道順は彼女に訊く (角川文庫)

著者 :
制作 : 片岡 義男 
  • 角川書店
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本棚登録 : 30
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041371930

感想・レビュー・書評

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  • 片岡義男の「道順は彼女に訊く」がおもしろい。ジャンルとしてはいわゆるミステリーなのだが、事件性よりも人物の描写に比重が置かれていて、その意味では宮部みゆき「模倣犯」に近いかも。もっとも事件らしい事件が起きているわけではないが。著者特有の抑制の効いた落ち着いた会話で進行する感じがなんともいえずよい。週刊誌の2ページ記事からスタートして後藤美代子という人物を徐々にたどっていく過程はとてもスリリングで読んでいて先へ先へと引っ張られる。

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    後藤美代子が物語の中心としてストーリーは進んでいくが、実は彼女を中心として関わりあう人物を描くストーリーである。通常のミステリーであれば最後は美代子に行き着き失踪の理由などがはっきりしそうなものだが、この作品ではあくまでも推測としてしか描かれないし美代子のその後も謎のままである。

    むしろ明らかになっていくのは、美代子の親友である中野玲子の人物像である。最初は日比谷の恋人(?)である高村恵子と同様、「重要な登場人物のひとり」だと思っていたが、ラストではむしろ、失踪したこの上なく美しい女性の謎を通して、彼女に恋愛感情を持ちつつもあとに残されたひとりの女性を描いたストーリーといえるような転換がなされているのには「やられた!」と思った。

    最初にこの事件を取材した福山を日比谷が訪ねるシーンで、「福山さんにとって、印象に残った最大のものは、どんなことですか」との日比谷の問いに対する福山の「彼女がいなくなって、そのあとに残ったものがあまりにも少ない、という事実です。はかないというか淡いというべきか、あるいは希薄でもいいですし、危ういという言いかたも出来ます。彼女という一人の人の、存在そのものが。彼女という人が存在していたことの確たる証拠のようなものが、いったんその本人がいなくなってしまうと、ほとんどなにもないという印象を私は受けました。そこのとこの奇妙さみたいなものが、いまも忘れられません。(後略)」という答えが印象的。もし今自分がいなくなったら、やはりこんなふうに希薄な存在になるのだろうかとふと思った。

    テレビの2時間ドラマの題材としておもしろいと思う。いかにも2時間ドラマのフォーマットで進めていきながらラストで謎が解決せず、しかも「あ、やられた! そういうことだったのか」と視聴者に思わせることができたら監督として一流なのではないか。

  • 昔何気なくスクラップした記事を見つけた主人公日比谷昭彦は、その事件に興味を惹かれ、個人的に調査を始める

    コーヒーが無性に飲みたくなる小説
    そしてドゥミタスとは何か、深く考えさせられた小説でした

  • 25歳の美しい女性が謎の失踪を遂げた。
    5年前の事件を偶然目にした作家が、謎の解明に挑むという物語。
    途中までとても面白かったが、段々と結末が見えてきてしまい、最後は納得のいかない終わり方だった。
    片岡作品2冊目。

  • 十代の頃よく文庫本を読んだ片岡義男の珍しいミステリーです。
    本当に久しぶりにたまたま店頭で見かけたので購入し読んで見ました。
    若い頃のお陰で片岡義男の美女像は
    僕の女性に対するイメージの多くを形作っていているわけですが、
    本作品の美女もまた然り、
    乾いたミステリアスさ、孤高な精神、女性同士の不思議な関係を持っています。

    一人の女性の失踪(存在の消去)にある男性が引かれ
    その存在を追求する物語です。
    過去に読んだどの作品よりも物語の構成や文章がしっかりとし、深く、
    また、意外なほど万人が認めるミステリーとなっています。
    独特の雰囲気のある文体、登場人物、そして物語が楽しめます。
    他のミステリー作家と比べて大したことないのでしょうけど、
    彼の本でこんなにワクワクしたことはなかったですね。

    彼の本が好きな方には是非読んで欲しい本です。

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著者プロフィール

1939年生まれ。74年「白い波の荒野へ」で作家デビュー。75年「スローなブギにしてくれ」で野性時代新人文学賞を受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍。著書、多数。

「2018年 『くわえ煙草とカレーライス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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