王朝序曲―誰か言う「千家花ならぬはなし」と〈上〉 (角川文庫)

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感想 : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041372043

感想・レビュー・書評

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  • 永井路子の歴史小説は読みやすい。これも、桓武天皇の時代(主人公は藤原冬嗣)というあまりなじみのない時代だけど、すっと頭に入ってくる。
    藤原氏と言ってもこの頃はまだ北家が際立っていたわけではなく、若き真夏・冬嗣兄弟も父の官位に従って微官からのスタート。この後どうなるか、下巻が楽しみ。

  • 時は奈良時代末期から平安へ。桓武、平城、嵯峨と移り行く時代を、のちに左大臣まで昇り詰めた藤原冬嗣の視点で描く。
    帝位を巡り疑心暗鬼になる王族たちとそこに群がり覇権争いを繰り広げる貴族たち。出世街道からやや逸れたところにいる冬嗣は、遷都や政変の動きを冷静に見つめるが、やがて立場の異なる役職についた親子、兄弟は、腹の内は見せずに目の奥を探り合うようになる。
    教科書のなかで知った人物たちに血が通い、それぞれの立場から必然的に歴史的事件は起きる。久しぶりに古代史を舞台にした小説を読んでその楽しさを改めて感じた。

  • 歴史小説家としてはダントツの永井路子先生ですが、最近読み漁っている杉本苑子先生の小説のほうがすごみがあり、事実を巧みにちりばめて物語を組み立てる感があります
    檀林皇后すごかった!
    さて、冬嗣があっさり、だけども現実はこんな風に動くよなと納得のいく展開で物語は進みます

    真夏と冬嗣の男兄弟らしい背伸びによる関係が秀逸の作品
    読後感は良いです
    良岑安世の位置づけが憎い!

  • 愛憎、相剋、無慈悲、ついでに冷酷。でも阿弖流為物語のスピンオフ的視点で見ると憐れ。遷都で失敗と成功の両方を体現した天皇の物語は不思議な時代感を漂わせる。でもよく見ると冬嗣の成長記なんだよな。

  • 2016/03/07完讀

    這本書刻劃平安王朝的誕生過程。天智血脈,懷著雄心壯志的桓武天皇,除了遠征蝦夷之外,決定與天武關係深厚的奈良和南都佛教強大的勢力訣別,784年遷都長岡京。

    桓武天皇在即位之前,就是藤原百川策畫巫蠱事件拉下他戸皇子和母親井上,讓他成為太子。而桓武天皇為了讓兒子安殿繼位,策畫了早良親王謀反的冤獄。長岡京大水災難,征蝦夷又大敗,人人都說是早良親王等怨霊所害,兒子殿親王也和父親事事反目。794年桓武天皇後來決定再度遷都山背(やましろ),更名山城。他嚮往唐制,認識了最澄之後,認同他所宣講的天台與發自內心的懺悔和清淨,動手將自己編的歷史中再度回復早良親王的清白。最澄搭上桓武所派的遣唐使船前往天台取經。

  • 平安初期の貴族たちのドロドロ人間関係を描く。藤原薬子のことを詳しく知りたいならぜひ。昔の人はもうスケベすぎ!


     桓武天皇は最澄や空海の本を読んだ時に出てきて興味があったのだが、ここまでドロドロの時代を生きた男だったんだな。甘く見ていた。
     この頃人間の下半身の事情がひどすぎて、「人間」という獣って感じがしてよい。殿上人が笑わせる。

