町からはじめて、旅へ (角川文庫 緑 371-19)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041371190

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  •  何度も行ったハワイだけど、夢に見る光景があります。平日の午後、日差しの強い公園で、ベンチに腰掛けた日系のおじいさんに、昔話を聞く……。
    これを実際にやってのけたのが片岡義男。そこで聞いた魔法のことばが「チャイチャイブー」。ちなみにチャイチャイブーとは「Chichibu」つまり秩父。戦前の移民船秩父丸のことです。

     秩父丸は1930年に建造された豪華客船。1941年には定期便としての役目を終えたので、この船を知る方はもういい歳です。しかし片岡義男がハワイで個人的にヒアリングの日々を過ごしていた60年代には、まだ老人たちにとって日本もハワイも身近な場所であったはず。そんな頃のハワイを知っている彼に、私は嫉妬すら感じます。

     片岡義男の小説には、こうした実話を元に書かれたものが、非常に多い。この本にも「「チャイチャイプー」なんて、すごいじゃないか」「憧れのハワイ航路」「ハワイアン・ハイ・タイム」「アロハ・シャツは教会のバザーで買うものさ」「ヒロの一本椰子」などの短編が収められています。そのどれもが、凡百のハワイ小説にはないリアリティを持っています。

     ハワイの印象は、ホノルルを出ると一変します。どちらかというとホノルルが特殊なのでしょう。他の地域ではのんびりと南の島の生活が営まれているのですから。ちなみにオアフ島南部にある「ワイパフ(Waipahu)」地区は「日系移民が作った町」として知られています。以前ここには広大なサトウキビのプランテーションがあり、移民の人たちは主にそこで働いていたのだそうです。

     ホノルルにも日系人のお年寄りをみかける場所があります。たとえばワイキキ・ビーチの西に広がるアラモアナ・ビーチ・パークや、カイルア・ビーチ。天気のいい朝、ビーチを散歩していると、それらしき人たちと出会います。いつか「こんにちは」と挨拶して、昔話を聞いてみたい。

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著者プロフィール

1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始める。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『日本語の外へ』『万年筆インク紙』『珈琲が呼ぶ』『窓の外を見てください』『いつも来る女の人』『言葉の人生』ほか多数の著書がある。

「2022年 『これでいくほかないのよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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