誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)

  • KADOKAWA
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041356722

作品紹介・あらすじ

アパート「人間荘」に引っ越してきた私は、押し入れの奥から1冊の厚いノートを見つけた。歴代の部屋の住人が書き残していった内容には恐ろしい秘密が……ノワール・ミステリ2編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • ※誰にも〜は廣済堂版で先日すでに読んだので、ここには、評判をきいて手にとった、同時収録の棺のなかの〜の感想を書きます。

    すごく面白かった!
    主人公が特殊な状況にいるのに、わりと普通の感覚を失わないので、そこに好感が持てた。
    期日までに大金を使い切る、というテーマはインド映画にもあったなぁ。人間の夢だよね。
    この場合は破滅的な理由から始まるので、主人公は鬼気迫る想いなんだけど、3年の期日はけっこう長くて、そのあいだに、感情が動く様子も面白い。
    自棄になって、けっこうすぐに本心を明かしてしまったりする。

    6人の花嫁たち、そのドラマ。どの女たちも一種の理想だし、みんな最後にはあっぱれの覚悟を見せてくれる。
    主人公よりよほど男前なわけ。
    速水の顛末は想像がついたけど、最後の台詞のどんでん返しは最高だな!
    山田風太郎のストーリーテラーとしての力をこれでもかと見せてくれた本作、むちゃくちゃ気に入りました。
    面白い設定だなーー。
    この1500万は、今で言えば億単位なんだろうね。
    男のロマンであるところの幻想的な、女と金と時間。
    この世は淡い夢のようなものだ。
    ラストで現実に叩き落されるさまは痛快でもあるし悲哀でもある。
    オチの書き方も素晴らしかった。大満足。

  • 『太陽黒点』が非常に面白かったので、もっと騙されたいと思って購入(笑)
    中編「誰にも出来る殺人」と「棺(かん)の中の悦楽」の二本立て。
    共通しているのは、恋心を持て余した男の悲しみ、といったところで、
    どちらも切なく、やるせないけれど、愚か者の悪あがきがシニカルな笑いを誘う。

    ■『誰にも出来る殺人』
     舞台は昭和30年代の場末のアパート「人間荘」。
     二階建てで、部屋は全部で16室。
     12号室の新しい借り主が押し入れに残された厚いノートを発見し、読んでみると、
     その部屋の歴代の住人の中でノートの存在に気づいた者による手記が綴られていたが、
     それは単なる日記ではなく、いずれもこのアパートで起きた「事件」の記録だった。
     だが、読み進めるうち、語り手は、どこかがおかしい……と勘づく。
     タイトルは「誰もが誰かを殺したがっているかもしれないこと」を表している。
     少し読み進めた辺りで「ははぁぁん」と、ある可能性に思い至るが、
     動機というか、背後に隠された事情は、最後までわからない。
     エピローグの不気味な余韻が怖い。

    ■『棺の中の悦楽』
     後ろ暗い秘密と多額の現金を抱えた男が三年間でその金を使い切って死のうと考える。
     秘かに想い続けた女性に勝手に操を立ててきた鬱憤を晴らそうという気持ちもあって、
     大金をダシに女を取っ替え引っ替え……と言っても、
     根が生真面目なせいか、何かと妙な展開になってしまうのが、物悲しくもおかしい。
     そして、待ってました!――の、どんでん返し(笑)
     丸尾末広先生がマンガ化したら面白そう。

  • 『誰にも出来る殺人』
    下宿部屋-12号室の押し入れの奥、壁面のひび割れに押し込まれた一冊の黒いノート。そこにはその部屋の先住者たちが手を染めてきた犯罪の数々が連綿と書き記されていて……。いやしかし、真に邪悪な存在はその壁の向こう側に潜んでいたのだった……。

    『棺の中の悦楽』
    半年ごとに女を取っかえ引っかえしながら3年の後、大金を使い果たしたうえでいさぎよく自殺しようと決意した男。この男は大金をいかようにして手に入れたのか? なぜ自ら死を選ばなければならないのか? そして最後に男を待つ意外な運命の成り行きとは?