    _____
    p36 辛酉の年
     桓武天皇が即位した年は、中国の暦で言う辛酉の年だった。この年は革命を司る年とされていて、勢い勇んで天皇に即位したのに、桓武の時代はぼろぼろだった。

    p57 早良親王の死は…
     早良親王は桓武によって島流しにあった。その背景には、桓武の子息である安殿親王が次期天皇に付けるようにする世襲問題があった。
     藤原冬嗣の母:永継(ヨウキョウ)と桓武天皇のただならぬ関係の子:安世も私生児ながら皇位継承権を持っている。歳の離れた弟も早良親王と同じような立ち位置に立つとわかった冬嗣は、生まれながら死ぬ運命を背負った弟を可愛いと思いながら複雑な思いだった。

    p107 薬子は母のよう
     藤原薬子と安殿親王がただならぬ関係になったのを、永井路子は、安殿の性癖の異常性として描いている。
     安殿の母:藤原乙牟漏は早良親王の祟りで病没したとされている。早くに母を失った安殿は、母の愛に異常な性癖を持った。という設定である。そこで、年上の包容力のある藤原薬子に溺れてしまった。

    p133 孤悲
     万葉人は、「恋」を「孤悲」と書いた。シャレ乙。
     離れている者同士が、それに耐えられず身悶えするという、激しい意味を込めている。安殿の薬子を求める気持ちも、恋よりも孤悲である。

    p221 桓武という男
     冬嗣の兄:真夏の桓武評、冷酷な帝王・権力欲の権化・人間性への無理解。
     桓武は色々と政策に積極的だった、だから冷徹にならなければいけないところもあったのだろうが、、、そういう人物だったのだろうな。

    p225 怨霊の使い方
     早良親王の祟りを実質認めてしまった桓武天皇。これがいけなかった。これ以降怨霊というものが悪用されるようになった。
     荘園の年貢の横領のために、「今年は天候不順で…。祟りのせいでしょうか…。」という言い訳が起つようになったし、陰陽五行の胡散臭い霊媒師が金儲けをできるようになってしまった。それに仏教の坊主も儲けられるようになった。
     日本は長く怨霊信仰から抜けられなかったというが、それは誰かが無くさないようにしていたということである。ここになぜ怨霊信仰が無くならなかったのかの片鱗が見えた気がする。
    ______ 

     これはマニアックな歴史小説。一般人受けはしない本でした。

  • 桓武天皇の時代、藤原冬嗣(北家)が主人公。
    兄・藤原真夏や、皇太子・安殿、冬嗣の異母弟・良峯安世が
    物語の主軸に登場する。

    上巻は、桓武天皇の即位、長岡京、平安京への遷都、
    蝦夷地の攻略、水害の発生などを背景にしつつ、
    桓武天皇とその皇太子・安殿の相剋が描かれる。
    桓武天皇と最澄との親交が少し描かれていたが、
    こちらも下巻でなにか発展するのだろうか。

    下巻ではどのような展開になるのか楽しみ。

  • 上巻
    桓武天皇、そして平城、嵯峨へと続く平安初期の話
    主人公は藤原冬嗣か?
    藤原兄弟そして天皇の親子と兄弟、そして皇室から外される皇子等久しぶりの平安初期の話
    憶えていない点もあるが、思い出しつつのんびりと

  • この本は藤原不比等の子孫である藤原冬嗣を主人公にしながら桓武天皇~嵯峨天皇の時代を描いた歴史小説です。
    中国の皇帝を理想とした権力者桓武天皇、父親(桓武)への反発心と怨霊におびえる平城天皇、権力から距離を置き文芸に秀でた嵯峨天皇。
    権威と権力が分離する、という日本独特?な「象徴天皇制」という政治形態は、この3人によってうまれ出たものだととても説得力がありました。
    また、この先の藤原道長が全盛時代を迎える平安時代の基盤を作ったともいえる時代のこの小説の名が「王朝序曲」とは!
    ぴったりすぎるネーミングに読み終えた後あらためて感動しました。

