忍びの卍 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 90
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (542ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041356647

作品紹介・あらすじ

時は寛永9年。三代家光の治世である。大老土井大炊頭の近習・椎ノ葉刀馬は、御公儀忍び組に関する秘命を受ける。伊賀・甲賀・根来の代表選手を査察し、最も優れた組を選抜せよというのだ。妖艶奇怪この上ない忍法に圧倒されながらも、任務を果たす刀馬。全ては滞りなく決まったかに見えたが…それは駿河大納言をも巻き込んだ壮絶な隠密合戦の幕開けだった。卍と咲く忍びの徒花。その陰で描かれていた戦慄の絵図とは…。公儀という権力組織を鮮烈に描いた名作。

感想・レビュー・書評

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  • 徳川家光の治世。
    御公儀隠密として徳川家に仕える甲賀、伊賀、根来の三派を、最も優れた一派のみにまとめるという大老・土井大炊頭の命から、遠大なる物語が幕を開けます。

    大炊頭のとんでもない命令によって三派による忍法合戦、全面戦争が始まるかと思いましたが、三派それぞれを代表する三人の忍者が、査察人の前で忍術を披露するという事務的な幕開けでした。
    正直、査察の場面で披露された三人の忍術にはふ~んとしか思わなかったのですが、後に実戦や姦計で使われるとこれらの忍術の恐ろしさがどんどん分かっていき、同じ忍術が状況によってバリエーションを増やしていくのがおもしろいです。ただびっくりするような忍術というだけでなく、それを物語の中で活かして更に忍術が進化していきます。

    物語は甲賀、伊賀、根来の代表忍者3人と査察人・椎ノ葉刀馬を中心に展開していき、ここに家光の弟・忠長、刀馬の許嫁・お京、そして異様な存在感を放つも捉えどころのない大老・土井大炊頭などが絡んでどこへ物語が転がっていくのか分かりません。
    それぞれが腹に一物持っていて、どこまでが騙し合いなのか分からない。
    そうした不安の中でもその時々の戦いやエピソードは楽しく、それぞれのキャラクターもどんどん輝きを増していきページを繰る手が止まりません。

    三人の忍術はまさに女を道具の如く扱う忍術ばかり。
    しかし、そうした経緯を経ての終盤の虫籠右陣の言葉には胸に迫るものがあります。
    忍者・虫籠右陣はとんでもない曲者で大好きになってしまいました。
    そして忍者ではありますが筏織右衛門の剣術の場面は圧巻です。
    忍術も凄いけれど剣術もかっこいい!
    大炊頭に似ているといわれ、大老の多大な期待を寄せられた椎ノ葉刀馬が選んだ結末がまた凄い。振り回され続けた彼の最期の言葉にこそ、彼の人としての貫録と偉大さが表れているようです。

    登場人物はあまり多くなく、ほとんど忍者3人と椎ノ葉刀馬の場面です。この4人の死闘がどうなるのか大いに楽しんで読み進めたからこそ、最後まで読んだ時の衝撃は凄かったです。まさかここまで壮大な物語になるとは思いませんでした。それまでの印象がガラガラと崩れるとともに、あの時のあの言葉が、あの行動が、違う意味を持って目の前に突き出されます。最初から最後まで計算されつくした展開と真相に興奮し戦慄し、しかし最後は涙なしでは読めませんでした。
    間違いなく大作、名作、傑作。ただただ面白い!の一言です。

    • kwosaさん
      「忍術も凄いけれど剣術もかっこいい!」
      同感です。これは本当に面白い。大傑作ですよね。
      僕は以前に角川文庫の旧版を古本で読んだのですが、復刊...
      「忍術も凄いけれど剣術もかっこいい!」
      同感です。これは本当に面白い。大傑作ですよね。
      僕は以前に角川文庫の旧版を古本で読んだのですが、復刊されて良かったとよろこんでいます。
      ニコルさんのレビュー、いつも楽しみに拝読しています。そして本選びの参考にもさせて頂いています。
      『忍びの卍』『妖異金瓶梅』が高評価でうれしい。山風『明治断頭台』『幻燈辻馬車』もおすすめなので、お時間があれば是非。
      2012/10/18
    • ニコルさん
      kwosaさん
      コメントありがとうございます!
      kwosaさんの読んでいる本はわたしが気になっている本が多くて、こちらこそいつも楽しみにして...
      kwosaさん
      コメントありがとうございます!
      kwosaさんの読んでいる本はわたしが気になっている本が多くて、こちらこそいつも楽しみにしています。
      「忍びの卍」はこれまで読んだ忍法ものの中では一番好きかもしれません。
      山田風太郎は全作読破をめざしていて「明治断頭台」も積んでいるので楽しみです!
      2012/10/18
    • kwosaさん
      山田風太郎全作読破は夢ですよね。
      まだまだ遠い果てしなき夢ですが...
      僕もニコルさん★5つの「柳生忍法帖」を積んでるので楽しみです!
      山田風太郎全作読破は夢ですよね。
      まだまだ遠い果てしなき夢ですが...
      僕もニコルさん★5つの「柳生忍法帖」を積んでるので楽しみです!
      2012/10/18
  • せがわまさきさんがバジリスクとかY十Mとかを連載してる時に読んだ記憶がある。
    あとがき書いてる人も言ってるけど、山田風太郎さんの考えた南方は本当に斬新。グロくてエロいけどグロさやエロさが吹っ飛ぶレベルとでもいうか。
    また女キャラが利用されるだけ利用されるもただ流されるだけの性格ではないというところも良い。

