ドグラ・マグラ(上) (角川文庫 緑 366-3)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 11121
感想 : 932
  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041366035

作品紹介・あらすじ

昭和十年一月、書き下ろし自費出版。狂人の書いた推理小説という異常な状況設定の中に著者の思想、知識を集大成し、”日本一幻魔怪奇の本格探偵小説”とうたわれた、歴史的一大奇書。

感想・レビュー・書評

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  • 1935年(昭和10年)。三大奇書、第二弾。
    夢野久作の代表作。小栗虫太郎「黒死舘殺人事件」、中井英夫「虚無への供物」と共に、本邦ミステリの三大奇書と呼ばれている。実際、半ば発狂していないと書けないのでは、と思うくらい奇想天外かつ型破りな作品であり、こんなサイケデリックな作家が戦前の日本にいたということ自体が驚異的である。

    精神病院で目覚めた記憶喪失の青年が、自分は何者で何故ここにいるのかを探るうちに、不吉な事件の影が見えてくる。「キ○ガイ地獄外道祭文」、「胎児の夢」など訳の分からない作中作が大量に挿入されており、読者を戸惑わせる。「ドグラ・マグラ」とは、作中で主人公が見つけた、狂人が書いたという推理小説のタイトルに由来しているが、その意味するところは不明。

    結局、内容を知るには自分で読むしかないのだが、読んだところで理解したと言えるかどうか。伝統的に何故か推理小説に分類されており、メタ・ミステリ(超推理小説)と呼ばれているらしいが、この物語にカテゴライズは無意味な気もする。強いて言えることがあるとすれば、好きか嫌いかくらいだろう。

  • 正確には青空文庫の電子書籍版を読みましたが、見つからなかったので、印象的な表紙の角川文庫を登録しました。素敵です。(こちらは上巻ですが、結末まで読了してます。)

    夢野久作の代表作、ドグラ・マグラ。
    とても面白かったです!!
    もっと早く読んでおけば良かった。
    (昔30%程読んでいたのですが、難解から止まっていて、初めから読み直しました。)

    一言で言うと、精神世界の謎を順に紐解いていくと同時に身の上に起こった事件を推理していく探偵小説です。
    同じ類の話は現代にはたくさんあると思います。

    とにかく最初から最後まで、奇妙で独特の雰囲気を醸し出しています。
    主人公が目を覚ますと、殺風景な一部屋のベッドの上にいますが、自分が誰で、今まで何をしてきたのか全く記憶にありません。
    隣の部屋の少女がきみの悪い掛け声をしてくるし、若林という教授が言うには、ここは九州帝国大学の精神科で、貴方はある殺人事件に関わっていると言うし。

    正木博士という方が研究している「狂人の解放治療」や、論文の「胎児の夢」「脳髄論」「心理遺伝」「遺言書」などなど、全て全文細かく時代背景が違うので、当時の言葉で書いてあるのを一つ一つ読みながら話が進んでいくのですが、理解しながら読もうとするとすごく時間がかかります。特に如月寺の坊さんの手記が難解すぎて、呉虹汀のクダリの詳細は、私の頭では理解できませんでした。別で調べてみようと思いました。

    ですが、その分後半に進むにつれ、理解が深まって行き、あそこに繋がるのか!と回収されて行く気持ちの良さがあります。

    「胎児の夢」の一節

    胎児よ胎児よ何故躍る 母親の
         心がわかっておそろしいのか

    奇妙で、すごくワクワクします。
    読むと、この言葉の意味も理由も分かっていきます。(分かった気でいます笑)

    何だか、本当に「心理遺伝」があるような。
    そんな気がしてしまうのは、長い話に何度も何度も出てくる言葉の数々に洗脳されてしまっているのでしょうか。
    呉家に代々伝えられているという呪いの巻物、見てみたいです。

    読むと気が狂うと言われている「ドグラ・マグラ」
    最高に面白かったです。

  • これも40年前に読んでてもおかしくない本だけども、ついに読了。

    これを読む者は一度は精神に異常を来す、とか、日本探偵小説三大奇書、とか脅すもんだから身構えたんだけど、確かに奇妙キテレツな話ではあったけど、大した真っ当な本であった。

    まず、作者の「キ●ガイ」に対する異様な傾斜がある。「キ●ガイ」(大時代的な単語ではある)とは何か、についてとことん考えた結果が、この本に結実しているんではないかな。

