ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
3.64
  • (816)
  • (682)
  • (1563)
  • (153)
  • (44)
本棚登録 : 9319
レビュー : 894
  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041366035

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 1935年(昭和10年)。三大奇書、第二弾。
    夢野久作の代表作。小栗虫太郎「黒死舘殺人事件」、中井英夫「虚無への供物」と共に、本邦ミステリの三大奇書と呼ばれている。実際、半ば発狂していないと書けないのでは、と思うくらい奇想天外かつ型破りな作品であり、こんなサイケデリックな作家が戦前の日本にいたということ自体が驚異的である。

    精神病院で目覚めた記憶喪失の青年が、自分は何者で何故ここにいるのかを探るうちに、不吉な事件の影が見えてくる。「キ○ガイ地獄外道祭文」、「胎児の夢」など訳の分からない作中作が大量に挿入されており、読者を戸惑わせる。「ドグラ・マグラ」とは、作中で主人公が見つけた、狂人が書いたという推理小説のタイトルに由来しているが、その意味するところは不明。

    結局、内容を知るには自分で読むしかないのだが、読んだところで理解したと言えるかどうか。伝統的に何故か推理小説に分類されており、メタ・ミステリ(超推理小説)と呼ばれているらしいが、この物語にカテゴライズは無意味な気もする。強いて言えることがあるとすれば、好きか嫌いかくらいだろう。

  • 凄い………。
    研究して描かれたものだろうと思うけど、キチガイ地獄外道祭文はまさしくも頷ける。
    というのも、昔は精神病患者など、何かしら障害があると納屋に閉じ込めるのが当たり前だったそうで、後に"解放"を謳うのも何となく理解出来ました。
    この本は、理解出来たら異常

    とか

    理解出来なかったら正常
    というよりも、著者が訴えたいことを"感じる"一冊かと思います。
    解放により、精神病患者がより良い生活が出来る時代が来るのを、著者は待っていたように感じました。

  • ぞっとする、という印象であった。

    怖さというのは、ホラーというより無限のマトリョーシカというようである。
    マトリョーシカを開けるとマトリョーシカを開けている人間の姿が見える、しかしそれはどうみても自分の姿であるのだ・・・というような。

    たしかにミステリーであるのだが、話が脱線につぐ脱線。
    わずかな伏線を繋げば、全体像は掴めそうであるが、その全体像も果して本当なのか・・・?ということだ。ドグラ・マグラという作品が、「狂人の解放治療」の一環として出てくるあたり、作品全体がすべてウソである可能性すらある。

    ちなみに、純科学的な目線で見ると、「心理遺伝(細胞記憶)」というのは、基本的にあまり支持されている学説ではないそうだ。しかし内容を読めば分るが、まったく無下にできるものではない、そんな気はした。
    作中の正木博士が唱える「なんで外科や内科は薬で治せるのに、精神だけは閉じ込めるのだ?医者の胸先三寸で症状が決まってしまう」という主張はなんとなく分る気がした。いまも精神疾患への偏見はまだあるだろう。

  • 傑作です。久しぶりに読み終わったあとにも考えさせられる小説に出会いました。W博士、M博士、挙句の果てには「私」までもが信頼できない語り部なので物語の解釈は様々であり正解がないところがお気に入り。作者の巧みな誘導により物語が進めば進むほど読者を混乱に至らす手法はいやらしいと同時に奇妙な体験を与えてくれる。核心に迫る部分ではのめり込み過ぎて駅を乗り過ごしてしまいました。最後に、願わくは「ドグラ・マグラ」の読んだ記憶を無くし、まっさらな脳髄でもう一度読んでみたい
    (記憶の遺伝に打ち勝てる前提で)。

    ブウウーーーーンンン

  • 高校生の時に一度読み、「まだ十分に理解できない。いつかリベンジしよう」と思っていたが、それから約10年が過ぎた今になって読み返しても理解が進んだ気はしない。
    「キチガイ地獄外道祭文」のくだりは声に出して読みたくなる。

  • さて、ようやく読み終えたこの悪名高い噂の小説、ドグラ・マグラ。

    不気味な表紙の絵とタイトルから、どんだけエロい小説なのだろう。と思っている方もいるかもしれませんが、正直、全然エロくないです。

    読んだ人の感想のほとんどは、「よく分からなかった」とか「凄く疲れた」とか「上巻で読むの辞めました」だと思うんだけど、オレの感想も似たような感じです。

    なんていうか、
    “凄く話が上手くて頭も良いんだけど、話出したら止まらなくなって、とにかく話が長い人の話をずっと聞いている”
    そんな感じでした。

    なので面白い話題の時は、“楽しくて時間が経つのも忘れるよ。”って思うんだけど、興味の無い話題の時は、“とにかく時間が経つのが遅い、早く終わってくれ。”って感じでした。

