少女地獄 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 4368
レビュー : 400
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041366059

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。『少女地獄』が読みたくて。
    可憐で看護師として天才的な手腕を見せる少女・姫草ユリ子。「無鉄砲とも無茶苦茶とも形容の出来ない一種の虚構の天才である彼女」は嘘を嘘で重ね、言い逃れのできないところまで突き進んでいきます。

    医師で語り手の白杵もその妻も、彼女に惑わされ混乱させられた言わば被害者です。しかし妻をはじめ周囲は彼女の不思議な魅力に魅せられ、怒りを見せるどころか許し世話を焼こうとします。

    ユリ子のまるで悪気のない「純真無垢」な振る舞いと「天才的虚構」に読者も翻弄されます。最後まで読み、たしか冒頭で既にユリ子は……と思い出しつつも、何故か腑に落ちません。知らない土地で、小悪魔的微笑を醸しながら天真爛漫に逞しく生きる彼女をつい想像してしまいます。

  • 初・夢野久作

    想像していたより読みやすく世界観も好きだった。

  • 角川文庫の限定カバーに惹かれて手に取りました。
    ドグラ・マグラが大好きなのですが、夢野久作はこういう「如何して事件が起きたのか」よりも「事件を起こすに至る心理」の描写が非常に上手だなと感じました。

    本書に於いては、全篇に於いて女性の狂気を取り上げている内容でしたが「恐ろしさ」「醜さ」よりも
    私個人が女性だからということもありますが「女性の強さ」を夢野久作のメッセージとして感じ取りました。

    男尊女卑などという言葉もありますが、今でこそ社会的立場が確立されつつある女性に対して
    本作が発刊された時代などはまだまだ男性優位であったことと思います。
    「火星の女」は今ではセクハラに該当するような話ですし、女車掌や女炭坑主など女性が輝く未来を象徴しているかのように思えました。
    この時代に強い女性を描写したこと自体が前衛的で
    やはりとんでもない才能の持ち主だなと改めて感じました。

  • 美しいと醜いは似てるのかもしれない。

  • さて嘘とはどういうものか。少女地獄にはびこるのは嘘、虚構、欺瞞。果たして嘘つきは、嘘をつくことができるのだろうか。嘘をつくためには嘘が嘘であるという点が真実でなければ嘘になりえない。
    そんな嘘をつきとおす正直者たちが紡ぐ3つ物語。この3つが何の脈絡なしに並んでいるとしたら、なぜ地獄になるのか。ひとつの嘘という真実がこの3つを貫いているのだ。火星の女は姫草ユリ子の手紙を届ける者として、素性を偽るバスの男運転手として、姫草ユリ子は殿宮アイ子として、友成トミ子として転生する、まるでそれは地獄のよう。どこにもない虚構の世界だから、どこにでも生まれえる。地獄とは無限の転生のことなのだと思う。
    『童貞』『けむりを吐かぬ煙突』はグロテスクなもので煙に巻いているが、純真であることや理想というものは、最も穢れていることに等しいということのアイディアスケッチのように感じられる。清浄と汚濁とはコインの裏表である。どちらも単一には存在しえない。それをたまたま、男女という性別に背負わせている。男女の埋めがたい断絶ではなくて、この清浄と汚濁が等しく互いを維持しているということを性別に役割として振る舞わせている。彼らが背負った役目こそが、埋めがたい断絶なのだ。
    『女坑主』は恐らく外向けというか何かテーマが与えられて書いたもののように感じられる。語りも構図も夢野にしては単純で、実に何の含みもなくめぐらされた陰謀が展開していく。彼の場合、大衆小説を書いて売る気になれば多分どうにでもなったのだろう。小説家として売れることより、考えることに生まれついてしまっているから、彼の生み出す世界は独自にことばとして息づいている。

  • 15.05.06
    青空文庫なので、「童貞」は読めてない。
    好きなんだよなあ、この作風、言葉選び、テンポ、ストーリー。夢野久作の作品はどの女性も特徴的で、危うくて、怖くて、でも可愛らしさがあって、悲しくて、すごく魅力的なんだなあ。

    少女地獄(「何でも無い」「殺人リレー」「火星の女」)、「けむりを吐かぬ煙」、「女坑主」どれも好き。
    飛び抜けて好きなのは「火星の女」かなあ。映像化して欲しいくらい。切実で息苦しくて悲しい話。
    少女地獄はすべて書簡式なのも好き。夢野久作の作品だとよくあるけど、語りかけてる書き方、すごく好き。普通より綺麗に感じる。

  • なんでもない。
    虚言癖?
    比べものにならないけど、わたしにもあるかもしれない。
    他の人にはないのかな?
    あれ、わたし今なんでこんなペラペラと本当のことのように話したの?って瞬間。ないのかな。それならなんか、この話も自分自身も怖い!

