石の血脈 (角川文庫 REVIVAL COLLECTION は 1-1)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 67
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (602ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041375037

感想・レビュー・書評

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  • アトランティス、暗殺教団、巨石信仰、吸血鬼、狼男、人から神への昇華などの
    好奇心をそそる要素をこれでもかというほどに盛り込んだ一作。

    謎の失踪を遂げる若き建築家の妻。真相を探るべく調査に乗り出した建築家は
    昔の恋人と秘密結社にたどり着く。
    かつての恋人は財閥企業を隠れ蓑に吸血鬼の真相と君臨し、容姿端麗な人間をターゲットに仲間を増やそうとしていることが判明する。有能で顔もそこそこ良い建築家は結社に入信する条件を満たしており、元カノより吸血鬼化の誘いを受ける。
    媚薬+吸血鬼化によってより官能的に帰ってきた元カノの誘惑には勝てず、建築家は
    真祖と一晩過ごし、人間をやめる羽目に。それからは他の吸血鬼仲間たち(妻含む)と性の饗宴に明け暮れる日々を過ごす。建築家の安否を気遣ったばっかりに、
    吸血鬼社会の秘密に近づきすぎた知人たちは、結社に深く関りをもつアサシン教団によって亡き者に、または問答無用に吸血鬼となる末路を辿る。建築家の最も親しい友人は不幸にも真祖と血が濃すぎたため吸血鬼化がうまくいかず、狼男となり真祖の眷属に。そして建築家が完全に人間に戻れないところで、真祖から秘密結社が企てる最終計画の全貌を告げられる。不老不死となりこの世を統べる、それが秘密結社の目標であり、吸血鬼化は神として生まれ変わる前準備に過ぎなかったのだ。真祖によると
    吸血鬼化が進行すると体が石化し、数千年の年月を経て石化が解けることで初めて不死として蘇る。そこで建築家は石化した大勢の吸血鬼が安全に石化が解けるまでの期間を過ごせる保管場所を地下に設計し、結社の力を借りて建設。真祖を含め、大半の石化した吸血鬼が地下保管所に運ばれ、神化プロジェクトは建築家自ら内側から保管場所を封鎖して完了を迎える直前に予想だにしなかったことがおきてしまう。吸血鬼による支配をよく思わなかった狼男たちが結託し、保管場所を襲撃。建築家を除く
    吸血鬼石像は一つ残らず破壊されてしまう。建築家は狼男たちを保管場所に閉じ込め命からがら逃げだすが、その時自身の石化が始まる。最後は、すでに数千年前に眠りについて石化から目覚めた結社内の吸血鬼(サンジェルマン伯爵等々)に建築家の石像が回収されるところで本作は幕を閉じる。建築家が無事に不老不死として目覚めるかは知る由もない。

    後半は性なるサバトの描写が少しばかり多いかなと感じた。しかし、舌を刺し
    吸血病をうつして悦楽にひたるシーンは不覚にも興奮してしまう・・・

  • ヴァンパイヤから狼人間、メガリス、宗教の発足といった要素をこうもうまく説明しえる説…まさに小説。こういうプロセスを経るなら、不死者が今も世界に数人くらいはいても不思議ではないのかも、と思える。

  • 2015.12.2(水)¥100+税。(-2割引き)
    2016.3.23(水)。

  • この表紙じゃないんだよなあ。角川の横溝正史と半村良の素晴らしい表紙はもっと評価されるべきだと思う。

    さて、長いし内容も重いんだけど、これぞ半村良の集大成というべき作品だ。100mを6秒台で走る謎のミイラ人間、暗殺教団とアトランティスから続く巨石信仰。

    その辺でしばらくスタックされ、退屈な話で終わるのかと思いきや、古今東西の政財界を牛耳る謎の集団、古代ヨーロッパの石像が出てくる意味、世界各国の吸血鬼伝説に奇病に伝播メカニズムと、てんこ盛りの上のてんこ盛りで、良い意味で半村良らしい展開となる。幕切れもよくあるコンパクトなオチになっていないあたり、非常に良い。

    全般に、知識をこれでもかと登場人物に喋らせるところと、特に後半に集中するエロ描写の連続には、うんざりしなくもないが、個人的に「半村良作品といえばコレ」と推せる1冊である。

  • 壮大なスケールのSF。さまざまな謎や権力を巡るやりとり等、とてもおもしろかった。

  • ミステリーと伝奇小説が混在した作品。
    ある策略が判明するまではミステリー、
    その後は伝奇系に色が変わります。

    これは人の消えることのないある欲求が
    テーマとなっております。
    それがために多くの人が犠牲になり
    隅田の周りの人もこの陰謀の駒となります。

    ですが、それに異を唱えるものの
    工夫した行動によりその計画は
    悪い形ではあったものの
    消し去られます。

    でも、すごく悲しい物語。
    人の欲は時に暴走します。
    なのでこの本を読んだ後
    今あがっている大きな問題を思い起こさずには
    いられませんでした。

  • 国枝史郎、山田風太郎の系譜を引く伝奇小説。
    半村良の小説の中でも群を抜く完成度を誇っている。
    吸血鬼の設定を日本に持ち込むとこうなる。
    犬神伝説や不老不死の伝説とも絡めてとても興味ぶかい。
    SFXの特撮の進化した現在、映画化が待たれる一作でもある。
    エロスやサスペンスもふくめて、一級のエンターテイメントである。
    なぜ『戦国自衛隊』ばかりが人気なのか、わけがわからない。
    半村良といえば、まず『石の血脈』か『妖星伝』である。

  • 超人として人間には計り知れない性の快楽を得て性の開放感を楽しんだ後に化石人間となり、数千年後に蘇って不死を得る。
    不死の資格を持つために人間は激しい闘いを繰り広げると言うが・・・
    死は確かに恐ろしいけれど、不死はもっともっと恐ろしい事だと思ってしまうのでした。

  • 前半はやたら描写や薀蓄が細かく、のめり込めなかった。しかし中盤からぐいぐい物語が進行する。前半の設定よりも、本書のポイントは終盤の空しさ。いっきにストーリーが多淡々と着実に、絶望的に進む。どんでん返しはさらに新たな空虚へ包まれた。読了後の諦念にも似た充実感こそが、傑作といいたい。

  • 古代アトランチスの謎を秘めたクロノスの壺。この壺の展示会こそ全ての悲劇の幕あけといえた。美しい人妻の失踪、人間の能力を遙かに超えた狼男の暗躍、美男美女の秘密グループが行う性の狂宴―これら次々に起こる奇怪な事件こそ、永遠の生命を求める暗黒の野望のうごめきであった…。そして今、古代イスラムより歴史を貫いて脈々と生きる恐怖の秘密の全貌も明らかにされようとしていた…。壮大なスケールで描くSF伝奇ロマンの最高傑作。
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    【感想】
    http://blog.livedoor.jp/nahomaru/archives/27723525.html

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著者プロフィール

1933年東京都生まれ。都立高校卒業後、紙問屋の店員、板前見習、バーテンダーなど様々な職業を経験した後、広告代理店に勤務。62年「SFマガジン」第2回SFコンテストに「収穫」が入選。71年初の単行本『およね平吉時穴道行』刊行。73年『産霊山秘録』で泉鏡花文学賞、75年「雨やどり」で直木賞、88年『岬一郎の抵抗』で日本SF大賞受賞。『石の血脈』『戦国自衛隊』『妖星伝』など著書多数。2002年逝去。

「2023年 『半村良“21世紀”セレクション1 不可触領域/軍靴の響き 【陰謀と政治】編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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