虚像淫楽 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.94
  • (7)
  • (16)
  • (9)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 103
感想 : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041356548

作品紹介・あらすじ

晩春の夜更け、聖ミカエル病院に瀕死の女性が担ぎこまれた。女はかつて病院で看護師を務めていた森弓子で、昇汞を呑んでしまったという。千明医学士は手当てを始めるが、弓子の肢体に数条のみみず張れを発見する。直後、弓子の夫が同じく昇汞を呑んで自殺。夫婦に何が起こったのか?刻一刻と弓子の様態が悪化する中、驚愕の真相が明らかになる…(『虚像淫楽』)。探偵作家クラブ賞受賞の表題作を含む初期ミステリー傑作選。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 山田風太郎の傑作短編ミステリ集である。十分面白かったが、忍法帖や明治物に比べると、今ひとつ物足りない。これが短編を積み重ねて一つの物語にする連作のスタイルならば、満足感が大きいのだが、単発で終わると物足りなく感じてしまう。ちょっと贅沢かもしれないけど。

  • 「黄色い下宿人」目当てで読む。ミステリーの中に、中国人を入れるなよ、というなんちゃらの法則を逆手にとった感じだった。

    その病気は感染しないよな……と思ったらちゃんと注意書きがありました。よかった。

    「恋罪」「死者の呼び声」はオチがよかった。

  • 黒衣の聖母が一番好き。切なさとゾッとする感じが最後心に残る。

  • 山田風太郎のミステリー傑作集。山風入門編に編んだ作品集ということで粒ぞろいの小品を集めてます。が、小品といっても侮るなかれ。氏の代表作でベストセラーにもなった忍法帖シリーズにも共通する奇想が詰まってます。
    以下簡単に雑感。

    「眼中の悪魔」。
    医師の弟から兄へ、手紙の形を借りて綴る恐ろしき計画犯罪。
    遺書であり告解であり告発。文字通り盲点を突いた話。
    彼のしたことは暗示か殺人教唆か。
    自分の手は一切汚さず憎むべき者を破滅に追いやった男を待ち受ける非業の末路とは。
    医学的知識がなければ解けないトリックより痴情の縺れを起点とする心理の倒錯を楽しみたいところ。

    「虚像淫楽」。
    過去、自分のもとで働いていた看護婦が自殺未遂の急患として運ばれてきた。
    治療にあたった医師の千明は、その全身に鞭打たれたあとだろう無数のみみず腫れを発見し……
    夫と妻、どちらがマゾでサドなのか。兄嫁を慕う紅顔の美少年をも巻き込んだ倒錯性愛の極北。

    「厨子家の悪霊」
    横溝正史か江戸川乱歩か、深い雪に閉ざされた地方の豪家で起きた凄惨な殺人事件ははたして片目の悪霊の祟りなのか?
    どんでん返しに次ぐどんでん返しで目が廻る。厨子家の後妻を惨殺した真犯人はだれだ?
    策に溺れた犯人を待ち受けるのは皮肉な運命であった。

    「蝋人」
    被害者に同情できない。

    「黒衣の聖母」
    天使のような悪魔がいるなら聖母のような悪女もいるわけでして。
    そして娼婦が聖母だったりするんだなこれが。

    「恋罪」
    駆け出し小説家のもとにかつての旧友から届いた手紙にしるされた驚くべき内容とは。
    山田風太郎はどうやらサドマゾ嗜好に興味があるご様子で、「虚像淫楽」に引き続きこちらも夫婦間の倒錯した性生活に焦点を当てている。それを目撃した男の悲劇。山田風太郎への手紙の形式をとって綴られるのだが、作者への呼びかけに透けて見える屈折した羨望や憧れに萌えてしまった。

    「死者の呼び声」
    騙すものは騙されるもの、殺されるものは殺したもの。二重三重の傀儡悲喜劇。あえて無関係な第三者を冒頭の語り手に指定する導入部が上手い。
    「封筒の中の探偵小説」「封筒の中の封筒の中の探偵小説」というサブタイトルの仕掛けが憎い。
    話が入れ子細工になっているので次第に虚実の境が曖昧になってくる。

    「さようなら」
    これもまた愛の形。警察はやっぱ身内殺しに厳しいのか。

    「黄色い下宿人」
    ホームズパスティッシュの傑作。本家では言及されるだけで終わる事件を扱って読者を納得させるだけの説得力をもたせるのもすごい。ドイルの訳文を意識してるのか、文章もまた本家と比較して遜色ない。
    原作のホームズはつんと澄ました、見ようによってはやな奴なんですが(そこが素敵)山田風太郎のホームズは愛嬌があって憎めない。
    しかしかの名探偵ホームズが一杯食わされる話でもあるので、本家ホームズファンの中には怒る人もいるかも。
    謎の日本人留学生・棗の正体にも注目。

  • 忍者の話ばっかりというイメージがあり、短編は意外と作者の力量が表れるところがあるので正直あまり期待していなかった。
    しかし読み始めて見たら内容の秀逸さに驚き、集中力をもってして一気読みしてしまった。
    戦後あたりの時代を私が好きなのもあるが、黒衣の聖母が一番残酷な結末だった。

  • 山田風太郎は本物のストーリーテラーであることが分かるし、本当に文章が上手い。長いことずっと忍法帖のイメージしかなかったのだが、ここ何冊かでそれは大きく覆った。ここには9つの短編が収録されているが、いずれもが変幻自在なアイデアに満ちている。その視点は人間の深層を探り、戦争を憎み、何よりも小説的な面白さの追求に向けられている。
    「厨子家の悪霊」と「黒衣の聖母」が好きだ。

  •  山田風太郎の初期ミステリー傑作選。

     今まで作者の忍者物と明治物ばかり読み漁っていて、ミステリーの方は手に触れることがなかったのですが、読んでみたら、やはり山田風太郎、読み応えのある作品ばかりでした。

     忍者物に通じるエロティシズムや一筋縄ではいかない奇想天外なストーリー構成などが展開し、作者の魅力を再発見した感じでした。

     特に、人間の深い心の闇の部分を描写したストーリー展開は、ある意味人間ドラマのリアリズムを追求したようで、とても興味深かったです。

     まだまだ人について理解が不十分であることを実感しました。

  • 男女がテーマのサスペンス8篇+α

    ・感想
    個人的に好きだったのは「黒衣の聖母」と「死者の呼び声」でした。前者は伏線の立て方と、それが生むクライマックスの衝撃が好きです。後者は一見、複雑な構造に見えるも、読みやすいです。

  • 山田風太郎記念館

  • ミステリー短編集。どろっとした独特の世界観と、読み終わった後の「ああ、そういうことか」と思わせるところが秀逸だなと思った。

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1922年、兵庫県養父市生まれ。
東京医科大学在学中の’47年、探偵小説誌『宝石』の
第一回懸賞募集に『達磨峠の事件』が入選。
’49年に『眼中の悪魔』『虚像淫楽』の2編で
日本探偵作家クラブ短編賞を受賞。
’58年から始めた「忍法帖」シリーズでは
『甲賀忍法帖』『魔界転生』などの作品があり、
爆発的ブームに。その他本作『警視庁草紙』に始まる
明治もの、『室町お伽草子』などの室町もの、
『戦中不戦派日記』『人間臨終図巻』など、著作多数。
2001年、79歳で逝去。
本年2022年で生誕100周年を迎える。



「2022年 『警視庁草紙‐風太郎明治劇場‐(3)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山田風太郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×