    ところで駿河大納言忠長というのはシグルイで殺し合い祭りを開催したあの人のことだろうか?この作品では聡明で優しい人として書かれているけど。

  • 山田風太郎らしい忍法合戦。忍者の非情さが良く出た一作。個人的には面白かったが嫌悪を持つ人もいるかも知れない。

  • もう忍術じゃねーし。
    でもってエロいし。

    いつもの忍者小説なんだけど、
    ラストがいたたまれなくてヘコむ。

  • 風太郎の忍者ものにしては、そして、この枚数にしては登場する忍者が相当に少ない印象がありました。
    忍法もそう派手なものじゃなし、どちらかというと、登場人物の背景に興味がわく作りでしたね。
    オチで証される物語の背景もブラックで良い感じでした。
    陰謀小説とかが好きな人にお勧めかも。

  • 徳川家光の時代。幕府隠密三派の実力試しのため、各流派の代表者を査定する密命を帯びた若侍。

    こんな忍法があったら怖い。
    映像化できないだろうな、これは(笑)

    家光時代の陰謀といえば、当然のごとく、あの兄弟間の確執。史実通りで結末は分かっているし、黒幕の謀もだいたい読めた。

    構成としては巧みで完成度は高いのだが、えげつないくらい女がいたぶられて死ぬ、の連続で、それを主人公ですら許容しはじめるのがうすら寒い。

    大納言卿の温情とお京の正義感だけが救い。
    『辻馬車』はおもしろかったのにな。山風の忍法帖シリーズは合わなかった。

  • 登場する忍法はエロいしグロいし、
    他の忍法帖に出てくるものと比べると
    そう大したものではないのだが、
    物語の展開においては必須だっただろう。
    刀馬の変貌ぶり、お京の決断には悲壮さが滲み出ている。
    忍び三人衆の受けた密命が明かされるラストは圧巻。

  • かなりエロくて、悶々としながら読んだ。

    これまでに読んだ「甲賀忍法帖」「魔界転生」に較べると登場人物はぐっと減ったけど、その分濃密なバトルと心理戦が読めて充実の一冊でした。

    伊賀、甲賀、根来それぞれの忍者が使う術はどれも女の体を道具にした奇想天外で卑猥なもの。
    その忍法合戦も面白かったけど、その裏に張り巡らされた権謀術数も読み応え充分。
    本当の敵は一体誰なのか。
    それぞれの忍者の行動に隠されていた真意が明かされるラストにはやられた。

    どんなに超人的な技を身に着けても所詮は権力の道具として使い捨てられる、それでもそこにアイデンティティーを求めるしかない忍者たちの哀しい宿命が肌に感じられた。

    大満足の一冊!

  • 人数は少ないが、一癖も二癖もある忍びたち。織右衛門の技の応用には途中頭が混乱w
    毎度ながら無常で劇的な結末。心まで意のままに操ることはできないと、静かな怒りに満ちた最後の刀馬の台詞が効いている。

  • 2011、6月読了

    知る人ぞ知る名作と自分が認識していた一冊です。登場する忍者は3人とシリーズの中でも少なめですが、それぞれの出番多く、いずれの忍法も女体に施し忍法の深淵たる騙し討ち闇討ちに特化される特質で、当然ながら凄惨なエロエロシーンも多く、それでいて忍者が凄まじい技量を持つ剣客だったりするので迫力の点では、江戸~を大きく上回っていたと思います。


    さらに武士とは?そして忍者とは?その時代における立ち位置におけるアイデンティティーにまで言及されていたようで、それこそがラストにおけるどんでん返しに繋がるや溜息ものです。己の信を突き進むとするなら、時に親しい者との別離対立があり、さらに親しい者が女であったりすると胸に迫る哀切もひとしおとなります。ゆえにラストは非常に物悲しいものでした。

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