瓶詰の地獄 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 3122
感想 : 203
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041366141

作品紹介・あらすじ

極楽鳥が舞い、ヤシやパイナップルが生い繁る、南国の離れ小島。だが、海難事故により流れ着いた可愛らしい二人の兄妹が、この楽園で、世にも戦慄すべき地獄に出会ったとは誰が想像したであろう。それは、今となっては、彼らが海に流した三つの瓶に納められていたこの紙片からしかうかがい知ることは出来ない…(『瓶詰の地獄』)。読者を幻魔境へと誘う夢野久作の世界。「死後の恋」など表題作他6編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 表題作でもある「瓶詰の地獄」がどうしても読みたかったんです!

    何人かのブク友さんと一緒にハマっている「乙女の本棚シリーズ」、ブク友さんに教えて頂いて最近利用するようになった図書館の電子書籍にも無く、ぶらぶらしていたブック〇フで見つけてしまえば、購入に迷いはありませんでした。

    「瓶詰の地獄」、「人の顔」、「死後の恋」(乙女の本棚で既読)、「支那米の袋」、「金鎚(かなづち)」、「一足お先に」、「冗談に殺す」の7編が収められています。

    乙女の本棚で読み終えていた「死後の恋」とその後に収められている「支那米の袋」はいわゆる“ロシア”もの。

    ロマノフ朝最後の皇帝ニコライ二世とその一族の死は多くの謎を秘めていて1918年7月16日、エカテリンブルクの幽閉所で監視隊長ユロフスキイの指揮の下に残らず銃殺されたことになっているが、死体の処理をあまりにも入念にやりすぎて痕跡を残さなかったため、たちまちあちこちでまだ生きているという噂が立ち始め、実際に次から次へと贋物が現れ出した。わけても美貌を謳われた17歳のアナスターシャ、血友病という忌わしい病気を持つ14歳の皇太子アレクセイへの同情はひとしおで、事実、処刑後3年もしないうちにアルタイ地方で贋アレクセイが出現している。(巻末解説より)

    「死後の恋」はそんな事件から10年後の昭和3年の作品、「支那米の袋」は翌昭和4年、当時の人々は今の私たちよりも一層リアルに感じたことでしょう。

    では、「瓶詰の地獄」について。
    これがまた難解な^^;
    <あらすじ>
    『瓶詰の地獄』は夢野久作の書簡体小説です。無人島に漂着した兄妹が、近親相姦の罪に苦しみながら生きる様子を、海に流した3本の瓶詰の手紙で描きます。しかし、手紙の順番や内容には不明な点が多く、読者は兄妹の運命を推理することになります。この小説は、夢野久作の代表作『ドグラ・マグラ』と同じく、精神分析や宗教的な要素を取り入れた奇妙で幻想的な作品です。
    と、こんな感じですが、
    3本の手紙はどの順番で書かれたのか?
    聖書が兄妹の心理に与えた影響は何か?
    兄妹は最後にどうなったのか?
    この辺りが謎。

    3本の手紙はどの順番で書かれたのか?

    この問題には確定的な答えはありませんが、多くの読者は「第三の瓶」→「第二の瓶」→「第一の瓶」の順番で書かれたと考えているようです。その根拠としては以下のようなものが挙げられます。

    「第三の瓶」だけ表記が漢字とカタカナであることから、兄妹が島に漂着した直後に書いたものと推測される。

    「第二の瓶」には太郎がアヤ子に聖書や字を教えていたことや、島に漂着してから10年くらい経ったと思うことが書かれていることから、「第三の瓶」から「第二の瓶」までに長い時間が経過していることがわかる。

    「第一の瓶」には「私達が一番はじめに出した、ビール瓶の手紙を御覧になって、助けに来て下すったに違いありませぬ」とあることから、「第三の瓶」が最初に出した手紙であることがわかる。

    「第一の瓶」から「第二の瓶」までに兄妹が近親相姦を行ったことや、それを悔いて自殺を図ろうとしたことが示唆されている。

    聖書が兄妹の心理に与えた影響は何か?

    兄妹が持ち合わせていたものの中に小さな新約聖書がありました。兄妹は島に漂着した当時から神様に助けを求め、祈り、そして神様の前で潔白でいようとしていました。聖書は兄妹にとって唯一の精神的支えであり、生きる希望でした。

    しかし、「第二の瓶」で太郎が聖書を焼いてしまったことで、兄妹の心理は大きく変化しました。太郎は神様を否定し、アヤ子を異性として欲望するようになりました。アヤ子も太郎の気持ちに気づき、神様に背いた自分を責めました。聖書がなくなったことで、兄妹は罪を犯す環境に置かれ、その後悔と懺悔に苦しみました。

    兄妹は最後にどうなったのか?

