警視庁草紙 上 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)

  • KADOKAWA (2010年8月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784041356555

作品紹介・あらすじ

初代警視総監川路利良を先頭に近代化を進める警視庁と、元江戸南町奉行たちとの知恵と力を駆使した対決。綺羅星のごとき明治の俊傑らが銀座の煉瓦街を駆けめぐる。風太郎明治小説の代表作。

みんなの感想まとめ

明治時代の警視庁と江戸の奉行たちとの知恵と力を駆使した対決を描いた作品で、登場人物の多様性や歴史的背景が魅力です。読者は、明治の大警視・川路やその部下たちが繰り広げる推理と力技のバトルに引き込まれ、江...

感想・レビュー・書評

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  • 拙者、山風の明治ものクロスオーバー大好き侍なので、こちらにも手を出す。
    本当は幻燈辻馬車よりこっちを先に読むべきだったかも。

    とりあえず上巻を終えての感想は、
    早く読み切らないと、登場人物が覚えきれない!です!

    内容としては、明治の大警視の川路とその部下たち(藤田五郎もいるよ)vs江戸の警察たる奉行さまとその手下たちの推理&力技バトル。
    そこにあちこちの有名人やその親が登場。
    江戸と明治は本当に地続きなんだなあ、そこに大正昭和が連なっているんだなあと、まあ当たり前のことだが、それをしみじみ感じた。
    明治の軍人官僚が薩長土肥だったけど、冷遇された佐幕側の藩士たちの思いは(とくに会津、越後、加賀)、改革派だったのに内ゲバで全然活躍しなかった水戸藩は、そして忘れ去られた奥羽から昭和の軍人が多く輩出された理由、と時代も人も縦横無尽で知識がぐるぐる回されていく。

    冒頭に少しだけ登場する、半七捕物帖の半七にも、偶然に頼りすぎ、と一喝する山風。笑わせてもらった。

    上巻では幻談大名小路と、幻燈煉瓦街が面白かった。
    東條英機の家が会津の能楽師だったことも初めて知る。

    ラストに出た冷血漢の鳥坂は架空のキャラか。
    この人の物語は、架空なのか、史実なのか、いつもなかなかわからない。

    山風の視線は、江戸に置いて行かれた人々の側にある。
    これからどうなっていくのか楽しみ。

    たまに、あたおか性快楽マシーンみたいな女性キャラが、一ミリも感情のない道具として登場するのがキツイ。
    これがまあ山風ワールドの醍醐味でそこがないと解決しない話も多いのですが、今の私にとってはそれが最大の雑音でした。

    読んでいると、たんげいすべき、たんげいすべからず、とかが口癖になりそう。

    ちらっと読んだ最近の漫画バージョンの兵四郎は、色気お兄さんという感じで、私のイメージと違ってて笑った。

  • 電子

  • Kindle Unlimitedで読了。魅力的な話ばかりで楽しめた。

  • とにかくツルツルッと軽快に読めてしまうのだが、この史実とフィクションを幾重にも織り交ぜるのはなんという技巧であろうか。

    もともと気になっていた作家だったのだが、このたび渡辺京二の推薦からたどりついた。なるほど、渡辺京二がこれを好きだったのはわかる。汽車も横浜までしか走っておらず、銀座も煉瓦造りを建ててみたもののまだ中身が伴わない、丸の内あたりは焼け野原、元武士が刀を差して歩いている。そんな近世と近代の汽水域みたいな明治初頭が舞台になる。

    また、泰三子が川路利良を主人公に新作を描いているようなので、そちらも読んでみよう。

  • 「明治牡丹燈籠」
    ■”征韓論”に敗れた西郷隆盛が東京を去る前夜のこと。西郷の警備を担当する油戸巡査が夜半、路上に停まる不審な人力俥を見かける。人力俥の俥夫は梶棒の間にうずくまったままで動かない。安否を問えば幌の中からひとりの美女が顔をのぞかせ、俥夫が腹痛を訴えたので一時休んでいるだけだと答えた。油戸巡査は了解していったんそこを離れたが、気になったのであとで戻ってみると人力俥はすでになく、俥の下には血だまりが残っていた。油戸が次の朝あらためて現場に出かけて検分すると、ぬかるんだ泥道に俥輪のわだちがあるのを発見、油戸は迷わずその跡をたどる。するとそれは一件の民家へと続いていたのだが、そこを訪ねると、雨戸の内側から目張りがしてあり、部屋の中ではひとりの男が血だらけになって死んでいた。………事件は岩倉具視暗殺計画につながり、さらに「牡丹燈籠」創作秘話がからんでくる。
    ■ゲスト……三遊亭円朝、半七

