王朝序曲 誰か言う「千家花ならぬはなし」と (上) (角川文庫 10295)

  • 角川書店 (1997年2月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784041372043

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

複雑な権力争いと人間関係が渦巻く桓武時代を背景に、藤原冬嗣の視点から描かれる物語が展開されます。著者は、当時の藤原氏の微妙な立場や、兄弟間の葛藤、帝位を巡る陰謀を巧みに描写し、読者を引き込む力がありま...

感想・レビュー・書評

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  • 上下巻の上巻。桓武時代の複雑にもつれ合い絡み合う勢力争い人間関係を、藤原冬嗣目線で永井路子さんが描いた小説。
    桓武の時代、冬嗣の北家は房前時代の力は衰え、式家がやや優勢。
    皇子白壁を皇位に戻し、その先の山部を担ぎ出す為に百川達が行った策。井上、他戸を廃し山部(桓武)が皇太子の座につく。
    皇位を巡って藤原氏がうごめくのは不比等の時代から変わらない。
    怖いものなしだった帝王桓武、長岡京も続く大水害や不幸を怨霊の祟りに苦しめられる。
    藤原氏の策によって怨霊の祟りに苦しむのは、時代が変わっても時の帝。
    息子安殿との骨肉の争い。
    その頃の冬嗣は、権力の渦の中に巻き込まれることなく、ただ漠然と周囲を見つめ、したたかに兄を見ていた。
    兄真夏、異父弟の安世(父は桓武)と冬嗣。この後どうなっていくのか、永井路子さんがどう描くのかとても楽しみ。
    王朝時代、天武系から天智系へと変わり、天皇の周囲にうごめく藤原氏の権力争いの駆け引きを永井路子さんの考察で読む小説は読みやすく面白い。
    下巻も楽しみ。

  • 下巻にまとめて。

  • 永井路子の歴史小説は読みやすい。これも、桓武天皇の時代(主人公は藤原冬嗣)というあまりなじみのない時代だけど、すっと頭に入ってくる。
    藤原氏と言ってもこの頃はまだ北家が際立っていたわけではなく、若き真夏・冬嗣兄弟も父の官位に従って微官からのスタート。この後どうなるか、下巻が楽しみ。

  • 時は奈良時代末期から平安へ。桓武、平城、嵯峨と移り行く時代を、のちに左大臣まで昇り詰めた藤原冬嗣の視点で描く。
    帝位を巡り疑心暗鬼になる王族たちとそこに群がり覇権争いを繰り広げる貴族たち。出世街道からやや逸れたところにいる冬嗣は、遷都や政変の動きを冷静に見つめるが、やがて立場の異なる役職についた親子、兄弟は、腹の内は見せずに目の奥を探り合うようになる。
    教科書のなかで知った人物たちに血が通い、それぞれの立場から必然的に歴史的事件は起きる。久しぶりに古代史を舞台にした小説を読んでその楽しさを改めて感じた。

  • 2023/6/16再読
    ずいぶん読みやすいと思っていたら4年前に読んでいた
    藤原冬嗣をもう一回しらべてみようっと(´・ω・`)
    2019/6/21歴史小説家としてはダントツの永井路子先生ですが、最近読み漁っている杉本苑子先生の小説のほうがすごみがあり、事実を巧みにちりばめて物語を組み立てる感があります
    檀林皇后すごかった!
    さて、冬嗣があっさり、だけども現実はこんな風に動くよなと納得のいく展開で物語は進みます

    真夏と冬嗣の男兄弟らしい背伸びによる関係が秀逸の作品
    読後感は良いです
    良岑安世の位置づけが憎い!

  • 愛憎、相剋、無慈悲、ついでに冷酷。でも阿弖流為物語のスピンオフ的視点で見ると憐れ。遷都で失敗と成功の両方を体現した天皇の物語は不思議な時代感を漂わせる。でもよく見ると冬嗣の成長記なんだよな。

  • 2016/03/07完讀

    這本書刻劃平安王朝的誕生過程。天智血脈,懷著雄心壯志的桓武天皇,除了遠征蝦夷之外,決定與天武關係深厚的奈良和南都佛教強大的勢力訣別,784年遷都長岡京。

    桓武天皇在即位之前,就是藤原百川策畫巫蠱事件拉下他戸皇子和母親井上,讓他成為太子。而桓武天皇為了讓兒子安殿繼位,策畫了早良親王謀反的冤獄。長岡京大水災難,征蝦夷又大敗,人人都說是早良親王等怨霊所害,兒子殿親王也和父親事事反目。794年桓武天皇後來決定再度遷都山背(やましろ),更名山城。他嚮往唐制,認識了最澄之後,認同他所宣講的天台與發自內心的懺悔和清淨,動手將自己編的歷史中再度回復早良親王的清白。最澄搭上桓武所派的遣唐使船前往天台取經。

  • 平安初期の貴族たちのドロドロ人間関係を描く。藤原薬子のことを詳しく知りたいならぜひ。昔の人はもうスケベすぎ!


