生きているユダ―ゾルゲ事件 その戦後への証言 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041390023

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦下の一九四一年、新聞記者日本特派員リヒアルト・ゾルゲと元近衛内閣嘱託尾崎秀実らがコミンテルンの指令によりスパイ活動を行ったとして逮捕、四四年に処刑された。世にいう「ゾルゲ事件」である。しかし、彼らは恥ずべき売国奴だったのか。戦争とファシズムの嵐に抗して、真の世界平和実現を目指した勇気ある「志士」たちではなかったのか-。事件発覚の陰には、同志を売った「ユダ」の姿が見え隠れする。迫りくる偏見や苦難を超え、ゾルゲ事件の謎に、秀実の実弟が挑んだ恩讐のドキュメント。

感想・レビュー・書評

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  • 伝聞や妄想も多いが、当事者としての記録。伊藤律について、後年、スパイではなかった説が出て来て居るらしいが、真偽は分からない。そちら側のものも読んでみたい。

  •  原著は1959年刊行。ゾルゲ事件において「ユダ」=裏切者の役割を担った伊藤律への告発の書だが、実質的には尾崎秀樹個人の占領期(特に日本共産党「分裂」期)の回想録。当時の共産党周辺の状況や占領軍の諜報・謀略活動の一端を窺う史料的価値がある。

  • 伊藤律氏の健在が公になつたのは1980(昭和55)年のこと。ゾルゲ事件ともども、私はその時初めて知つたのですが、まだ子供の私はゾルゲと聞くと、バロムワンのドルゲを思ひ出すのみでした。
    スパイであるとか、共産党を除名になつたとか、仲間を売つたとかロクな話がなかつたのですが、本人は完全否定してゐました。激怒といふべきか。

    一方尾崎秀樹氏といへば大衆小説などの評論家として私は認識してゐました。私の所持する文庫本解説執筆者の上位者といへば「十返肇」「小松伸六」そして「尾崎秀樹」かな。ま、感覚で言つてゐるので正確ではないかも知れません。「武蔵野次郎」「巌谷大四」なども有力候補かも知れませぬ。どのやうな傾向の本が多いかばれてしまひますね。

    その尾崎秀樹氏の兄がゾルゲ事件で逮捕、処刑された尾崎秀実氏であつたと後で知りました。
    本書ではゾルゲ事件そのものよりも、事件の真相を追ふ過程を綴つてゐます。
    共産党の「裏切者」伊藤律がそれを裏で妨害し、尾崎秀樹を抹殺しやうとする。病に倒れた著者は極貧の中伊藤律との闘ひを続け、ついに1953(昭和28)年9月、伊藤は共産党から除名、追放されるのであります。

    それから6年後の1959(昭和34)年、『生きているユダ』は世に出ます。角川文庫になつたのは1976(昭和51)年で、当時はまだ伊藤律の消息は分つてゐません。
    映画「スパイ・ゾルゲ」公開に合せ、2003(平成15)年に復刊。この時期にはすでに伊藤律が尾崎秀実を売つたのではないとする風潮になつてゐました。北林トモの名を出したのは伊藤ではなく青木キクヨといふ人らしい。よくわかんないけど。

    従つて本書は今となつては史料的価値よりも、尾崎秀樹といふ若者が歩んだ当時の思想的情況を知る上でまことに興味深いと申せませう。ユダはどこかへ行つてしまつたのです。

    http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-220.html

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著者プロフィール

一九二八年(昭和三)台湾に生まれる。台北帝大医専に進むが中退し、四六年(昭和二十一)、日本に戻る。新聞記者などの職を経て、大衆文学研究家として活躍する。六五年(昭和四十)に『大衆文学論』で芸術選奨文部大臣賞を受賞。九〇年(平成二)、『大衆文学の歴史』で吉川英治文学賞を受賞。日本ペンクラブ会長、日本文芸家協会常務理事などを歴任。著書に『旧植民地文学の研究』『魯迅との対話』、兄・秀実が関わったゾルゲ事件を究明する『生きているユダ』『ゾルゲ事件』など。九九年(平成十一)没。

「2018年 『孫子・呉子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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