    「暗黒淵の警視庁」
    ■場所は赤坂食い違い坂、ついに岩倉具視が襲われた。警視庁の加治木警部は犯人が土佐の壮士たちであることを突き止め、彼らの根城を包囲して今まさに一網打尽にしようとしている。一方時を同じくして千羽兵四郎は、取り囲まれている犯人のうちのひとり、大国源次郎の女中お常から、なんとか源次郎を救いだして、あとひと目でもその妻に合わせてやってくれないか、というムチャな依頼をされる。……千羽兵四郎の奇策で大国源次郎を含む犯人たちはいったん逃亡に成功するが、結局源次郎夫妻は追い詰められてそろって自害、他の一味はことごとく捕縛のうえ、のち斬首される。なお同時期、江藤新平が佐賀で反乱を起こしたとの報が届く。

    「人も獣も天地の虫」
    ■明治政府による娼妓解放令によりいわゆる公娼は存在しなくなったが、隠し売女というのは横行していた。松岡警部はこの事態を憂慮し、彼女らを一斉に検挙、収監した。そしてそのあと、保証人と念書(金輪際売女をやらないという)のあるもの以外は釈放せず、との決定を下した。これで売女たちにとってはなはだ困った事態となる。というのも、彼女たちの中には幕臣や侍の娘が少なからず含まれていて、現在のその姿が親元に知られることはすなわち一家心中を意味することにほかならないからだ。この事態を知った芸者・お蝶は、売女として捕まった多くの友人を牢獄から救い出してくれるようその愛人・千羽兵四郎に無理な頼み事をしてきた。
    ■ゲスト……次郎長の子分・小政、青木弥太郎、高橋お伝、高杉晋作の愛人・おうの、坂本龍馬の妻・お竜

    「幻談大名小路」
    ■盲目の按摩がとつぜん路上で数人の男たちに声を掛けられ、大名小路にある殿さまの屋敷というところに連れていかれる。そこで按摩を待ち受けていたのは意外にも、かつてその失明の原因となった元加賀藩の家老・奥戸外記だったのだが、按摩は驚いているヒマも与えられず、男たちによって奥戸の背におんぶの恰好で押し付けられ、なおかつ奥戸の後ろからその首に匕首の刃を当てた姿勢で身構えるよう強いられる。一方奥戸の方も男たちの命令には逆らえないようで、按摩を背負ったまま屋敷内の長い廊下を歩かさせる。行き着いたところで奥戸は、”殿”と呼ばれる人物から”鶴姫”の居所を難詰される。奥戸が「小松川の癲狂院」と答えたところで按摩は腹を打たれて気絶。再び意識をとり戻したのはもと居た路上。隣で声がして、今からここに来る男に先ほどの出来事を全て話すよう命じられる。やがて男が到着し、按摩は言われたとおり全てを物語るがそれを聞きおえた男は按摩を切り殺そうとする。按摩は命からがらその場から逃げ去ることができたのだが、そもそもこの一連の出来事は一体何だったというのか? ……ところで按摩が不思議な体験をした大名小路はその2、3年前大火で灰燼に帰し、屋敷など何も残っていない場所のはずであった。
    ■ゲスト……芦原将軍、夏目漱石(子ども時代)、樋口一葉(子ども時代)

    「開化写真鬼図」
    ■ひょんな成り行きから果し合いの介添え人になった兵四郎。だが相手側の介添え人として現れた人物が誰あろう油戸巡査で、平四郎は”「人も獣も天地の虫」の事件の時のアイツ”だと気付かれ、その場から遁走する。しかし兵四郎に介添えを頼んだ男は兵四郎に関係ある者として逮捕され連れ去られてしまう。このままでは兵四郎の正体がばれて身に危険が及ぶ。男を釈放させるため、隅のご隠居は珍妙な策を考え出す。
    ■ゲスト……唐人お吉、下岡蓮杖(写真家)

    「幻燈煉瓦街」
    ■銀座――明治五年の大火のあと建築された煉瓦街。しかし当時の人びとにとって洋風建築は肌に合わなようで人気がなく、空いたスペースは香具師たちによる見世物小屋などに利用されるばかりだった。そしてその中のひとつ、覗きからくり屋では鍵屋茂兵衛の悲劇(井上馨の非道ぶりをあげつらう内容)が演じられていた。演目が終わり一座が引き揚げたのち、つい先ほどまで衆目が集まっていたはずの覗きからくりのステージ上で、すでに完全に冷たくなった男の割腹死体が発見された。いつの間にこんなことが? しかもその死んだ男は、井上馨の腹心で尾去沢銅山で経営者にあたっていた岡田平蔵なる人物であることがわかった。
    ■ゲスト……河竹黙阿弥、幸田露伴(子ども時代)、田中久重(からくり儀右衛門)