  • え?山田風太郎を読んだこと無いの?
    と驚かれて、この本を読みました。

    何故?今まで読まなかったの?

  • 久しぶりの山田風太郎だったが、とにかく、読みやすい。唸るようなトリックがある訳でもなく、深い感動がある訳でもなく、でも深く考えずにサクサク時間を忘れて読み進めるのが良い。お得意の連作方式なのも、次へ次へと読み進めたくなる要因だろう。

  • 「棺の中の悦楽」目当てで購入。「誰にも出来る殺人」はすでに読んでおり、これが山田風太郎得意の書簡体小説だが、「棺」はそうではない。「棺」の方が後に書かれたせいか、初期のミステリ作品に比べ、人物や場面の描き方が丁寧になっているように感じた。もしくは、これまで読んできた作品が、語り手の独白が中心のものが多かったから、そうではなく三人称で描かれることによって、そう感じたのかもしれない。個人的には、第三の花嫁に手を出せずに躊躇するところ、第四の花嫁をいたぶり、それをただ見ている無力の夫に自分を投影する箇所が面白かった。
    自分としては過去最高級に面白かったが、読書会で発表したところ、受けは微妙であった・・
    あらためて考えればやはり山田風太郎は娯楽小説の域を出ないのだろうか?いや、そうでないと思う。主人公は決して特異な人物として描かれてはいない。むしろどこにでもいる、「誰にも出来る」、「誰にも起こりうる」こととして描かれている(こんなに破天荒な内容に思われても)。「誰にも出来る殺人」にあったように、人は殺し合い犯しあい歴史をつくってきた存在で、人間とは生まれながらに愚かなのだ、教育では如何ともし難いのだ、と山田風太郎じしん、わかっていながら、やはり愛すべきものとして人間を描いているのだと私は考える。

  • 何冊目かの山田風太郎。ほんと素晴らしい。ほんとの物語作家だ。これを読んでしまったら、そのへんの小説なんて薄っぺらくて読めやしない。それほどに。
    人間の醜さや狡猾さや情念や、様々な人間を描き出すこの物語たち。「誰にも出来る殺人」「棺の中の悦楽」の2編の短編連作が収蔵されている。どちらも面白いが、特に「棺の中の悦楽」にはやられた。序章から充分に興味を引き付ける舞台設定で幕を開け、途中のエピソードで人間の様々な在り様を見せつけ、終章でこれ以上ない皮肉で締めくくる。この苦さよ!!これこそ物語であり、小説の一つの頂点ではないかとさえ思わされた。素晴らしかった。

  • 『誰にも出来る殺人』アパートの押し入れに隠されていた手記。次々と住人が変わる毎に話が展開していき……と物語の連鎖が大変私好みの中編でした。
    『棺の中の悦楽』こちらは悪漢小説ですね。ドラマチックな展開でしたが、ミステリ度は低めでした。

  • それは、押入れの奥、壁との隙間に挟まっていた。
    「誰にも出来る殺人」は、あるアパートの一室の歴々の住人が書き残した秘密のノートの話。
    「棺の中の悦楽」は、ある男の愛の流離を描いた作品。
    どちらの作品も、設定が突飛で、結末が知りたくて一気に読みました。ただ、好みじゃなかったぁ。

  • 2015年3月30日読了。山田風太郎のベストコレクション、独立した短編が最終的に一つのお話に収斂される「連鎖式」物語2編を収録。両者に漂う昭和風味・スポーツ新聞の連載小説を読んでいるような下世話なオッサン感覚はクラシック感満載だが、特に「棺の中の悦楽」のピカレスク風味と、最後に読む側の価値観も揺さぶられるような展開には恐れ入った。切り合いや超常能力の登場しない、現代を舞台にしたミステリ小説でもこれほど面白いとは、山田風太郎はやはりすごい。

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著者プロフィール

1922年兵庫県生まれ。47年「達磨峠の事件」で作家デビュー。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で探偵作家クラブ賞、97年に第45回菊池寛賞、2001年に第四回日本ミステリー文学大賞を受賞。2001年没。

「2011年 『誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 山田風太郎ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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