忍びの卍 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫 や 3-112 山田風太郎ベストコレクション)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010年12月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041356647
作品紹介・あらすじ
時は寛永9年。三代家光の治世である。大老土井大炊頭の近習・椎ノ葉刀馬は、御公儀忍び組に関する秘命を受ける。伊賀・甲賀・根来の代表選手を査察し、最も優れた組を選抜せよというのだ。妖艶奇怪この上ない忍法に圧倒されながらも、任務を果たす刀馬。全ては滞りなく決まったかに見えたが…それは駿河大納言をも巻き込んだ壮絶な隠密合戦の幕開けだった。卍と咲く忍びの徒花。その陰で描かれていた戦慄の絵図とは…。公儀という権力組織を鮮烈に描いた名作。
感想・レビュー・書評
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徳川家光の治世。
御公儀隠密として徳川家に仕える甲賀、伊賀、根来の三派を、最も優れた一派のみにまとめるという大老・土井大炊頭の命から、遠大なる物語が幕を開けます。
大炊頭のとんでもない命令によって三派による忍法合戦、全面戦争が始まるかと思いましたが、三派それぞれを代表する三人の忍者が、査察人の前で忍術を披露するという事務的な幕開けでした。
正直、査察の場面で披露された三人の忍術にはふ~んとしか思わなかったのですが、後に実戦や姦計で使われるとこれらの忍術の恐ろしさがどんどん分かっていき、同じ忍術が状況によってバリエーションを増やしていくのがおもしろいです。ただびっくりするような忍術というだけでなく、それを物語の中で活かして更に忍術が進化していきます。
物語は甲賀、伊賀、根来の代表忍者3人と査察人・椎ノ葉刀馬を中心に展開していき、ここに家光の弟・忠長、刀馬の許嫁・お京、そして異様な存在感を放つも捉えどころのない大老・土井大炊頭などが絡んでどこへ物語が転がっていくのか分かりません。
それぞれが腹に一物持っていて、どこまでが騙し合いなのか分からない。
そうした不安の中でもその時々の戦いやエピソードは楽しく、それぞれのキャラクターもどんどん輝きを増していきページを繰る手が止まりません。
三人の忍術はまさに女を道具の如く扱う忍術ばかり。
しかし、そうした経緯を経ての終盤の虫籠右陣の言葉には胸に迫るものがあります。
忍者・虫籠右陣はとんでもない曲者で大好きになってしまいました。
そして忍者ではありますが筏織右衛門の剣術の場面は圧巻です。
忍術も凄いけれど剣術もかっこいい!
大炊頭に似ているといわれ、大老の多大な期待を寄せられた椎ノ葉刀馬が選んだ結末がまた凄い。振り回され続けた彼の最期の言葉にこそ、彼の人としての貫録と偉大さが表れているようです。
登場人物はあまり多くなく、ほとんど忍者3人と椎ノ葉刀馬の場面です。この4人の死闘がどうなるのか大いに楽しんで読み進めたからこそ、最後まで読んだ時の衝撃は凄かったです。まさかここまで壮大な物語になるとは思いませんでした。それまでの印象がガラガラと崩れるとともに、あの時のあの言葉が、あの行動が、違う意味を持って目の前に突き出されます。最初から最後まで計算されつくした展開と真相に興奮し戦慄し、しかし最後は涙なしでは読めませんでした。
間違いなく大作、名作、傑作。ただただ面白い!の一言です。 -
もう忍術じゃねーし。
でもってエロいし。
いつもの忍者小説なんだけど、
ラストがいたたまれなくてヘコむ。 -
風太郎の忍者ものにしては、そして、この枚数にしては登場する忍者が相当に少ない印象がありました。
忍法もそう派手なものじゃなし、どちらかというと、登場人物の背景に興味がわく作りでしたね。
オチで証される物語の背景もブラックで良い感じでした。
陰謀小説とかが好きな人にお勧めかも。 -
登場する忍法はエロいしグロいし、
他の忍法帖に出てくるものと比べると
そう大したものではないのだが、
物語の展開においては必須だっただろう。
刀馬の変貌ぶり、お京の決断には悲壮さが滲み出ている。
忍び三人衆の受けた密命が明かされるラストは圧巻。 -
かなりエロくて、悶々としながら読んだ。
これまでに読んだ「甲賀忍法帖」「魔界転生」に較べると登場人物はぐっと減ったけど、その分濃密なバトルと心理戦が読めて充実の一冊でした。
伊賀、甲賀、根来それぞれの忍者が使う術はどれも女の体を道具にした奇想天外で卑猥なもの。
その忍法合戦も面白かったけど、その裏に張り巡らされた権謀術数も読み応え充分。
本当の敵は一体誰なのか。
それぞれの忍者の行動に隠されていた真意が明かされるラストにはやられた。
どんなに超人的な技を身に着けても所詮は権力の道具として使い捨てられる、それでもそこにアイデンティティーを求めるしかない忍者たちの哀しい宿命が肌に感じられた。
大満足の一冊! -
人数は少ないが、一癖も二癖もある忍びたち。織右衛門の技の応用には途中頭が混乱w
毎度ながら無常で劇的な結末。心まで意のままに操ることはできないと、静かな怒りに満ちた最後の刀馬の台詞が効いている。 -
大傑作じゃないか。忍者のやるせなさたるや筆舌に尽くし難い。 公儀隠密は人ではない。この言葉が重い。
同感です。これは本当に面白い。大傑作ですよね。
僕は以前に角川文庫の旧版を古本で読んだのですが、復刊...
同感です。これは本当に面白い。大傑作ですよね。
僕は以前に角川文庫の旧版を古本で読んだのですが、復刊されて良かったとよろこんでいます。
ニコルさんのレビュー、いつも楽しみに拝読しています。そして本選びの参考にもさせて頂いています。
『忍びの卍』『妖異金瓶梅』が高評価でうれしい。山風『明治断頭台』『幻燈辻馬車』もおすすめなので、お時間があれば是非。
コメントありがとうございます!
kwosaさんの読んでいる本はわたしが気になっている本が多くて、こちらこそいつも楽しみにして...
コメントありがとうございます!
kwosaさんの読んでいる本はわたしが気になっている本が多くて、こちらこそいつも楽しみにしています。
「忍びの卍」はこれまで読んだ忍法ものの中では一番好きかもしれません。
山田風太郎は全作読破をめざしていて「明治断頭台」も積んでいるので楽しみです!
まだまだ遠い果てしなき夢ですが...
僕もニコルさん★5つの「柳生忍法帖」を積んでるので楽しみです!
まだまだ遠い果てしなき夢ですが...
僕もニコルさん★5つの「柳生忍法帖」を積んでるので楽しみです!