」「死者の呼び声」はオチがよかった。

  • 黒衣の聖母が一番好き。切なさとゾッとする感じが最後心に残る。

  • 山田風太郎のミステリー傑作集。山風入門編に編んだ作品集ということで粒ぞろいの小品を集めてます。が、小品といっても侮るなかれ。氏の代表作でベストセラーにもなった忍法帖シリーズにも共通する奇想が詰まってます。
    以下簡単に雑感。

    「眼中の悪魔」。
    医師の弟から兄へ、手紙の形を借りて綴る恐ろしき計画犯罪。
    遺書であり告解であり告発。文字通り盲点を突いた話。
    彼のしたことは暗示か殺人教唆か。
    自分の手は一切汚さず憎むべき者を破滅に追いやった男を待ち受ける非業の末路とは。
    医学的知識がなければ解けないトリックより痴情の縺れを起点とする心理の倒錯を楽しみたいところ。

    「虚像淫楽」。
    過去、自分のもとで働いていた看護婦が自殺未遂の急患として運ばれてきた。
    治療にあたった医師の千明は、その全身に鞭打たれたあとだろう無数のみみず腫れを発見し……
    夫と妻、どちらがマゾでサドなのか。兄嫁を慕う紅顔の美少年をも巻き込んだ倒錯性愛の極北。

    「厨子家の悪霊」
    横溝正史か江戸川乱歩か、深い雪に閉ざされた地方の豪家で起きた凄惨な殺人事件ははたして片目の悪霊の祟りなのか?
    どんでん返しに次ぐどんでん返しで目が廻る。厨子家の後妻を惨殺した真犯人はだれだ?
    策に溺れた犯人を待ち受けるのは皮肉な運命であった。

    「蝋人」
    被害者に同情できない。

    「黒衣の聖母」
    天使のような悪魔がいるなら聖母のような悪女もいるわけでして。
    そして娼婦が聖母だったりするんだなこれが。

    「恋罪」
    駆け出し小説家のもとにかつての旧友から届いた手紙にしるされた驚くべき内容とは。
    山田風太郎はどうやらサドマゾ嗜好に興味があるご様子で、「虚像淫楽」に引き続きこちらも夫婦間の倒錯した性生活に焦点を当てている。それを目撃した男の悲劇。山田風太郎への手紙の形式をとって綴られるのだが、作者への呼びかけに透けて見える屈折した羨望や憧れに萌えてしまった。

    「死者の呼び声」
    騙すものは騙されるもの、殺されるものは殺したもの。二重三重の傀儡悲喜劇。あえて無関係な第三者を冒頭の語り手に指定する導入部が上手い。
    「封筒の中の探偵小説」「封筒の中の封筒の中の探偵小説」というサブタイトルの仕掛けが憎い。
    話が入れ子細工になっているので次第に虚実の境が曖昧になってくる。

    「さようなら」
    これもまた愛の形。警察はやっぱ身内殺しに厳しいのか。

    「黄色い下宿人」
    ホームズパスティッシュの傑作。本家では言及されるだけで終わる事件を扱って読者を納得させるだけの説得力をもたせるのもすごい。ドイルの訳文を意識してるのか、文章もまた本家と比較して遜色ない。
    原作のホームズはつんと澄ました、見ようによってはやな奴なんですが(そこが素敵)山田風太郎のホームズは愛嬌があって憎めない。
    しかしかの名探偵ホームズが一杯食わされる話でもあるので、本家ホームズファンの中には怒る人もいるかも。
    謎の日本人留学生・棗の正体にも注目。

  • 忍者の話ばっかりというイメージがあり、短編は意外と作者の力量が表れるところがあるので正直あまり期待していなかった。
    しかし読み始めて見たら内容の秀逸さに驚き、集中力をもってして一気読みしてしまった。
    戦後あたりの時代を私が好きなのもあるが、黒衣の聖母が一番残酷な結末だった。

  • 山田風太郎は本物のストーリーテラーであることが分かるし、本当に文章が上手い。長いことずっと忍法帖のイメージしかなかったのだが、ここ何冊かでそれは大きく覆った。ここには9つの短編が収録されているが、いずれもが変幻自在なアイデアに満ちている。その視点は人間の深層を探り、戦争を憎み、何よりも小説的な面白さの追求に向けられている。
    「厨子家の悪霊」と「黒衣の聖母」が好きだ。

  •  山田風太郎の初期ミステリー傑作選。

     今まで作者の忍者物と明治物ばかり読み漁っていて、ミステリーの方は手に触れることがなかったのですが、読んでみたら、やはり山田風太郎、読み応えのある作品ばかりでした。