  • タイトルからして、毒々しくて艶かしい。夢野久作作品、初挑戦。

    少女地獄の中でも、人気が高い「何んでも無い」がやっぱり良かったー。病的なまでに嘘を吐いて生きる娘。最初は読んでて腹が立ったけど、よく考えたら寂しい人だし、憎み切れなくなる。あっ、しまった!私、同情してる!(同情させられてる…?)
    こんな巧く嘘が言える人は中々いないんじゃないかな。しかも名演技!
    す、すごい…。
    どうしようもない嘘つきだとバレると追い出されて、結局は一人ぼっちになる。彼女の嘘に悪意が感じられない。ただ生きようとすると、なぜかこうなっている…これはどうしようもないことで、彼女は可哀相な人だと思ってる私がいる。いやでも、実際こんな人が近くにいたら嫌だなぁ。
    ユリ子は、彼女は生きてると思う。

    火星の女は最後がいい。復讐心に満ちた女が、その運動神経抜群な体を吊るしたり、飛んだり、走ったり。あれ、これアクション小説?ってなるスピード感。

  • 短編集なので、内容的にも長さ的にも読みやすかった。
    ところどころで大正~昭和初期の世相が描写されているのが、なかなかよき。
    一番のお気に入りは「鉄鎚」。
    ラスト一文の解釈が気になるところだけれども、主人公の名前が「愛太郎」というのが一番面白い気がする。

  • 巻末の解説では手厳しく言われていますが「火星の女」と殿宮アイ子の関係が私は好きです。

  • 「少女地獄」という、タイトルだけ見ると誤解されそうな作品。
    まあでも夢野久作だから誤解もなにもその通りというか。

    ともかく少女地獄、地獄のような少女だったり地獄に落とす少女だったりと、表題の中に3つの短編「何んでも無い」「殺人リレー」「火星の女」が含まれている。
    これが割と分かりにくく、特に「殺人リレー」は同じページで「何んでも無い」が終わるので、あれ?続くの?でも内容が違うなぁとか無駄に混乱してしまった。

    ドグラ・マグラから入った人に分かりやすいのは最初の「何んでも無い」だろうか。騙し騙されの繰り返しで脳髄がやられていく感じ。あれを求めて自分は夢野久作を読んでいるのだが、そういう人は多いだろう。
    でも、嘘がバレそうになって恥じる姫草ユリ子はすこしばかり可愛いなと思うのです。

  • 意外と読みやすい。
    ”何でもない”が好き。
    虚言壁の女の子って職場に昔居たなあ。
    「叔父」が無くなったのに「叔母」って言ったり…。
    だれも会ったことも無いのに、イヤ何のための嘘???って感じです。総務がお香典送ろうとして発覚し混乱を引き起こしてました。笑
    それ以外にも小さな嘘をちょこちょこちょこちょこついてあなあ…
    現代人にも通じる怖さってことかな。

  • 表題作が一番面白かったな。不利な状況になってもそれを利用して新たな嘘を作り上げるのが、巧みで面白かった。
    殺人リレーや火星の女は、女性の心情の描写がありえなくて冷める。ストーリーは、読んでいる間はなかなか複雑で面白い気がするのだが、後で整理してみると、この要素要る?ってのが多い。解説にも書いてあったが、殿宮アイ子の存在が蛇足だったような。
    女坑主は、女傑と理想に燃えた美青年という組み合わせがなかなか良かったな。「畜生…覚えておれッ」とか言われるの、かっこいい。

  • 何処にも桃源郷がないのなら 
    お創り致しませう

    上は椎名林檎の曲ですが、そんな感じのお話。
    ドグラ・マグラも大好きな作品ですが、この作品も面白かったです。
     まず、言葉遣いが良い。まさに大正ロマン。
    文章にしっとりとした可憐な色香を感じます。
     ドグラ・マグラが逸脱した「キチガイ地獄」ならば、少女地獄は元来人間なら誰しも持つような日常的な感情が肥大して生まれた狂気を描いています。その感情とは、『人によく思われたい』。
     姫草ユリ子は、すべての人間に好意を抱かせる、生まれも育ちも良い、噂の天才美人看護婦。だけどその実態は天才的な虚言癖。
     ユリ子が自分のイメージを獲得するために必死な様子は人間くさくて哀しく、それだけにいっそう不気味です。ユリ子ほど天才的とはいわずとも、真の狂気とは人間らしい欲望の中にあるのかもしれません。
     自分の中にもそんな要素がなくはないので、狂気への紙一重さに戦慄しつつそれがクセになる…そんな不思議な感覚を覚えます。
     嘘をつけばその嘘を守るために嘘を重ねなければならず、限界に達したときユリ子は自殺する。すべてを虚構で塗り固めたユリ子にとって、その仮面が剥がされるのは自ずと、自分が死ぬのと同じことだったのだと思う。囚われたらさいご、命すらあやうい魅惑の少女地獄。
    少女というのも実は嘘ですが。
     すべての人を虚構で魅入らせ、自分自身も虚構に魅入られて、虚構のうちに散ったユリ子。何が幸せかは人それぞれで、「何んでもない」それも、寂しいですがひとつの生き方だったのかもしれません。築き上げた桃源郷を守ろうとした姿は哀しくもいじらしく、周りの人間も、嘘をつかれているのを分かっていて、その桃源郷を一緒に守ろうとした。狂気めいているのにこの温かさはなんだろう、不思議な世界観です。

