氷点 (上) (角川文庫)

  • 角川グループパブリッシング (1982年2月2日発売)
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  • 本 ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041437032

感想・レビュー・書評

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  • 辻口医師は恩師の娘と結婚し、可愛い子供2人に恵まれた。若く美しい妻、利発な長男 徹と愛くるしい長女ルリ子、医師としても人望厚く、彼の人生に翳りはなかった。

    が、辻口の留守中 妻 夏枝は辻口の後輩の村井を家に招き入れ、長身の青年医師に口説かれる喜びに酔っていた。
    母に相手にされず1人で遊びに出かけたルリ子は夕刻になっても戻らず、遂には林の中で絞殺体で見つかった…

    ルリ子を殺した犯人は妻に急死され、乳飲み子を抱えてノイローゼになり凶行の後自殺。行き場を無くした怒りと悲しみの中、辻口夫婦は養子をとるのだが…(夏枝は不妊手術済み)

    妻の不貞を疑い、復讐のためにルリ子殺しの犯人の子を引き取るも、その秘密の大きさに疲弊し、またその子を可愛がることが出来ず苦悩する辻口。

    子供を陽子と名付け、我が子のように愛し育てていた夏枝もある日、辻口の日記から陽子が仇の子であることを知ってしまい…

    ものっすごい昼ドラっぽい。陽子ちゃんがまた可愛らしくて良い子なんだよね…徹が大切にしたがるのも当然で。

    1番ダメなのはこの場合、辻口の妻 夏枝かな…実際夫を裏切ってはいないんだけど気持ちの上では…

  • 登場人物の心の機微が細かく描かれていて惹き込まれる。
    ルリ子と陽子、啓造と村井、夏枝と辰子……
    人物間の対比もとてもおもしろく、この対比があることで彼らが生き生きとまるで本当に生きた人かのように動きだす。
    これは下巻が楽しみだ

  • ひょっとしたすれ違いや誤解が大きな悲劇をもたらし、疑念が憎悪に変わる。人間の脆い部分が絶妙なプロットで炙り出されていく様は山崎豊子の「白い巨塔」や「華麗なる一族」を読んでいるかのような感覚になった。
    作中、辻口が妻を憎むか憎まず赦すか、何度も葛藤しては憎み直し、かと思えば自分の器の小ささや残酷さに気づき、優しい言葉をかける様はもどかしくもあったが人間らしさそのものだと感じた。

  • 登場人物の心理描写が分かりやすく描かれている。同じ屋根の下で生活しながらお互いに復讐しようと思いながら過ごしているところが、怖いと感じた。

    啓造は夏枝と村井に怒りながら、夏枝に復讐しようとルリ子を殺害した佐石の娘を養女にして夏枝に育てさせる、一方で事情を知らない夏枝は陽子と名付け自分の子供のように大切に育てるが、ある日事情を知ってしまう…もちろん夏枝は激しく怒り陽子へ嫌がらせや首をしめて殺そうとしたり、啓造への復讐として村井と関係を持とうとする。

    啓造も夏枝も、どっちもどっちだなと思いながらも下巻の内容が気になる。

  • 「原罪とはなにか」をテーマにした戦後の旭川の裕福な医師一家の話。
    度々登場する北海道の冬の情景の描写が登場人物たちの心情と重なり、悲しさや強さの感情が伝わってくる。
    読みにくい作品なのかと思いきや、ドラマチックで全く飽きることなく最後まで読み進めた。

  • 考えさせれる

  • 辻口と夏枝の思惑。互いに話し合えば解決することもあるのに…と思いながら読みました。
    昔読んで、三浦綾子にハマった最初の作品。
    懐かしく読みました。

  • 名作の誉れ高い小説である。長らく一度読んでみたいと思いながらようやく読めた。
    著者はクリスチャンでもあると聞いていたから、哲学的で崇高な思いを呼ぶ小説かと思いきや、まるで大映ドラマのような、次から次へと強烈な出来事が起こるお話だった。
    夏枝の描かれ方のひどさにびっくり。陽子は申し分なく完璧すぎるほど完璧に描かれていてその対比なのかもしれないけど、同じ穴のムジナともいうべき夫の啓造に比して男尊女卑的も思えるほど愚かに描かれる。これが時代のせいなのか。
    あわせて、完璧な陽子をしてそう思うものなのかと思ったのが、陽子が自身が殺人者の娘であることを知り、罪を背負った意識に深く苛まれたということ。陽子のような賢い人であれば、親は親、自分は自分と考えそうなものだけど、そうはいかなかった。これもまた時代の空気なのか。悪しき家族主義とでもいうもの。結局、陽子は殺人者の娘ではなかったんだけど、それもまた、作者のなかに罪人の子どもは罪を背負うものという意識があったからではなかろうか。

  • 昔ドラマを見た記憶があり、そう言うことだったのかと理解しながら読み始め、早く下巻を読みたいと思うところ

  • 複雑に入り組んでいく思惑に体力を奪われるかと思いきや、読む手が止まらない。
    たとえ誰の子であっても分け隔てなく、大事に育てられると思えなければ引き取る資格はないでしょう。振り回される子どもたちが不憫でならず、弱い立場であるということを思い知らされる。
    人間が集まれば、一人で孤独に暮らすよりも何倍もの不幸が降りかかったり、散々な思いをすることもある。それでも共に生きる意味を、愛と良心の存在を信じたい。祈るような気持ちになった。

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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