     桓武天皇は最澄や空海の本を読んだ時に出てきて興味があったのだが、ここまでドロドロの時代を生きた男だったんだな。甘く見ていた。
     この頃人間の下半身の事情がひどすぎて、「人間」という獣って感じがしてよい。殿上人が笑わせる。

    _____
    p36 辛酉の年
     桓武天皇が即位した年は、中国の暦で言う辛酉の年だった。この年は革命を司る年とされていて、勢い勇んで天皇に即位したのに、桓武の時代はぼろぼろだった。

    p57 早良親王の死は…
     早良親王は桓武によって島流しにあった。その背景には、桓武の子息である安殿親王が次期天皇に付けるようにする世襲問題があった。
     藤原冬嗣の母:永継(ヨウキョウ)と桓武天皇のただならぬ関係の子:安世も私生児ながら皇位継承権を持っている。歳の離れた弟も早良親王と同じような立ち位置に立つとわかった冬嗣は、生まれながら死ぬ運命を背負った弟を可愛いと思いながら複雑な思いだった。

    p107 薬子は母のよう
     藤原薬子と安殿親王がただならぬ関係になったのを、永井路子は、安殿の性癖の異常性として描いている。
     安殿の母:藤原乙牟漏は早良親王の祟りで病没したとされている。早くに母を失った安殿は、母の愛に異常な性癖を持った。という設定である。そこで、年上の包容力のある藤原薬子に溺れてしまった。

    p133 孤悲
     万葉人は、「恋」を「孤悲」と書いた。シャレ乙。
     離れている者同士が、それに耐えられず身悶えするという、激しい意味を込めている。安殿の薬子を求める気持ちも、恋よりも孤悲である。

    p221 桓武という男
     冬嗣の兄:真夏の桓武評、冷酷な帝王・権力欲の権化・人間性への無理解。
     桓武は色々と政策に積極的だった、だから冷徹にならなければいけないところもあったのだろうが、、、そういう人物だったのだろうな。

    p225 怨霊の使い方
     早良親王の祟りを実質認めてしまった桓武天皇。これがいけなかった。これ以降怨霊というものが悪用されるようになった。
     荘園の年貢の横領のために、「今年は天候不順で…。祟りのせいでしょうか…。」という言い訳が起つようになったし、陰陽五行の胡散臭い霊媒師が金儲けをできるようになってしまった。それに仏教の坊主も儲けられるようになった。
     日本は長く怨霊信仰から抜けられなかったというが、それは誰かが無くさないようにしていたということである。ここになぜ怨霊信仰が無くならなかったのかの片鱗が見えた気がする。
    ______ 

     これはマニアックな歴史小説。一般人受けはしない本でした。

  • 桓武天皇の時代、藤原冬嗣(北家)が主人公。
    兄・藤原真夏や、皇太子・安殿、冬嗣の異母弟・良峯安世が
    物語の主軸に登場する。

    上巻は、桓武天皇の即位、長岡京、平安京への遷都、
    蝦夷地の攻略、水害の発生などを背景にしつつ、
    桓武天皇とその皇太子・安殿の相剋が描かれる。
    桓武天皇と最澄との親交が少し描かれていたが、
    こちらも下巻でなにか発展するのだろうか。

    下巻ではどのような展開になるのか楽しみ。

  • 上巻
    桓武天皇、そして平城、嵯峨へと続く平安初期の話
    主人公は藤原冬嗣か?
    藤原兄弟そして天皇の親子と兄弟、そして皇室から外される皇子等久しぶりの平安初期の話
    憶えていない点もあるが、思い出しつつのんびりと