  • 自分の居場所を作るために吐く嘘が、逆に自分の居場所を失くしていくという矛盾。
    それを回りくどく哀れに描かれて面白かった。

    火星の女は、自己満足に終始し、思ったより復讐できてないように感じた。

    全ての話において、死んでしまえば後は関係ないという無責任さに、人間らしさを感じずにはいられない。

  • 夢野久作にハマって「ドグラ・マグラ」「瓶詰めの地獄」と読み3作め。

    この作者の世界観が大好きです。女性達も魅力的。
    楽しく読み進めましたが「瓶詰めの地獄」の方が好みでした。

  • やっっっと読み終わった。
    古い言葉は知らないものが多いから、辞書を用意して調べたくなるけど、物語の世界に入っていると中々それが出来なくて難しい。本を勉強にはしたくないし。しかし知識を積めば物事はもっと楽しくなるし。

  • 夢野作品の底知れない気味の悪さや猟奇さ、だけどそこらに散りばめられた愉快な感じが堪らない。あのリズム感や語呂の良さは癖になる…!

    手紙として打ち明けられる事件の真相や告白。やっぱり「なんでもない」が1番好きな話です!姫草ユリ子ちゃんは何度読んでも憎めない子。臼杵先生にもあまり責めている感じがなく、今でも心のどこかで可愛がっているような気がします。

    今まで電子で読んでいたけれど、紙ならではの手触りや文字の印刷が擦れているところが、何だか良い雰囲気を出しています。

  • 書簡体の形式をとった作品が目立つ、短編集的な作品。大正~昭和期の文体が好きな自分としては全体的に楽しんで読むことができた。
    登場する少女(女性)達の持つ性癖、宿命が示す結末がどれも耽美的であったり、残酷さを合わせている。

  • 先に太宰の人間失格を読んでしまったので、それと比較するのもおかしいけれども、一感想として・・・。

    太宰の登場人物は社会に道化している自責から、精神を病んでいった訳だけど、夢野久作の登場人物は生活様式に狂わされている感じが色濃く出ていた。
    情緒深く、信心深く、人を信じ、疑い、妬み、憧れる人ほど次から次へと言う事を変えていく信じた分だけ現実に裏切られ、また信じれるものを探して自己を偽っていく。それになんの罪悪感も抱かない。特に女と言う生物は。聖職者と呼ばれる人もそうであったし、空想が少女を殺すというのも「言われた事、振る舞いを何の根拠もなく信じる」生活様式に狂わされたのだろうと推測する。若くして死んだ少女を清らかな存在にしたいと言う気持ちが、ここまでの虚構を生み出すとすればそれは勿論作者の才能だろう。個人的には社会を愛せない道化を描いた太宰の作品を評価したい。ので星三つ。文学としてアリだと思う。

    因みに「童貞」は女の私でも分かる内容で、「これをやりとげなければならない」と言う脅迫概念じみた発想が、私にも在るのだと言う発見になった。オススメは出来ないが、迷う、惑う心のある人達には一度読んで欲しい一冊。

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著者プロフィール

明治22 (1889)年1月4日福岡に生まれる。本名杉山泰道。幼名直樹。法号萠圓。父杉山茂丸は近代における政界の黒幕といわれた。旧制修猷館中学を卒業後、近衛歩兵連隊に入隊。慶応義塾大学に入学後、大正2(1913)年に中退。放浪生活ののちに出家し、僧侶となる。大正6(1917)年に還俗し、父の出資による農園を経営する傍ら執筆を開始。結婚し、喜多流の謡曲教授となる。大正8(1919)年に九州日報に入社、記者となる。大正15 (1926)年に「あやかしの鼓」を発表し作家活動を始める。昭和10(1935)年「ドグラ・マグラ」を出版。昭和11年(1936)3月11日逝去、享年47歳。

「2019年 『定本 夢野久作全集 第6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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