素顔の時間 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041357507

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  •  帯に書かれている「マジメなわたしたちのための愛すべきSF傑作短編集。」というコピーが、この本の内容をよく言い当てている。

     この本には、点滅、逢魔が時、秋の陽炎、枯れ葉、素顔の時間、減速期、少し高い椅子という7つの短編が収められている。どの話も、これといって特別ではない主人公が、ある日、ちょっとした奇妙な出来事に遭遇する。それはまるで、今までマジメに生きてきた主人公に何か考えさせるためのきっかけのようなものなのかも知れない。

     例えば、『減速期』で主人公の楠田余一が最初に出会うのは、高校時代のクラスメートとそっくりの少女である。ただしその少女が自分と同じだけ年をとっていないこと、つまり当時のままの姿でいることがやや奇異である。

     それくらいの、誰にでももしかしたら経験できるかも知れない出来事から話が進んでいくところが、この本に収められている短編の共通した特徴かも知れない。

     大多数の一般人は、それなりにマジメに生きているはずだ。マジメに生きることは、当然のことだし悪いことではないのだが、それなりに疲れるのも事実である。そんな疲れた心を、この本が少しだけ癒やしてくれるかも知れない。

     癒やしというか、少しだけ夢が見られるという意味で言えば、『少し高い椅子』が私のお薦めである。二部上場会社の経理部で係長をしているバツイチの秋山誠一郎が、ある日突然、同期入社の企画部第一企画課長と入れ替わってしまう。バツイチの過去も消え、10歳も年下の妻と半年前に生まれた娘も突如現れる。

     あり得ないと思いつつ、こんな空想の世界にちょっとだけ心が癒やされる自分、それがマジメに生きてきた証のようにも思えた。

  • 点滅・・・所有欲は病気という教授
    逢魔が時・・・宇宙人から渡されたメダルは才能の証明
    秋の陽炎・・・道行く人の背中に色のついた陽炎が見える
    枯れ葉・・・借金から異世界へ逃げた?三段落ちかな。メタっぽい。
    素顔の時間・・・延伸時間には超能力が使える。割といいアイデア。ドタバタっぽいが、延伸時間と普通時間の意識のずれが大きくなって。
    減速期・・・過去の知り合いそっくりの人に立て続けに会って
    少し高い椅子・・・パラレルワールドもの。割とストレート。

    どの作品も、疲れた労働者が主人公。コピーライターや鉱山への出張などは著者の体験の反映か。

  • 素顔の時間 (角川文庫)

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著者プロフィール

1934年大阪府生まれ。会社勤務のかたわらSF同人誌「宇宙塵」に参加。61年、「SFマガジン」第1回SFコンテストで「下級アイデアマン」が佳作入選しデビュー。63年に処女長編『燃える傾斜』を刊行し、コピーライターを経て65年より専業作家に。71年から書いていた司政官シリーズの長編第一作『消滅の光輪』で79年に第7回泉鏡花賞と第10回星雲賞、96年に『引き潮のとき』で第27回星雲賞を再び受賞。日本SF作家第一世代の一人として長く活躍したほか、NHKでテレビドラマ化された『なぞの転校生』『ねらわれた学園』などのジュブナイル小説やショートショートなどでも健筆をふるった。著書に『妻に捧げた1778話』『いいかげんワールド』など多数。2019年11月3日逝去。2020年に第40回日本SF大賞功績賞受賞。

「2020年 『その果てを知らず』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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