    この問題も確定的な答えはありませんが、多くの読者は「第一の瓶」の内容から、兄妹が自殺したと考えているようです。その根拠としては以下のようなものが挙げられます。

    「第一の瓶」には「私達二人はシッカリと抱き合ったまま、海に身を投げなければなりません」とあることから、兄妹が心中するつもりであったことがわかる。

    「第一の瓶」には「さようなら」と書かれていることから、兄妹が生きる意志を捨てたことがわかる。

    「第一の瓶」には「お父様やお母様たちはきっと、わたしたちが最初に出した手紙を見て助けに来てくれたんでしょう」とあることから、兄妹が救助される前に自殺したことがわかる。

    以上のように、『瓶詰の地獄』は読者に多くの謎や想像の余地を残す作品です。夢野久作の他の作品と同様に、この小説も精神的な深みや不条理さを感じさせます。この小説を読んだあなたは、どんなふうに感じ、考えましたか?



    遭難兄妹が海に流した三つの瓶。そこに収められた地獄の真相とは?

    海難事故により遭難し、南国の小島に流れ着いた可愛らしい二人の兄妹。彼らがどれほど恐ろしい地獄で生きねばならなかったのか。読者を幻魔境へと誘い込む、夢野ワールド7編。

    内容(「BOOK」データベースより)

    極楽鳥が舞い、ヤシやパイナップルが生い繁る、南国の離れ小島。だが、海難事故により流れ着いた可愛らしい二人の兄妹が、この楽園で、世にも戦慄すべき地獄に出会ったとは誰が想像したであろう。それは、今となっては、彼らが海に流した三つの瓶に納められていたこの紙片からしかうかがい知ることは出来ない…(『瓶詰の地獄』)。読者を幻魔境へと誘う夢野久作の世界。「死後の恋」など表題作他6編を収録。

    著者について

    ●夢野 久作:1889年福岡県福岡市生まれ。日本探偵小説三大奇書の一つに数えられる『ドグラ・マグラ』をはじめ、怪奇性と幻想性の色濃い作風で名高い。1936年没。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    夢野/久作
    1889年福岡県に生まれる。幼名杉山直樹。慶應義塾大学文学部中退。禅僧、農園主、能の教授、新聞記者と、種々の経歴をもち、1926年「あやかしの鼓」を雑誌発表して作家生活に入る。36年春、生涯を終えた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

    • ヒボさん
      やっぱりシャケ派なんですねー(笑)
      サケ・シャケ問題、以外に面白くてついつい聞いちゃいました。
      やっぱりシャケ派なんですねー(笑)
      サケ・シャケ問題、以外に面白くてついつい聞いちゃいました。
      2023/09/18
    • なおなおさん
      ヒボさん、今日もお疲れ様でした。
      地区センターについて調べたら、すべてのセンターが市立図書館の本を扱っているわけではないそうなんです。
      私が...
      ヒボさん、今日もお疲れ様でした。
      地区センターについて調べたら、すべてのセンターが市立図書館の本を扱っているわけではないそうなんです。
      私が住む区は扱っており、その感覚で話してしまいました。ごめんなさい。
      でも、地区センターやコミュニティハウスは、新刊図書とか割と入れてくれます。そして市立図書館では予約いっぱいですぐに借りられない人気本が、本棚にあったりするのですΣ(゜゜)
      一度どこかお近くの図書室を見学してくるといいですね!
      電子図書館の「読書施設マップ」というページに詳細が載ってますよ˙³˙ )b
      2023/09/19
    • ヒボさん
      なおなおさん、こんばんは♪
      いつもお気遣いありがとうございます(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.゚

      ありました!!

      教えてもらった最寄りの地区センタ...
      なおなおさん、こんばんは♪
      いつもお気遣いありがとうございます(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.゚

      ありました!!

      教えてもらった最寄りの地区センターで大丈夫そうです♪

      次の休みに行ってみまーす(^o^)/
      2023/09/19
  • 気持ちのいい気持ち悪さ

  • 初夢野。

    7編の作品を収録した短編集。
    独白体の文章が狂気じみた雰囲気を醸し出してていい。

    印象的なのは表題作「瓶詰の地獄」、「死後の恋」、「鉄槌」。
    食料豊かで穏やかなパラダイスのような南国の無人島がヒトのつくった倫理・理性によって地獄と化すという表題作の歪み方はステキでさえある。

    ところで何が驚きかと言えばこの夢野久作、活動時期こそ昭和に入ってからだが、江戸時代が終わって20年かそこらの生まれなのだ。
    1936年に47歳の若さで病死しているが、彼が昭和の戦争を見ていたらどんな作品が生まれたろう。

