限りなき夏 1 (角川文庫 緑 371-22)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041371220

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  • この人の描くハワイを読むと行ってみたくなる。サーフィンのシーンはやったことがないのでいまひとつ実感が沸かないが。めずらしく一人称。

    (P113)美絵子から渡された8オンス罐のバドワイザーに唇をつけ、ビールが喉に流れ込んでくる瞬間に、私=稲村日出夫と佐原隆幸のストーリーがカットバックしてくるのがいい。またこのふたりに亜沙子を加えた三人のストーリーがなんだかとても70年代っぽい雰囲気がしてとてもいい。偶然の出会い、ダットサンと罐ビール、サーフィン映画、夜中に海までのドライブ。最後に両手で押しつぶしたビールの罐は三分の一以下の高さに、ひしゃげた。

    読んでいるうちに、ふたりが別れた直後に佐原が事故って死んでしまったらそれはそれでなんともはかなくせつないエピソードになるのではないかと思った。

    挿話の最後では三分の一にしかつぶれなかった罐は今の時制に戻ると、きれいに薄くつぶれる。「年季がちがうんだ。これまでに、こうやっていったい何本の罐ビールを飲んだだろう」たぶん最初に罐をつぶしたのが挿話の最後、そこからの時の流れが罐のひしゃげ方で語られるというのもうまい。

    (P170)田舎の食堂と老夫婦の描写がとてもいい。夏のハワイにジュークボックスから流れるリズム・アンド・ブルースの『ホワイト・クリスマス』。P175で三十代のなかばになった私と1920年代のホノルルのダウンタウンの対比にはなんだか涙が出そうになった。

    最後に高校生の浩朗に物語が移り、どうなるかと思っていたらまさか?に続くとは思わなかったが。

  • セリフの一つひとつがかっこいい。

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著者プロフィール

1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始める。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『日本語の外へ』『万年筆インク紙』『珈琲が呼ぶ』『窓の外を見てください』『いつも来る女の人』『言葉の人生』ほか多数の著書がある。

「2022年 『これでいくほかないのよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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