  • <上下巻読了>
     古代天皇制最後の独裁者・桓武から平城を経て嵯峨に到るまでの、混乱と平穏の道程を綴る本作は、時代の推移の意義を知る上でも含蓄に富む。
     細やかで落ち着いた筆鋒が浮かび上がらせるのは、王者個人と政治、権力と権威が一体であった国家の解体。
     “幻想の巨人”と称される桓武が、死に臨み敗北の総てを認め、己の生涯を否定してみせた凄みに圧倒される。
     満身創痍となっても尚壮烈に責任を負うその気概を、主人公・藤原冬嗣の目は冷徹に観察する。
     帝王の存在の重さを測りながらも政治業績を認めないまなざしは、人物を複眼的に考察する作者のそれでもあるのだろう。
     出世に背を向ける気楽さで鷹揚な皇子・賀美能へ仕える決心の下りは、長く出仕せずに過ごした頃の政情分析と心理描写を丁寧に前提として繋がり、素直に面白さと共感さえ呼ぶ。
     対照的な生涯を歩む同母の兄・真夏への、複雑な心情の機微も説得力がある。
     顕示的で頑固に一途な真夏の平城への献身に醒めてみせても、労りを失くせない兄弟の情。
     最後まで自身の運命を賭け、敗れた太上帝に心静かに附いてゆく、兄の潔さに対する敬愛の想いが深い。
     また、嵯峨の身辺を地道に淡々と支え、冬嗣の良き片腕となる義弟・三守の働きぶりも良い。
     控えめに実直で盲目に陥らない勘強い臣下は重宝に値する。
     屈託なく冬嗣を慕う異父弟・良峯安世も可愛い。
     これらの人脈を基盤に、酷薄な独裁傾向を欠き恣意的な政治介入の無い嵯峨の性質が、緩やかに新たな風潮を拓く。
     何より、白刃の抜き身をちらつかせず、穏やかに鞘に収めることの政治効果を見定める側近の冬嗣こそが、静かに何気なく古代社会を質的に転換させる。
     表面は穏健な妥協策を装い、だが実質的に遺制を突き崩す、真の変革の威力がそこにある。
     目に見える鮮やかさは無い代わり、紛れもなく前代の制度の息の根を止める凄まじさ。
     大袈裟に刷新ぶらず冷静に現実を見つめ、漸進的かつ具体的に律令国家を変質させ、別物へと擦り替えてゆく。
     王権にすら枠を嵌めて。
     その過程で天皇は、権力でなく権威の象徴として安定し始める。
     権力と権威の分割と密着。
     日本的な政治運営の祖形は、ここに発すると述べられる。
     『王不在』の奇妙なる『王朝国家』の序曲を奏でた人物は、後世に“温裕、弘雅”の評を得る冬嗣であったと。
     “千家花ならぬはなし(=花の溢れぬ家もなし)”と自ら歌った一節の如く、彼は世に永く平和の花を咲かせる。
     時代を本質的に動かす力とは、確実が故に密かであるのかもしれないと改めて感じ入る次第。
     余談として、薬子の乱と史上に語られるものが乱と言えるほど大仰でもなく、然りとて嵯峨側との見事な駆け引きの応酬でもあり、緊迫感をもって展開した面白さはやはり挙げておきたい。
     そして平城の政策の挫折を指摘する反面、薬子との情愛を毅然と肯定する姿を描くことで、彼女を帝を愛欲に溺れさせた妖婦と一蹴する見方を批判しているようにも感じた。
     更には、「雲と風と」にて瞠目した帝王と宗教者の精神的な交感の世界が、ここでは突き放して政治面から眺められる。
     叡山における戒壇創設の勅許を巡る冬嗣側の動きを併せて俯瞰すれば、時代の厚みと共に感慨も増す。

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著者プロフィール

永井路子:1925年東京生まれ。東京女子大学国語専攻部卒。編集者として働く傍ら執筆を開始。52年、「三条院記」でサンデー毎日懸賞小説入選、64年、『炎環』で直木賞を受賞。その後『氷輪』で女流文学賞、1984年に歴史小説の功績により菊池寛賞、1988年に『雲と風と』ほかで吉川英治文学賞、2009年に『岩倉具視』で毎日芸術賞をそれぞれ受賞。『北条政子』『この世をば』『流星‐お市の方』他著書多数。

「2022年 『寂光院残照』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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