孤独のとなり (角川文庫 (5537))

著者 :
  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041437087

感想・レビュー・書評

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  • 2016.2.25
    三浦綾子さんは私が好きな作家さんで、氷点、泥流地帯、岩に立つを読ませていただいた。どれも、人間がいかに生きるべきか、人生において、人間の魂において大切なことは何かを語ってくれる小説で、読み終わった後不思議な力強さを感じる作品ばかりだった。そんな作者の随筆集が古本屋に売っていたので購入し、読了。思ったところは色々ある。何が大切なのか、それを伝えるために必要なのは説得力であり、何が大切かは割とありきたりというか、しかし如何に、なぜ大切かを説くことに彼女の作品の魅力を感じている私にとって、当たり前のことを当たり前に述べているような気がするこの随筆集は少々物足りない気もした。しかし、その当たり前を我々はどれだけ当たり前とできているだろうか、もしくはできた気になっているだろうか。何よりすごいと思ったのは作者の姿勢である。この随筆集では、作者の体験をベースに、そこから得られた感想を述べる形で書かれている。それだけ彼女は、生活から常に何かを学び、そして内省しているのである。学校を卒業するとはどういうことか、それは独学する術を学んだということだ、という趣旨の言葉をひいていたが、まさにそれを地でいく姿勢を持っている、学びの人だと思った。同時にその学びによって得ているものは、愛への接近である。この頃、つくづく愛がすべてだと思う。食べ物へのもったいないは、それを料理した人、それを作った人の苦労を思えばこそであり、そこには関係があり、思いやりがあり、感謝がある。それはまさに愛である。愛とは人間の本能的な感情や欲望のような先天的なものではなくこのような意識的な精神活動であり、後天的なものであり、つまり学んで培うものである。愛とは意志であるというのはつまりこういうことだと思った。またこれだけ内省し自らの至らなさを自覚しながらも幸せだと言えるためにはそれだけ自らの魂に誇りを持って楽観性がなければならないようにも思う。私なんて内省すればするほど凹んでしまう性質だからである。愛を以ってすべてを捉えれば、感謝だの思いやりだの礼儀だのは自然に出てくるもの、孔子風に言えば、愛が本、他の徳が末ではないだろうか。また自らの魂によって生きることも大切で、それは自らへの誠実さとも言えるだろう。いや、それもまた、自らへの愛と言えるか。いや、愛を以って人に接する時、人は相手にも自分にも誠実にならずにはいられない。まさに、愛こそすべてのような気がする。この本には数多くの教訓が書かれているが、そのすべてを吸収することはできない、こんな時に肝要なのは、その結果でなくその姿勢を学ぶことである。それはまさに、愛を第一とし、日常生活から、生きることから学び続ける、自らの愛を点検し続ける姿勢ではないだろうか。しかしこの愛の姿勢にも天敵がいることも否定できない。傲慢、強欲、恐怖、怠慢、これらの敵とどう戦うか、またどう付き合うかも考える必要があるだろう。これらの敵は人間の現実である。つまり、愛は意志であり、その意志を発する人間は弱い生き物であり、それを知って学んで見据えた上で少しずつ愛することができるようにならねばならないということだ。人間という職業、生きるという仕事と考えた時、その熟練度は、愛の度合いなのかもしれない。最近、日々学ぶという、開放性のある生き方を忘れていた気がしたので、非常に目の開いた本だった。この愛と学びという絶対基準を以って、また自分の生き方を見直したい。

  • 三浦さんが雑誌・新聞に書いた色々な文章をまとめた本。
    日々の生活のことや思い出を書いたものが多くて
    それぞれもすごく短いし、読みやすい(o^-^o)
    三浦さんの本は一生大切にしていきたい☆彡
    大人になってもちゃんと三浦さんの本を読んで
    自分について考える人でありたい。
     
    (2007.04メモ→2010.04ブクログ)

  • いろんな雑誌や新聞に掲載した文章を取りまとめたエッセイ集。
    そのためタイトルに沿わない部分もある。

  • 三浦綾子の作品は長編もいいけれど、空いた時間に少し読めるようなこういったエッセイ集も面白い。あちこちで共感しながら読み終えました。

  • 親が子に多くを期待してはいけない。吉野弘の詩『奈々子へ』のようだ。子どもに過剰な期待をすることは親子関係をゆがめることになる。神から預かった子という認識はなかなかできないけど。
    学校を卒業したということが独学できるということ。ということは学校の仕事は独学できるように学び方を教えるということだ。
    一緒に景色を楽しんでくれる運転手さんの存在。これはうれしい。自分の論理を振り回すことより,相手の目線で楽しむことができる人。こういう人になりたい。
    自分の親が実の親でないことがわかった時,「わがまま言ってすまなかった。」と思えるみどり鮨の店主。一度そのひと味ちがうという鮨を食べてみたい。
    誰に叱られてもよいと思うことをやる。
    「漁師の人が命がけで獲ってきてくれた魚だから。」と調理する三浦光世さんもすてきだ。

  • 中学時代から三浦綾子さんの小説は読み漁ってきたが、これはコラムか何かで書いたものをまとめたもの。よって短編なので読みやすいのだけれど心にずしりとくる話が多い。かなり昔に書かれたものなのだけれど全く色褪せていない。小説は人間関係がどろどろで宗教色が強いので敬遠する人も多いかもしれないけれどこれはオススメ☆

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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