    小説の中にドグラ・マグラという小説が出て来たり、主人公たる「私」からして記憶を失った(認識を失った)曖昧な存在であること、「犯人」が複雑な入れ子になっていることなど、非常に理解が難しいことも確かである。

    前半は、後半の謎を導くための学術資料のようになっていて(まあ、犯行の動機にも繋がるわけだが)、これが大いに読ませる。

    脳髄は物を考えるところにあらず
    夢のからくり(細胞、部分が見るのだ)
    胎児の夢(承服しがたい部分もある)

    ほか「自白心理」などのくだりも含め、トンデモどころか、心理学か認識論の科学新書を読んでいるような気持ちにさせられる。迫真の説得力である。

    後半はなるほど「父」との長い問答を通した犯人捜しの様相を呈してはいるが、上記のような念入りな理屈づけによって、決して荒唐無稽ではない迫力、凄みを生み出している。

    小説は、そうした「キ●ガイ=精神(認識)の大伽藍」を表現しながら、学術研究の業(ごう)といったものを浮き彫りにしているのかも知れない。

    *

    ところで、脳髄のくだりで「脳髄の罪悪史」という5項目が出て来るが、これが実に慧眼であると思う。曰く、脳髄の発達は、

    ・人間を神様以上のものと自惚れさせた
    ・人間を大自然界に反抗させた
    ・人間を禽獣の世界に逐い返した
    ・人類を物質と本能ばかりの虚無世界に狂い廻らせた
    ・人類を自滅の斜面(スロープ)へ逐い落とした

  • ある殺人事件に関する記録を精神医学、法医学の観点から描く形で進行する。
    登場人物の独白と作中資料が多く、一気に読み進めないと話の筋を捉えそびれてもう一度読み直す必要がある。
    作中資料では社会に対する批評がされており、著者の父が所属していた玄洋社の影響が表れている。
    果たして読みやすい文体とは言えないが、作中で何が起きたのかを殆ど推察することができず、下巻まで読み進めたくなる。

    解説はなだいなだ(下巻に収録)。
    カバーは米倉斉加年。

  • やっと上巻読み終えた。半分でそんな気分。
    高校の時は読み進められなかった。

    超有名だけど、その複雑すぎる話の展開で読み切るのも難しい。

    ミステリーという形を取ってるけど、そんなにテンポよく進んでいく代物ではない。こっちが騙されてる気分になって、何がなんだかわからなくなってくる。
    印象的だったのは、正木教授の「キチガイ地獄外道祭分」とか「脳髄論」などの突飛な論文の主張を通して、夢野久作自身、精神病患者の対応への問題意識を強く感じてたこと。辛辣な言い回しも多い。
    夢野さんがこれ書いた20世期前半とかで脳科学的、心理学に目を向ける人というのは稀すぎるのでは?こういう要素を持つミステリーが生まれるには、あまりにも医学や世間の関心とかけ離れている時代だっただろうと思うと、作品のすごさが増す。

    下巻、読もうと思う。頑張らないといけないが。

    あとチャカポコが頭から離れない。

  • ネット界隈で言われている程、気が狂う本では無いと思った。読みすすめていると、映像が浮かんでくるような感覚になる小説です。

  • さて、ようやく読み終えたこの悪名高い噂の小説、ドグラ・マグラ。

    不気味な表紙の絵とタイトルから、どんだけエロい小説なのだろう。と思っている方もいるかもしれませんが、正直、全然エロくないです。

    読んだ人の感想のほとんどは、「よく分からなかった」とか「凄く疲れた」とか「上巻で読むの辞めました」だと思うんだけど、オレの感想も似たような感じです。

    なんていうか、
    “凄く話が上手くて頭も良いんだけど、話出したら止まらなくなって、とにかく話が長い人の話をずっと聞いている”
    そんな感じでした。

    なので面白い話題の時は、“楽しくて時間が経つのも忘れるよ。”って思うんだけど、興味の無い話題の時は、“とにかく時間が経つのが遅い、早く終わってくれ。”って感じでした。

    どんな内容なの?って聞かれれば、
    “目を覚ましたら見知らぬ部屋にいた青年は記憶を失っていて自分の名前も分からない。
    そこに先生らしき人が現れて、その青年の記憶を回復させようとする。”
    って話なんだけど、とにかくストーリーの脱線が酷い。