  • 私もさすがに支那米袋かしら

  • 表紙の可愛さを木っ端微塵に吹き飛ばす、独特の作品ばかりが詰め込まれた短編集。
    どの話もなかなか読み進められず、ずっと物語の世界に閉じ込められているような気分だった。
    あの肌に纏わりつく湿っぽさと陰鬱な思考回路はやっぱり苦手だけれど、夢野ワールドを堪能できる一冊だった。

  • 一番好きな話は『死後の恋』。
    狂気と美しさと悲壮の入り混じったあの表現は夢野にしかできないと思いました。
    夢野久作作品では比較的読みやすい物になっていると思います。

  • 夢野久作の短編集を読むのは2作目ですが、なんとなくこの人の物語はパステルとかグラデーションとかじゃなく原色、しかも濃いやつ一色ってイメージがあります。原色でもパキッとしたのではなく錆ついたようなもので。

  • 夢野久作短編集。
    短編だけあって、一つ一つの話はページ数が少ない。
    なのに凄く濃い。濃度100パーセント。

    なかでも『死後の恋』が良かった。
    主人公が長々と独白する形式で、ロシア革命直後のウラジオストックで語る話。
    とあるシーンが凄く印象的。
    凄惨で血みどろで、ちょっとしんどいんだけれども、文章によってありありとその場面が描かれてた。
    結末も良かった。


    全体的に不気味。
    そういう雰囲気が好きな人は是非。

  • ドグラ・マグラがよかったので、短編も読んでみた。
    久作さん、そういう風に生れついた人なのか。人、殺したいと思ってるんじゃなかろうか、と感じてしまう。
    女を袋詰めにして船に乗せる話とか、ロシアの王女?の話とか、時代を感じさせるものが多く楽しかった。
    最後の方に載ってた、殺人鬼として扱われたい男の話を読んでいたら、ふとカフカの「王からの使者」を思い出した。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ドグラ・マグラがよかったので」
      「ドグ」はクラクラしませんでしたか?
      表題作の「瓶詰の地獄」を、丸尾末広がマンガにしているのですが、怖くて...
      「ドグラ・マグラがよかったので」
      「ドグ」はクラクラしませんでしたか?
      表題作の「瓶詰の地獄」を、丸尾末広がマンガにしているのですが、怖くてエロいのがお好みなら読まれては如何でしょうか?
      2012/07/07
  • 表題の『瓶詰の地獄』がめちゃくちゃ面白い。
    一体どういう話なんだ?と考え1日がたった。
    わずか20頁の話にこんなにも費やす時間が心地よくある。

    【以下私見】

    まず、手紙だが大方の読み通り、3→2→1の順だと思う。
    1の手紙には『1番初めの手紙を読んで両親が助けにきてくれた』とあるがこれは間違いだ。
    時系列で考えると、

    無人島に漂流
    3の手紙
    2の手紙
    妹との近親相姦
    救助船をみて1の手紙を書く
    自殺
    1の手紙は救助の人には発見されずに海に流される
    浜辺で発見され3通の手紙が開かれる

    となっているんだろう。
    兄は罪の意識があったようだが、はたして自殺する気はあったのだろうか?
    1の手紙の真ん中で、書き手が替わってるとしたらどうだろう?
    たいして長くない1の手紙で、『お父さま』と『お父様』と二通りあるのが引っかかる。
    手がふるえて、涙で手紙を書けなくなる所で兄から妹に書き手が替わる。
    前半部に比べ後半部がメルヘン的?詩的な表現が多くなっている事、妹は聖書で読み書きを学んだので『さま』は漢字を使うであろう事、2の手紙で兄は罪の意識は深いが自殺をあまり考えていない所などからそう判断。
    (おそらく兄はちゃんとしたクリスチャンで自殺には抵抗がある。2の手紙の最後で自殺ではなく神様に2人を殺してくれるよう願っている点。妹は途中自殺しようとしてた節がある。)

    以上のことから考えるに、実は無理心中なのか?とゾクゾクした。
    鉛筆とか3の手紙の妹の名前がカタカナとか謎が残るが、まぁコジツケで説明できなくもないのでスルー。

    とにかくオモシロい。
    表題意外はまぁ普通かなぁ。。。

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著者プロフィール

1889年福岡県に生まれ。1926年、雑誌『新青年』の懸賞小説に入選。九州を根拠に作品を発表する。「押絵の奇跡」が江戸川乱歩に激賞される。代表作「ドグラ・マグラ」「溢死体」「少女地獄」

「2018年 『あの極限の文学作品を美麗漫画で読む。―谷崎潤一郎『刺青』、夢野久作『溢死体』、太宰治『人間失格』』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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