閉ざされた時間割 (角川文庫 緑 357-13)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041357132

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  •  自分が何者かに取り付かれ、一定の時間、自分の知らない行動をしている、何とも恐ろしい話である。

     この本のそれとは全然違うけれど、ある意味で老人性のボケなども、本人からするとこれに近い感覚があるのかもしれない。

     自分が何者で、一体どのように自分をコントロールしているのか分からないけれども、生まれてこの方自分は自分でしかなく、常に同一なわけだから、それが分離するような経験というのは想像もできないし、考えると恐ろしい。

     反面、では自分の行動は、本当に自分でコントロールしているのかと考えると、必ずしもそうとは言い切れない。人間は社会やある一定の集団の中で生きているわけで、自分の考えとは別に、その所属している社会や集団のルールに従わざるを得ない場面が少なからずあるからだ。

     そういうある種の服従に、我々は慣らされてしまっているので、違和感すら感じなくなっていることが多いし、逆の言い方をすれば、違和感を感じる人間は、その社会や集団に適応できないとも言えるわけで、もしかすると、自分で意識しないままに、自分は他人にコントロールされているのかもしれないと、改めて気づかされた。

     SFに限らず、いくら小説だからといえ、あまり荒唐無稽の話ばかりでは、読み手に共感させることはできない。その意味で、眉村さんの作品は、現実といい距離感を保っているようで、気軽に作品の中にのめりこむことができる。

     この本には、「閉ざされた時間割」「少女」「月こそわが故郷」「押しかけ教師」の4編が収められており、特に、タイトルになった作品は、丁寧な状況設定があり、主人公同様、この危機からいかに逃げ出すのか、読み手をひきつけて離さない。

     若干、後半の解決に向かう場面が、性急過ぎるきらいもあるが、無責任に読者を放り出すことなく、絶体絶命の場面から私たちを救い出してくれる。何度読んでも、何を読んでも、眉村さんの世界観は、私にとって魅力的であり続ける。

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著者プロフィール

1934年大阪府生まれ。会社勤務のかたわらSF同人誌「宇宙塵」に参加。61年、「SFマガジン」第1回SFコンテストで「下級アイデアマン」が佳作入選しデビュー。63年に処女長編『燃える傾斜』を刊行し、コピーライターを経て65年より専業作家に。71年から書いていた司政官シリーズの長編第一作『消滅の光輪』で79年に第7回泉鏡花賞と第10回星雲賞、96年に『引き潮のとき』で第27回星雲賞を再び受賞。日本SF作家第一世代の一人として長く活躍したほか、NHKでテレビドラマ化された『なぞの転校生』『ねらわれた学園』などのジュブナイル小説やショートショートなどでも健筆をふるった。著書に『妻に捧げた1778話』『いいかげんワールド』など多数。2019年11月3日逝去。2020年に第40回日本SF大賞功績賞受賞。

「2020年 『その果てを知らず』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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