  • この本は藤原不比等の子孫である藤原冬嗣を主人公にしながら桓武天皇~嵯峨天皇の時代を描いた歴史小説です。
    中国の皇帝を理想とした権力者桓武天皇、父親(桓武)への反発心と怨霊におびえる平城天皇、権力から距離を置き文芸に秀でた嵯峨天皇。
    権威と権力が分離する、という日本独特?な「象徴天皇制」という政治形態は、この3人によってうまれ出たものだととても説得力がありました。
    また、この先の藤原道長が全盛時代を迎える平安時代の基盤を作ったともいえる時代のこの小説の名が「王朝序曲」とは!
    ぴったりすぎるネーミングに読み終えた後あらためて感動しました。

  • <上下巻読了>
     古代天皇制最後の独裁者・桓武から平城を経て嵯峨に到るまでの、混乱と平穏の道程を綴る本作は、時代の推移の意義を知る上でも含蓄に富む。
     細やかで落ち着いた筆鋒が浮かび上がらせるのは、王者個人と政治、権力と権威が一体であった国家の解体。
     “幻想の巨人”と称される桓武が、死に臨み敗北の総てを認め、己の生涯を否定してみせた凄みに圧倒される。
     満身創痍となっても尚壮烈に責任を負うその気概を、主人公・藤原冬嗣の目は冷徹に観察する。
     帝王の存在の重さを測りながらも政治業績を認めないまなざしは、人物を複眼的に考察する作者のそれでもあるのだろう。
     出世に背を向ける気楽さで鷹揚な皇子・賀美能へ仕える決心の下りは、長く出仕せずに過ごした頃の政情分析と心理描写を丁寧に前提として繋がり、素直に面白さと共感さえ呼ぶ。
     対照的な生涯を歩む同母の兄・真夏への、複雑な心情の機微も説得力がある。
     顕示的で頑固に一途な真夏の平城への献身に醒めてみせても、労りを失くせない兄弟の情。
     最後まで自身の運命を賭け、敗れた太上帝に心静かに附いてゆく、兄の潔さに対する敬愛の想いが深い。
     また、嵯峨の身辺を地道に淡々と支え、冬嗣の良き片腕となる義弟・三守の働きぶりも良い。
     控えめに実直で盲目に陥らない勘強い臣下は重宝に値する。
     屈託なく冬嗣を慕う異父弟・良峯安世も可愛い。
     これらの人脈を基盤に、酷薄な独裁傾向を欠き恣意的な政治介入の無い嵯峨の性質が、緩やかに新たな風潮を拓く。
     何より、白刃の抜き身をちらつかせず、穏やかに鞘に収めることの政治効果を見定める側近の冬嗣こそが、静かに何気なく古代社会を質的に転換させる。
     表面は穏健な妥協策を装い、だが実質的に遺制を突き崩す、真の変革の威力がそこにある。
     目に見える鮮やかさは無い代わり、紛れもなく前代の制度の息の根を止める凄まじさ。
     大袈裟に刷新ぶらず冷静に現実を見つめ、漸進的かつ具体的に律令国家を変質させ、別物へと擦り替えてゆく。
     王権にすら枠を嵌めて。
     その過程で天皇は、権力でなく権威の象徴として安定し始める。
     権力と権威の分割と密着。
     日本的な政治運営の祖形は、ここに発すると述べられる。
     『王不在』の奇妙なる『王朝国家』の序曲を奏でた人物は、後世に“温裕、弘雅”の評を得る冬嗣であったと。
     “千家花ならぬはなし(=花の溢れぬ家もなし)”と自ら歌った一節の如く、彼は世に永く平和の花を咲かせる。
     時代を本質的に動かす力とは、確実が故に密かであるのかもしれないと改めて感じ入る次第。
     余談として、薬子の乱と史上に語られるものが乱と言えるほど大仰でもなく、然りとて嵯峨側との見事な駆け引きの応酬でもあり、緊迫感をもって展開した面白さはやはり挙げておきたい。
     そして平城の政策の挫折を指摘する反面、薬子との情愛を毅然と肯定する姿を描くことで、彼女を帝を愛欲に溺れさせた妖婦と一蹴する見方を批判しているようにも感じた。
     更には、「雲と風と」にて瞠目した帝王と宗教者の精神的な交感の世界が、ここでは突き放して政治面から眺められる。
     叡山における戒壇創設の勅許を巡る冬嗣側の動きを併せて俯瞰すれば、時代の厚みと共に感慨も増す。