    「数寄屋橋門外の変」
    ■先の事件の舞台となった”からくり煉瓦”でまた事件発生。しかも今回は男18人が一斉に毒殺されるという痛ましいものだった。しかし調べてみると被害者は全て井上馨の息のかかった元彦根藩士で井伊直弼の家来だった。さらに事件前、現場におびき出されていた巡査は、かつて井伊を暗殺した水戸浪士のひとりであった。

    「最後の牢奉行」
    ■市ヶ谷・新監獄へ移転が決まっている伝馬町の囚獄に川路大警視他が視察にやってきた。ある死刑囚の斬首に立ち会うことが視察の目的のひとつであったのだが、刑執行にあたってその死刑囚を連れてこようとすると、囚人は鍵の掛けられた檻の中で縊死されていた。そしてその牢の鍵を預かる牢番こそは、かつて老屋敷奉行として代々襲名をかさねてきた石出帯刀、そのひとであった。石出はこの大失態によりまずは収監された。そしてそのまま獄死することはまぬがれない成り行きとなる。……しかしそもそも死刑囚は石出に殺されたのか? それもなぜ死刑の直前に? 事件の裏には、囚獄所長・鳥坂喬記による悪辣な奸計がはりめぐらされていた。

  • 推理劇、と言うよりは、江戸から明治に移る時代の人情劇を楽しむ物語という印象。歴史上の実在人物が多数登場するので、つい調べたりしてしまってなかなか読み進められなかった。

  • 維新からそんなに月日が経っていないので江戸が色濃い中での事件の数々。隅の隠居の奉行所VS川路率いる明治警察という図式。虚構入り混じっているがタイムラインがかなり緻密。実際にあったかもしれないような趣を蜃気楼の如く描き出す風太郎氏の筆さばきが素晴らしい。

  • 他の読者諸氏も書いていらっしゃるが、幕末の動乱から抜け出ていない江戸情緒を懐かしむ人々と、地方の成り上がり者が築いた明治政府、その官権の犬たる警察との攻防劇がみごと。

    ミステリー自体はあっとうならされるものではないのだが、まあ、時代劇の人情を楽しむもの。

  • 感想は下巻に

  • 明治小説。
    歴史小説という感じが好きになれなかったが、読んでみると意外にすらすら進んだ。
    ただ、文庫本で500頁以上の厚み、結構応えます。

  • 山田風太郎さんの傑作小説です。
    帯の
    「これほど見事に日本近代化の陣痛を描出した作品はない」森村誠一
    これにヤられました。
    見事な帯文句ですね。
    僕の帯歴No.1です。

  • 山田風太郎作品、初めて読みました。こんなに面白かったとは!
    近代化を進める明治初年の警視庁と、御一新が気に入らない元江戸南町奉行所の面々との知恵比べ。私たちは「明治維新」により江戸から明治にスパッと時代が切り替わったように思ってしまいがちだけれど、人の心や社会というのはもちろんそんなものではなく、新しい時代と古い時代のはざまで人は揺れ動きながら日々を生きているんだな。
    脇役として西郷隆盛から新撰組斉藤一まで綺羅星のごとく登場し、いい意味であっという間に読める、歴史・娯楽ミステリの連作集。

  • 綺羅星の如く無数の有名人を登場させ、虚実入り混ぜ語られる、ありえたかもしれないもうひとつの明治史。背後にうかがえる膨大な教養や緻密な時代考証には、ただただ圧倒される。
    謎解きに”元奉行所VS警視庁”という対立構造を導入することで物語に奥行を増しているのも見事。

  • 明治の初め 江戸が残り明治になり切れていないグレーゾーンの世界。徳川への思いが残る人たちが、明治の警察に対抗する。学校で学んだ時代背景が、生きている世界に変わる。過渡期の社会が彷彿としてくる。過渡期の私はどうしよう

  • (欲しい!)/文庫

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著者プロフィール

山田 風太郎(やまだ・ふうたろう):一九二二年兵庫県生まれ。『甲賀忍法帖』『くノ一忍法帖』などで忍法帖ブームを巻き起こす。『眼中の悪魔』及び『虚像淫楽』で探偵作家クラブ賞(現日本推理作家協会賞)短編賞受賞。九七年菊池寛賞を受賞。『警視庁草紙』『戦中派不戦日記』『戦中派虫けら日記』などの日記文学、『人間臨終図巻』ほか著書多数。二〇〇一年没。


「2025年 『東海道綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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