    どんな内容なの?って聞かれれば、
    “目を覚ましたら見知らぬ部屋にいた青年は記憶を失っていて自分の名前も分からない。
    そこに先生らしき人が現れて、その青年の記憶を回復させようとする。”
    って話なんだけど、とにかくストーリーの脱線が酷い。

    最初の数十ページは普通にサクサク読めて、「なんだ、ドグラマグラ、みんなが言う程難しくないじゃん」って思うんだけど、記憶を回復させる過程で、本を読みだすんだけど、この辺りから様子がおかしくなってくるんですよね。
    こういうのってなんて言うんですかね。お店で言うなら、どこかのお店の中に他の店舗が間借りするやつ、、ショップ・イン・ショップ?
    テレビドラマの中で、ミニドラマが始まるみたいな。

    そんでまぁ、ドグラ・マグラの場合は「キチガイ地獄外道祭文」っていう数え唄みたいのが始まるわけなんだけど、、、、とにかく長い。

    そして、「脳髄は物を考えるところに非ず」って論文。
    まとめると、物を考えているのは脳髄っていうか脳ではなく、もう細胞という細胞、右手なら右手が自分の自由意思で動いていて、脳髄はその電気信号的なのをまとめる中継地点みたいなもんだ。みたいな?
    ごめん、どこまでが本当でどこまでが創作かわからなくなってきた。

    そんでそのあとは「胎児の夢」
    胎児は胎児になるまでの間に夢を見る。
    その夢は遥か昔、単細胞の生物が生まれ、魚になり、両生類になり、鳥になって、あーだこーだで人間に進化する過程を追体験するだけに留まらず、父、母、祖母、祖父、さらに全ての先祖、血縁達が体験した全ての事柄を追体験する。的な?

    そんで下巻からは「心理遺伝」、「夢中遊行」、玄宗皇帝、楊貴妃、絵巻物云々、、、、、

    驚くことに、こんだけ書いても、全くネタバレになってないってゆー、、。
    願わくば、物凄く頭が良い人のこの本の感想を聞きたいです。

    本筋とは全く関係ないけれど、小説の中で“絶世の美人”って書くと、誰にとっても最高の美人になってしまうっていうこの現象は、映画や漫画にはできない、小説だけの特権だよなぁっていつも思います。

    もし、現実世界で、この小説のような夢中遊行が起きたら、法律で裁けるのかって考えるとゾクっとします。

  • 夏だから何か怖い本でも読もうと思って、読んだのが昔すぎてブクログには感想書いていなかったこちらをチョイス。たぶん再々読くらいかしら。1988年の松田洋治主演映画はビデオになったときにレンタルで見た。いわゆる三大奇書の中ではいちばんとっつきやすいというか、内容はもちろん奇想天外ながら、シンプルに面白い、読者を飽きさせないのはこれが一番かと。『黒死館~』が個人的には一番とっつきにくかった。『虚無への供物』には思い入れがある。

    さて、舞台は大正15年、九州帝国大学医学部精神病科(というのは後でわかるのだけど)七号室で一人の青年が目覚める。彼は自分が何者で、何故ここにいるのか全く記憶がない。そこへ若林博士が現れ、状況を説明、彼の記憶を取り戻すべく、本来の主任であった正木博士の書斎へ誘う。そこには様々な精神病者の製作物も保管されており、青年はあるノートに目を留める。

    何度も読まれてボロボロになったその5冊のノート、1冊目冒頭に「胎児よ胎児よ何故躍る 母親の心がわかっておそろしいのか」という巻頭歌に続き『ドグラ・マグラ』とタイトルが記されている。

    青年はそのノートをざっと見て述懐する「一番最初の第一行が……ブウウ――ンンン……ンンンン……という片仮名の行列から初まっているようであるが、最終の一行が、やはり……ブウウ――ンンン……ンンンン……という同じ片仮名の行列で終っている」

    賢明な読者はここでピンと来る。そう、これがこの、今まさに自分が手に取っている本=『ドグラ・マグラ』と同じ始まり方だということに。若林博士は、そのノートの内容がどのようなものであるか、ざっと解説して聞かせる。その内容とは、

    ○「精神病院はこの世の活き地獄」という事実を痛切に唄いあらわした阿呆陀羅経の文句
    ○「世界の人間は一人残らず精神病者」という事実を立証する精神科学者の談話筆記
    ○胎児を主人公とする万有進化の大悪夢に関する学術論文
    ○「脳髄は一種の電話交換局に過ぎない」と喝破した精神病患者の演説記録
    ○冗談半分に書いたような遺言書
    ○唐時代の名工が描いた死美人の腐敗画像
    ○その腐敗美人の生前に生写しともいうべき現代の美少女に恋い慕われた一人の美青年が、無意識のうちに犯した残虐、不倫、見るに堪えない傷害、殺人事件の調査書類

