あやかしの鼓―夢野久作怪奇幻想傑作選 (角川ホラー文庫)

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レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041366110

作品紹介・あらすじ

鼓作りの男が想い焦がれた女性へ、嫁ぐ時に贈った自作の鼓。その音色は尋常とは違い、皆を驚かせた。それは恐ろしく陰気な、けれども静かな美しい音であった…。夢と現実とが不思議に交錯する華麗妖美な世界。表題作をはじめ、その粋を集めた夢野文学の入門書ともいえる決定版の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 未知への恐怖。わからない、理解を拒絶するものといふのは、途方もない恐怖を生む。そして、さういふものといふのは、いつもひとの日常と隣り合はせに潛んでゐるものだ。
    ひとはいつでも、自分の成してゐることは、自分の力で成しえたと思ふものである。けれど、自分といふ存在は自分ではないものが在るからこそ保証されてゐるに過ぎないのだ。
    正常であらうとすればするほど、逆説的に狂気に陷つてしまふ。正常とは、正常と狂気が存在することを知りながら、あえて正常あらうとする意志のことだ。
    彼は、ひとのもつさういふ二面性を巧みに拾ひあげる。巧妙なtrickや激しい動機といつたものがなくても、グロテスクといふ形で、あるひは、不可解なひとの行動や意図の介さない偶然性を用いて。さういふ神秘や謎を解き明かしていくところに彼のmysteryがあるのだ。一方で、そんなmysteryはどこまでいつても、ひとである自分には恐ろしくて解けないといふことも彼は知つてゐる。
    正常だと信じてやまない世界は、いとも簡単に溶けてしまふ。狂気は唐突にひとを呑み込む。未知といふものはそれくらい、当たり前なものなのだ。それでも多くのひとは、呑み込まれず生きてゐる。もしかすると、彼は、そんな世界に決していけないといふことを知つていたから、ひたすらに考へ求め続けたのかもしれない。

  • 死後の恋
    瓶詰地獄
    悪魔祈祷書
    支那米の袋
    難船小僧
    幽霊と推進機
    怪夢
    白菊
    いなか、の、じけん
    木魂
    あやかしの鼓

  • 「鬼気」(p.386)ひらめく11編、収録。ちょい危険かも知れない。図書館本。41

  • こわくて面白い
    夢と現実をゆらゆらしてるようなお話がつまった短編集

  • 「あやかしの鼓」のみ再読。このぞわっとするような空気がたまらない。
    鼓に限らず、人が丹精こめて作ったものには、良くも悪くも何かが宿っていると思う。
    それが何人もの人に受け継がれていくものならなおさらだ。

  •  夢野久作先生らしい、「人」の持っている恐怖を扱った作品集だと思った。また、人によって解釈の方法があるのも夢野先生らしいと感じた。先生が考える背景を理解できなかったので、様々な人の解説記事を読んでみたけれど、実に様々な解釈があって面白かった。特に『瓶詰地獄』は面白かった。

     『死後の恋』はよくわからなかった。『悪魔祈祷書』は、店主の嘘(?)をずっと独白するということかな。『支那米の袋』は、とってもよくできていると思った。人間の残虐性や非情さがもっともわかりやすく著している作品だった。

     『難船小僧』は、よくわからなかった。とりあえず、迷信を恐れないでやったから良かったということかな。

     ほかの収録作品は、『幽霊と推進機』・『怪夢』・『白菊』・『いなか、の、じけん』・『木魂』・『あやかしの鼓』だった。

  • だいぶ文体にも慣れてきたけれど、よくわからない...
    一度読んだだけではなかなか理解できないが嫌いではないし他の作品も読みたいとは思うけれど個人的に読後感はあまり良くはない。
    そしてやっぱりこの本を読んでいる間は夢見が悪かった(笑)

  • 綾皮の樫で出来た宝尽くしの鼓、あやかしの鼓の物語。
    人を気狂いにさせる鼓を持つ美しい綾姫一族と、天性の鼓打ち音丸一族の因縁。
    どうやら、絵面のコントラストと艶やかさ、織りが細かく、心の深淵を這うような物語運びが、夢野久作の特色であるらしい。
    無意味な、壮絶な暗さの無いところが良い。

  • 「ドグラ・マグラ」へのウォーミングアップのために。
    有名な「瓶詰地獄」が入っていたので。
    これの解釈が気になる。

    「悪魔祈祷書」は乱歩の「人間椅子」みたいでイイ。

  • 2012年4月10日読了。iPhoneの青空文庫リーダーにて。表題作他11の短編を納めた本。夢野久作の作品が無料でiPhoneで読みまくれるんだねえ・・・。登場人物の独り語り形式で話が進んでいく物語が多いが、特に「死後の恋」は私が初めて読んだ夢野作品で、強烈な衝撃を受け今でも強く印象に残っている。不穏な時代設定といい語り手の内面の描写といい残酷で鮮やかな視覚的なラスト、オチの鮮やかさなど全てが短編小説のお手本のような作品だと思う。エロ・グロというよりも、人智を超えたもの・理解できないものへのどうしようもない憧れや恐怖が描かれているところに、この人の作品が万人(ではないだろうが)に愛される理由があるのではなかろうか。

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著者プロフィール

明治22 (1889)年1月4日福岡に生まれる。本名杉山泰道。幼名直樹。法号萠圓。父杉山茂丸は近代における政界の黒幕といわれた。旧制修猷館中学を卒業後、近衛歩兵連隊に入隊。慶応義塾大学に入学後、大正2(1913)年に中退。放浪生活ののちに出家し、僧侶となる。大正6(1917)年に還俗し、父の出資による農園を経営する傍ら執筆を開始。結婚し、喜多流の謡曲教授となる。大正8(1919)年に九州日報に入社、記者となる。大正15 (1926)年に「あやかしの鼓」を発表し作家活動を始める。昭和10(1935)年「ドグラ・マグラ」を出版。昭和11年(1936)3月11日逝去、享年47歳。

「2018年 『定本 夢野久作全集 第5巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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