    最初の数十ページは普通にサクサク読めて、「なんだ、ドグラマグラ、みんなが言う程難しくないじゃん」って思うんだけど、記憶を回復させる過程で、本を読みだすんだけど、この辺りから様子がおかしくなってくるんですよね。
    こういうのってなんて言うんですかね。お店で言うなら、どこかのお店の中に他の店舗が間借りするやつ、、ショップ・イン・ショップ?
    テレビドラマの中で、ミニドラマが始まるみたいな。

    そんでまぁ、ドグラ・マグラの場合は「キチガイ地獄外道祭文」っていう数え唄みたいのが始まるわけなんだけど、、、、とにかく長い。

    そして、「脳髄は物を考えるところに非ず」って論文。
    まとめると、物を考えているのは脳髄っていうか脳ではなく、もう細胞という細胞、右手なら右手が自分の自由意思で動いていて、脳髄はその電気信号的なのをまとめる中継地点みたいなもんだ。みたいな?
    ごめん、どこまでが本当でどこまでが創作かわからなくなってきた。

    そんでそのあとは「胎児の夢」
    胎児は胎児になるまでの間に夢を見る。
    その夢は遥か昔、単細胞の生物が生まれ、魚になり、両生類になり、鳥になって、あーだこーだで人間に進化する過程を追体験するだけに留まらず、父、母、祖母、祖父、さらに全ての先祖、血縁達が体験した全ての事柄を追体験する。的な?

    そんで下巻からは「心理遺伝」、「夢中遊行」、玄宗皇帝、楊貴妃、絵巻物云々、、、、、

    驚くことに、こんだけ書いても、全くネタバレになってないってゆー、、。
    願わくば、物凄く頭が良い人のこの本の感想を聞きたいです。

    本筋とは全く関係ないけれど、小説の中で“絶世の美人”って書くと、誰にとっても最高の美人になってしまうっていうこの現象は、映画や漫画にはできない、小説だけの特権だよなぁっていつも思います。

    もし、現実世界で、この小説のような夢中遊行が起きたら、法律で裁けるのかって考えるとゾクっとします。

  • 三大奇書と名高いこの本に対して期待が大きかった。
    冒頭は読んでいて楽しかったし、何故主人公は此処に?なんて疑問から、ミステリー小説を読んでいるような高揚感があった。
    問題は途中に挿入される文章たち。
    正直読んでいて苦痛が大きく、何度読み飛ばしたか分からない。終盤になれば地の文に戻るだろうと思ったが、そんなことはなく····。ただ胎児の夢は物語的要素が強く、まだ楽しんで読めそうな気配を取り戻しつつあるので、このまま下巻に進もうと思う。

  • 凄い………。
    研究して描かれたものだろうと思うけど、キチガイ地獄外道祭文はまさしくも頷ける。
    というのも、昔は精神病患者など、何かしら障害があると納屋に閉じ込めるのが当たり前だったそうで、後に"解放"を謳うのも何となく理解出来ました。
    この本は、理解出来たら異常

    とか

    理解出来なかったら正常
    というよりも、著者が訴えたいことを"感じる"一冊かと思います。
    解放により、精神病患者がより良い生活が出来る時代が来るのを、著者は待っていたように感じました。

  • ぞっとする、という印象であった。

    怖さというのは、ホラーというより無限のマトリョーシカというようである。
    マトリョーシカを開けるとマトリョーシカを開けている人間の姿が見える、しかしそれはどうみても自分の姿であるのだ・・・というような。

    たしかにミステリーであるのだが、話が脱線につぐ脱線。
    わずかな伏線を繋げば、全体像は掴めそうであるが、その全体像も果して本当なのか・・・?ということだ。ドグラ・マグラという作品が、「狂人の解放治療」の一環として出てくるあたり、作品全体がすべてウソである可能性すらある。

    ちなみに、純科学的な目線で見ると、「心理遺伝(細胞記憶)」というのは、基本的にあまり支持されている学説ではないそうだ。しかし内容を読めば分るが、まったく無下にできるものではない、そんな気はした。
    作中の正木博士が唱える「なんで外科や内科は薬で治せるのに、精神だけは閉じ込めるのだ?医者の胸先三寸で症状が決まってしまう」という主張はなんとなく分る気がした。いまも精神疾患への偏見はまだあるだろう。

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著者プロフィール

1889年、福岡県福岡市出身。日本探偵小説三大奇書の一つに数えられる畢生の奇書『ドグラ・マグラ』をはじめ、怪奇味と幻想性の色濃い作風で名高い。1936年歿。

「2021年 『空を飛ぶパラソル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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