  • まったく本編の内容に関係ないけれど、武智麻呂の名前にいちいち反応してしまう。むちまろって。関係図は凄くありがたいのにね。関係図がないと継縄と種継がごっちゃになる。

  • 長岡京への遷都、蝦夷出兵と大胆な政治を押し進める帝王桓武。しかし、蝦夷攻略は失敗、相次ぐ妃の死、大水害に見舞われ、かつて自らが宮廷から追放した早良親王らの怨霊に惑わされ、再び遷都を決意した。亡き母親への憧憬拭いがたい安殿は、後宮入りした娘の母・藤原薬子の身体にのめり込み、その関係を咎める桓武帝と相剋を深める。平安遷都七九四年、官等をめざして縺れあう藤原真夏、冬嗣兄弟の愛憎、皇太子・安殿との骨肉の相剋に命をすりへらしていく帝王桓武を描く、長編歴史大河小説の大作

     2003年10月9日読了

  • 永井路子って、エッセイはあんなに楽しいのに、小説は……。
    藤原北家の礎を築いた冬嗣を主人公にした本は珍しいので、
    その意味では読む価値があった。けど、エッセイにしてほしかった。

  • 桓武天皇と不比等の子が立てた藤原家(北家,式家,南家,京家)を中心に話は進む。
    桓武は天智系であり,これまで天武系できた天皇家に対し競争心がむき出しになり,自我を通そうとすることが多かったような天皇である。
    桓武の皇太子の安殿(あて。後の平城)に仕えた北家系の真夏と,安殿の次に皇太子となる賀美能(かみの。後の嵯峨)に仕えた真夏の弟の冬嗣の,兄弟と言えども仕える主人が違うことによる戦い(血みどろの戦いまでにはならないが,政争の戦い。)が繰り広げられる。
    最終的には,嵯峨が天皇位につき,冬嗣が宰相のような立場で切盛りしていくが,嵯峨はいわゆる,象徴天皇の始まりと言うような感じの人で,それが故に,それから後数百年は,天皇位を血で血を争うような戦が無くなったという。毒にも薬にもならず,ただ,和歌などの文化面にのみ嗜好を走らせた嵯峨であったが,これはこれで,冬嗣が民衆のことを思いやった実際の政治をとるならばそれで問題なく世の中が収まるというようなもの。
    著者の本は初めて読んだが,スピード感と言うか,動乱の描写が少し大人し過ぎるように感じた。
    全2巻

  • 主人公の藤原冬嗣の目線で描かれる桓武・平城・嵯峨の時代。冬嗣は目線が冷めてて野心があるんだかないんだかで曖昧な人間性。いまいち感情移入はできなかった。しかし桓武と安殿の衝突など皇族のどろどろは人間味に溢れてる。期待した種継暗殺事件〜早良の死まではあっさりすぎて残念。やや覇気に欠けながらも明るい嵯峨天皇と異母弟の安世辺りがほのぼのさせて好きです。

  • 奈良から平安へ、その過渡期を生きた、北家・藤原冬嗣の、政争、兄弟の葛藤、そんな感じの物語。当に藤原北家の興隆の事始めが描かれています。
    永井路子の平安朝三部作一つ。
    道長を主役とした「この世をば」、次世代の「望みしは何ぞ」に続く。

    冬嗣の異父弟・皇子でもある良峯安世の柔らかく優しいキャラクターが、妙に心に残るのです。

  • 奈良から平安へ。
    遷都の陰には大きなドラマがあります。

  • 藤原氏の野望。王朝3部作の1作目。

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著者プロフィール

(ながい・みちこ)1925~。東京生まれ。東京女子大学国語専攻部卒業。小学館勤務を経て文筆業に入る。1964年、『炎環』で第52回直木賞受賞。1982年、『氷輪』で第21回女流文学賞受賞。1984年、第32回菊池寛賞受賞。1988年、『雲と風と』で第22回吉川英治文学賞受賞。1996年、「永井路子歴史小説全集」が完結。作品は、NHK大河ドラマ「草燃える」、「毛利元就」に原作として使用されている。著書に、『北条政子』、『王者の妻』、『朱なる十字架』、『乱紋』、『流星』、『歴史をさわがせた女たち』、『噂の皇子』、『裸足の皇女』、『異議あり日本史』、『山霧』、『王朝序曲』などがある。

「2021年 『小説集 北条義時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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