瓶詰の地獄 (角川文庫)

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  • 角川グループパブリッシング
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本棚登録 : 1892
レビュー : 159
  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041366141

作品紹介・あらすじ

極楽鳥が舞い、ヤシやパイナップルが生い繁る、南国の離れ小島。だが、海難事故により流れ着いた可愛らしい二人の兄妹が、この楽園で、世にも戦慄すべき地獄に出会ったとは誰が想像したであろう。それは、今となっては、彼らが海に流した三つの瓶に納められていたこの紙片からしかうかがい知ることは出来ない…(『瓶詰の地獄』)。読者を幻魔境へと誘う夢野久作の世界。「死後の恋」など表題作他6編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 気持ちのいい気持ち悪さ

  • 一番好きな話は『死後の恋』。
    狂気と美しさと悲壮の入り混じったあの表現は夢野にしかできないと思いました。
    夢野久作作品では比較的読みやすい物になっていると思います。

  • 「瓶詰の地獄」
    一読したとき、瓶に入れられた手紙が書かれた順番は3→2→1だと思った。
    ただこれだと、2の手紙に書かれている「鉛筆がもう残り少ないから手紙がこれ以上書けないかも…」という描写と矛盾するというレビューを見かけた。
    それで一考したんだけど、私はやっぱり、3→2→1の順だと思った。
    というのも、太郎は2を書く前に、聖書を燃やすというタブーを犯してしまっている。
    聖書を燃やし、教えに背いてしまった時点で、そのあとに彼が書いた手紙が全部真実だとは思えない。

    ずいぶん昔、遠藤周作の「沈黙」を読んだ時、困っている時ほど沈黙する神の存在に翻弄される人々の描写を見せつけられた。
    この話の中でも、無人島に流れ着き、唯一絶対の道しるべだった聖書の教えに背く感情を抱いた兄妹が必死に神に祈るシーンが何か所もある。
    だけど、祈り、助けを請うても、兄妹に神が何かを答えた形跡はなく、聖書の教えと自分の感情の間で二人は余計に苦しんでいる。
    苦しんだ挙句、太郎は唯一絶対の教えを燃やすという手段に出た。

    2の手紙の「鉛筆が残り少ないからもう書けない」という一文は、今後、自分が行うことを正直に告白するかどうかわからないという太郎の気持ちであり、本当は鉛筆はまだまだ書ける状態だったと考えた。
    兄妹のタブーを犯した後、2の手紙で「鉛筆がもうない」と言っていたにもかかわらず太郎が手紙を書いたのは、告白と言うより遺書の意味合いが強かったからだと思う。

    短い話なのに読み返すたび、深い。
    神って何だろう。


    「死後の恋」
    グロ描写が乙一っぽくて大好き。
    語り部が持っていて兵士に見せたのは果たして宝石なのだろうか?

    「鉄槌」
    冒頭から、「真の悪魔がだれであるか」というオチは読めたけど、本当にきれいに終わっている。
    最後の一文が見事。
    『眼に見えぬ鉄鎚で心臓をタタキ潰されたからであった。』

  • 夢野久作の短編集を読むのは2作目ですが、なんとなくこの人の物語はパステルとかグラデーションとかじゃなく原色、しかも濃いやつ一色ってイメージがあります。原色でもパキッとしたのではなく錆ついたようなもので。

  • 夢野久作短編集。
    短編だけあって、一つ一つの話はページ数が少ない。
    なのに凄く濃い。濃度100パーセント。

    なかでも『死後の恋』が良かった。
    主人公が長々と独白する形式で、ロシア革命直後のウラジオストックで語る話。
    とあるシーンが凄く印象的。
    凄惨で血みどろで、ちょっとしんどいんだけれども、文章によってありありとその場面が描かれてた。
    結末も良かった。


    全体的に不気味。
    そういう雰囲気が好きな人は是非。

  • 初夢野。

    7編の作品を収録した短編集。
    独白体の文章が狂気じみた雰囲気を醸し出してていい。

    印象的なのは表題作「瓶詰の地獄」、「死後の恋」、「鉄槌」。
    食料豊かで穏やかなパラダイスのような南国の無人島がヒトのつくった倫理・理性によって地獄と化すという表題作の歪み方はステキでさえある。

    ところで何が驚きかと言えばこの夢野久作、活動時期こそ昭和に入ってからだが、江戸時代が終わって20年かそこらの生まれなのだ。
    1936年に47歳の若さで病死しているが、彼が昭和の戦争を見ていたらどんな作品が生まれたろう。

  • ドグラ・マグラがよかったので、短編も読んでみた。
    久作さん、そういう風に生れついた人なのか。人、殺したいと思ってるんじゃなかろうか、と感じてしまう。
    女を袋詰めにして船に乗せる話とか、ロシアの王女?の話とか、時代を感じさせるものが多く楽しかった。
    最後の方に載ってた、殺人鬼として扱われたい男の話を読んでいたら、ふとカフカの「王からの使者」を思い出した。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ドグラ・マグラがよかったので」
      「ドグ」はクラクラしませんでしたか?
      表題作の「瓶詰の地獄」を、丸尾末広がマンガにしているのですが、怖くて...
      「ドグラ・マグラがよかったので」
      「ドグ」はクラクラしませんでしたか?
      表題作の「瓶詰の地獄」を、丸尾末広がマンガにしているのですが、怖くてエロいのがお好みなら読まれては如何でしょうか?
      2012/07/07
  • 表題の『瓶詰の地獄』がめちゃくちゃ面白い。
    一体どういう話なんだ?と考え1日がたった。
    わずか20頁の話にこんなにも費やす時間が心地よくある。