     忍者物に通じるエロティシズムや一筋縄ではいかない奇想天外なストーリー構成などが展開し、作者の魅力を再発見した感じでした。

     特に、人間の深い心の闇の部分を描写したストーリー展開は、ある意味人間ドラマのリアリズムを追求したようで、とても興味深かったです。

     まだまだ人について理解が不十分であることを実感しました。

  • 山田風太郎記念館

  • ミステリー短編集。どろっとした独特の世界観と、読み終わった後の「ああ、そういうことか」と思わせるところが秀逸だなと思った。

  • 『眼中の悪魔』
    自分の恋人である珠江を奪った友人・片倉に対する復讐。珠江の様子に疑いを持つ片倉。珠江に付きまとう異母兄弟・定の正体を疑う片倉。定に抱きつく珠江を目撃。珠江の目が見えなくなっているのではないかと心配し「私」に相談した片倉。「私」が下した診断。嫉妬に狂った片倉の殺人。

    『虚像淫楽』
    毒を飲んで重体となって病院に運び込まれた森弓子。弓子を運び込んだ義弟・酒井卯助。彼女が元勤めていた病院。彼女の家で死んでいた夫・酒井房太郎。弓子の体に残された傷の秘密。房太郎、卯助、弓子のゆがんだ関係。かつて弓子の恋人であった千明医師。

    『逗子家の悪霊』
    逗子夫人薫子殺害事件。遺体を発見したのは伊集院医師。遺体の横で踊っている義理の息子・弘吉。馨子の喉笛にかみついていた犬。犬を指差し「逗子家の悪霊」という弘吉。前妻の狂気により塩酸をかけられ仮面をかぶる弘吉の父親・荘四郎。弘吉の作る家族の仮面。犯人として逮捕される弘吉、容疑者となった伊集院医師。伊集院医師と馨子夫人の関係。

    『蝋人』
    密室で殺害された矢柄聖之介。あいていたのは人の体が通り抜けることができないほどの隙間のあいた窓。十字架を額に載せられアジサイを口に詰められた遺体。今西医師に送られた矢柄の手紙。彼が森で出会った兄妹。骨のない妹との恋。隠れキリシタンの村に隠された秘密。

    『黒衣の聖母』
    学徒出陣で出征した蜂須賀。出征前に愛した女性。復員後歩いた東京で出会った売春婦。学校で勉強しながら夜は売春婦として働く鏡子。子供を抱えている鏡子。暗い部屋で変わる女。鏡子にひかれ通い詰める蜂須賀。ある夜暗闇の中で観た女の顔。殺害された鏡子と蜂須賀に届けられた手紙。

    『恋罪』
    推理小説家・山田風太郎に宛てた手紙。疎開先で出会った女・黎子に再会した新納医師からの手紙。彼女の夫である伊皿子から暴力を受ける黎子。黎子の浮気を疑う伊皿子の暴力。彼女の為に伊皿子を殺害しようとする新納。黎子と結婚した新納に訪れたどんでん返し。

    『死者の叫び声』
    勤め先の社長から結婚を申し込まれた蘆川旗江。旗江に送り付けられた手紙。島津子爵家の結婚披露パーティーでの暴露事件の秘密。

    『さようなら』
    東京を襲ったペスト。ペストの被害拡大を防ぐために避難した住人。かつて空襲で焼けた町に似た町。空襲のために正気を失った女性とその女性を愛する男の犯罪。

    『黄色い下宿人』
    ジェームズ・フィリモア氏の失踪事件。日本の船ヒタチマルを訪れたのちに消えた。フィリモア氏の召使クロプアマンの絵画コレクション。日本人ナツメの下宿先でのギブソン氏の殺人事件。ギブソン氏の正体は?シャーロック・ホームズの推理とナツメの推理。

  • 眼中の悪魔
    虚像淫楽
    厨子家の悪霊
    蠟人
    黒衣の聖母
    恋罪
    死者の呼び声
    さようなら
    黄色い下宿人

  • 綾辻行人の賞賛の帯をみてよんでみました。はっきり言って珠玉の短編集。秀逸です。短編ならではの鋭い切れ味を堪能できるでしょう。

  • 手ごろな値段と万人受けしそうな短編をそろえている。
    角川の値段ならそろえてしまいそうだが
    光文社のほうがアクがつよくて好きだなぁ……。
    なやむところ。
    角川を買ってしまった。

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著者プロフィール

山田 風太郎(やまだ・ふうたろう):一九二二年兵庫県生まれ。『甲賀忍法帖』『くノ一忍法帖』などで忍法帖ブームを巻き起こす。『眼中の悪魔』及び『虚像淫楽』で探偵作家クラブ賞(現日本推理作家協会賞)短編賞受賞。九七年菊池寛賞を受賞。『警視庁草紙』『戦中派不戦日記』『戦中派虫けら日記』などの日記文学、『人間臨終図巻』ほか著書多数。二〇〇一年没。


「2025年 『東海道綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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