幻燈辻馬車 下 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)
- KADOKAWA (2010年11月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041356623
作品紹介・あらすじ
危機に陥ったとき、お雛が呼ぶと現れる干兵衛の息子・蔵太郎と妻・お宵の幽霊。2人に助けられながら、干兵衛はいつしか自由党壮士と明治政府の暗闘に巻き込まれていた。お雛との平穏な生活を望みつつも、会津藩士だった頃の自分を自由党壮士の姿に重ねて心揺れる干兵衛。そんな中"赤い盟約書"を巡って事態は急展開する!最後に干兵衛が選び取る運命とは…。激動する時代の波に翻弄される人々の悲喜を謳い上げた大傑作。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
後半にはいり、干潟干兵衛が探し求めていた雛ちゃんのお母さんや干兵衛の奥さんの敵など謎がだんだんと明らかになっていく。
幻燈辻馬車は連載小説だったが、1年間の連載期限内でストーリが完結できなかったとのこと。単行本出版の際に加筆してストーリを完結している。解説には連載終了時の「幻のラスト」も掲載されている。 -
置き忘れたものを置いてくるために。
-
時代背景
-
@ledsun リコメンド。
テンポと設定の妙で読ませるね。どこまでが史実と整合して、どこからが作者の織り込んだフィクションかがわからなくなるところが面白い。 -
奇抜な設定で明治という時代を描いた秀作。辻馬車屋の千兵衛とお雛の前に現れる様々な人物の人間模様を通して、依然江戸時代~幕末の遺恨を引きずっている明治10年頃の在り様が、見事なまでの活劇となって活写されている。千兵衛のヒーロー感もあって、印象としては続き物の紙芝居を見ているような感覚だった。実在の歴史上人物も多数登場し、飽きさせない。たぶん歴史の勉強にもなる(笑)。
残念だったのは、「太陽黒点」や「明治断頭台」のように物語が最後に暗転するといった趣向がなく、2作と比べての衝撃が少なかったことと、トト様とババ様の幽霊が出てくることについての理由付けと説得力が欠けていたことだ。
しかしこれ読んで、板垣退助の自由民権運動に対する見方が変わってしまったわ。世の中の正義と悪は、あくまでも相対的なものなのだな。勝てば官軍。なるほど、然り。 -
「幕末の志士たちが尊王攘夷を唱えたのに代わって、彼らは自由民権をうたった。ただ幕末の志士は成功したから志士となり、明治十年代壮士は挫折したからただの壮士となる。」
この一文がこの小説を表している。全体を通して流れる虚無感、揺れ動く正義。その中でも山田風太郎の小説の持つ幽玄的な魅力は遺憾なく発揮されている。 -
上下巻と読んだ上での感想.上巻と下巻とのあまりのタッチの差がありすぎて,山田風太郎がよくわからなくなる.後半が以前より抱いていた著者としての山田風太郎像に近い.”仕掛け花火に似た命”という表現はこの作品が初出ではないようだが,しっくりくるものとして使われている.