    【以下私見】

    まず、手紙だが大方の読み通り、3→2→1の順だと思う。
    1の手紙には『1番初めの手紙を読んで両親が助けにきてくれた』とあるがこれは間違いだ。
    時系列で考えると、

    無人島に漂流
    3の手紙
    2の手紙
    妹との近親相姦
    救助船をみて1の手紙を書く
    自殺
    1の手紙は救助の人には発見されずに海に流される
    浜辺で発見され3通の手紙が開かれる

    となっているんだろう。
    兄は罪の意識があったようだが、はたして自殺する気はあったのだろうか?
    1の手紙の真ん中で、書き手が替わってるとしたらどうだろう?
    たいして長くない1の手紙で、『お父さま』と『お父様』と二通りあるのが引っかかる。
    手がふるえて、涙で手紙を書けなくなる所で兄から妹に書き手が替わる。
    前半部に比べ後半部がメルヘン的?詩的な表現が多くなっている事、妹は聖書で読み書きを学んだので『さま』は漢字を使うであろう事、2の手紙で兄は罪の意識は深いが自殺をあまり考えていない所などからそう判断。
    (おそらく兄はちゃんとしたクリスチャンで自殺には抵抗がある。2の手紙の最後で自殺ではなく神様に2人を殺してくれるよう願っている点。妹は途中自殺しようとしてた節がある。)

    以上のことから考えるに、実は無理心中なのか?とゾクゾクした。
    鉛筆とか3の手紙の妹の名前がカタカナとか謎が残るが、まぁコジツケで説明できなくもないのでスルー。

    とにかくオモシロい。
    表題意外はまぁ普通かなぁ。。。

  • 久作作品の中で最も好きな瓶詰の地獄が収められている短編集。ここから私の歯車は狂いだした。

    卒論で扱おうとしたものの、あまりの先行論文の少なさに断腸の思いで諦めた瓶詰の地獄。みんなもっと瓶詰について語ればいいと思う。
    ご都合主義で進む内容、読者に投げっぱなしの真相、(故意かはともかく)作品内で矛盾も起きている。よくよく考えれば批難され得る作品だが、それと同時に人を惹きつけてやまない作品でもある。

    いつぞやに読んだ論文の中で、「第一の手紙」はアヤ子によるものという説を提唱していて衝撃を受けた記憶がある。太郎ではないだろうなあとは思っていたけど、なるほどアヤ子か!

  • ★更新中★

    ★瓶詰の地獄
    敬虔なキリスト教徒のものの考え方とかが私にはあまりよく分からないのだけど、極限状態の中こんなに思い悩んでも清く正しくあろうとする主人公に感銘を覚えた。無人島漂着系作品には、絶対に絡むテーマだけど、こういう方面のお話って初めてだから新鮮だった。

    しかし11歳で南の楽園的無人島に漂着して以降、聖書一冊であれだけの文章力と語彙力を身に着けた太郎少年の頭脳が驚異的すぎるやろ。。。と、本筋と関係のないことを思っていた。
    つまり、手紙は発見と逆順(第3→第2→第1)で書かれたと勝手に思い込んでいたのだけど、別の方の解釈で
    実は手紙は流れ着いた順に書かれたのかも、というのを見た途端怖すぎてどうしようもない。夢に出そう。助けて。。。


    ☆人の顔

    ★死後の恋
    一人の自称元兵士が語る「死後の恋」は、狂気を感じる1本。果たしてこの話は本当なのか、最後にどう解釈するか、読者側に委ねられている感じが強い。そういう話は好きだけど、だけど、本作はちょっときつい。。。
    この人の作品は、エログロを仔細に描写してないのにちゃんとディテールを想像させる変なリアリティがあって、今作のようにちゃんとそれを表現されるとむっちゃ辛い。今若干トラウマになりかけてる作品。

    ☆支那米の袋

    ☆鉄鎚(かなづち)

    ☆一足お先に

    ★冗談に殺す
    すごい淡々としてる。狂気系、なんだけど、見方によっては殺人を犯して無意識の良心の呵責に耐えかねた「私」が狂うだけという?若干滑稽な感じも。動物愛護精神の強い方は途中注意。

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著者プロフィール

明治22 (1889)年1月4日福岡に生まれる。本名杉山泰道。幼名直樹。法号萠圓。父杉山茂丸は近代における政界の黒幕といわれた。旧制修猷館中学を卒業後、近衛歩兵連隊に入隊。慶応義塾大学に入学後、大正2(1913)年に中退。放浪生活ののちに出家し、僧侶となる。大正6(1917)年に還俗し、父の出資による農園を経営する傍ら執筆を開始。結婚し、喜多流の謡曲教授となる。大正8(1919)年に九州日報に入社、記者となる。大正15 (1926)年に「あやかしの鼓」を発表し作家活動を始める。昭和10(1935)年「ドグラ・マグラ」を出版。昭和11年(1936)3月11日逝去、享年47歳。

「2019年 『定本 夢野久作全集 第6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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