となりの宇宙人 (角川文庫 緑 375-10)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041375105

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  • 絶滅危惧種の虹色の半村良。日常にちょい足しのSF短編集なので、世代を問わず楽しむことが出来る1冊。で、半村良というと「なんか途中でダレる」が問題なのですが、本作ではそういうダレる作品が少なくなっています。

    なんでダレるのかと分析しながら読んでいくと、目につくのが「ビー」という作品。ビー玉のルールをひたすら淡々と3ページにわたって解説してくれるんだけど、これをもってダレない人がいたらお目にかかりたい。つまり、風景や状態の描写が過激なのだ。

    他の作品でも、「建物の隣には何があって、その横の道がどんな様子で、その店にこんな女将さんがいて」と非常に事細かく説明があり、紀行文なのかな?と錯覚するような文である反面、どうしてもSFであるという先入観が有るのでそこを追い求めてしまってダレるのである。

    さて、本短篇集で面白いのは、やはり「思考実験」であろうと思う。車社会を破壊してみたり、貨幣を機能させなくしてみたり、表題作では宇宙人とのファーストコンタクトでまったくお互いのことを敵視しなかったら?というもの。オチが弱かったりして、どうしても荒削りに見えてしまうが、非常にリアルで臨場感をもって読むことができる。SFを書く人は、最初はこういうふうに書きましょうという、いい例が詰まった1冊といえる。

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著者プロフィール

1933年東京都生まれ。都立高校卒業後、紙問屋の店員、板前見習、バーテンダーなど様々な職業を経験した後、広告代理店に勤務。62年「SFマガジン」第2回SFコンテストに「収穫」が入選。71年初の単行本『およね平吉時穴道行』刊行。73年『産霊山秘録』で泉鏡花文学賞、75年「雨やどり」で直木賞、88年『岬一郎の抵抗』で日本SF大賞受賞。『石の血脈』『戦国自衛隊』『妖星伝』など著書多数。2002年逝去。

「2023年 『半村良“21世紀”セレクション1 不可触領域/軍靴の響き 【陰謀と政治】編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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