    以上のようなものであり、それはさらに「只一点の時計の音を、或る真夜中に聞いた精神病者が、ハッとした一瞬間に見た夢に過ぎない」と若林博士は語る。ある意味ここだけ読めば、もはやこの本の目次と結末はわかったようなもの。

    青年はしかし、そのノートは読まない。若林博士は、すでに自殺してしまった正木博士から託されたスクラップブックのようなものを青年に読ませる。実は『ドグラ・マグラ』という小説の大半はこの、正木博士のスクラップブックの中身=作中作で成立しており、それぞれの見出し「キチガイ地獄外道祭文」「狂人の一大解放治療場」「絶対探偵小説 脳髄は物を考える処に非ず」「胎児の夢」「空前絶後の遺言書――大正十五年十月十九日夜」(下巻「呉一郎の発作顛末」に続く)これが上記のノートの内容と一致している。

    読者は青年と一緒に、正木博士の実験=彼の記憶喪失の原因である過去を探り探り、作中作を読み進めていく形。おどろおどろしい内容なのに、そこはかとない滑稽感も漂ってくるのは、ドグラマグラという造語も含め、スカラカ、チャカポコ~の阿呆陀羅経のリズムの良さ、アンポンタン・ポカン君などのやはり語呂のよいネーミングのせいかしら。それにしても患者さんに対してアンポンタン・ポカンはひどいけど(笑)

  • いやーいいですよ(笑)
    僕はこれ好きですけどねー
    だいぶ前の作品なのに今読んでも色褪せない新鮮さっていう(笑)
    夢野久作さんには頭が下がります。
    まあ、要約は出来ないんで感想は書けないんですが。
    オススメします。
    まあ、読後感にまかせて感想を書いているので絶賛する私は気が狂ってるのかも知れませんが(笑)

  • 目で頭で読んでいる筈なのに耳から脳内へ文字が洪水のように入り込んでくる。言わずと知れた傑作奇書。
    個人的に1番好きなドグラ・マグラ。
    上巻に於いては「私」の謎を解くべく精神科学や医学についての論文や歌を盛り込んでおり、読み進める内に知らず知らず読み手の知識も増えていく感覚は素晴らしいです。

    厄介なことは精神病として片付ける。
    神秘的且つ証拠不十分な病の科学的根拠を逆手に取った社会へのメッセージをこの時代にここまで大々的に描いた夢野久作は本当に大胆だと思いました。
    確かに、昔の人は地球が丸いだなんて考えもせずに丸ければ海が流れてしまうと批判していたなんて話は余りにも有名で、現代に至って発見研究した彼等は偉大と称されるも当時はキチガイと呼ばれ
    そんな英雄、文豪、科学者など多数いたことを思い出しました。
    交感神経、副交感神経など精神疾患に関わる器官の作用秩序などを探偵の推理小説として本文に取り込んでいたのは非常に面白かったです。

    恐れ多くも個人的な評価ですが、私自身精神疾患経験者であり服薬にあたって医師や調べ物から医科学的知識が少なからずあるので、
    自分としては読み進め易く理解し易かったです。
    以上、上巻の感想とします。

  • 日本三大奇書の一つに数えられる、狂気の小説。
    構想と製作に10年を費やし、その発表の翌年に夢野久作はこの世を去っていることから、彼が命と引き換えに生み出した作品だと言われている。

    作中に登場する主要人物、呉一郎は精神病棟の隔離部屋で目覚め、記憶を失っている事に気づくと、その場に現れた医者から、自分がある精神異常を利用した犯罪に巻き込まれたと話をされる。

    呉一郎が自分の記憶を取り戻して行く過程で判明する不可思議な事柄は、本を飛び出し、その読者をも混乱させ、少しずつドグラマグラに隠されたとんでもないカラクリに気づいてゆく。

    その結末を知ってしまうと、もう一度読まずにはいられない、唯一無二の奇作。

全894件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

明治22 (1889)年1月4日福岡に生まれる。本名杉山泰道。幼名直樹。法号萠圓。父杉山茂丸は近代における政界の黒幕といわれた。旧制修猷館中学を卒業後、近衛歩兵連隊に入隊。慶応義塾大学に入学後、大正2(1913)年に中退。放浪生活ののちに出家し、僧侶となる。大正6(1917)年に還俗し、父の出資による農園を経営する傍ら執筆を開始。結婚し、喜多流の謡曲教授となる。大正8(1919)年に九州日報に入社、記者となる。大正15 (1926)年に「あやかしの鼓」を発表し作家活動を始める。昭和10(1935)年「ドグラ・マグラ」を出版。昭和11年(1936)3月11日逝去、享年47歳。

「2019年 『定本 夢野久作全集 第6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)のその他の作品

夢野久作の作品

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)に関連する談話室の質問

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする