- Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041437179
作品紹介・あらすじ
「わだしは小説を書くことが、あんなにおっかないことだとは思ってもみなかった。あの多喜二が小説書いて殺されるなんて…」明治初頭、十七歳で結婚。小樽湾の岸壁に立つ小さなパン屋を営み、病弱の夫を支え、六人の子を育てた母セキ。貧しくとも明るかった小林家に暗い影がさしたのは、次男多喜二の反戦小説『蟹工船』が大きな評判になってからだ。大らかな心で、多喜二の「理想」を見守り、人を信じ、愛し、懸命に生き抜いたセキの、波乱に富んだ一生を描き切った、感動の長編小説。三浦文学の集大成。
母 (角川文庫)の感想・レビュー・書評
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「蟹工船」を書いた小林多喜二が
こんなにも素直で、底なしに優しく、バカがつくほどの真面目であったのかと
そこに驚かずには居られなかった。
そしてこの多喜二を育てた母の天性のおおらかさ、
苦労を重ねてきながら少しもいじけたり、ひねくれたりしていない
明るく穏やかで情け深いその性質に
「ああ、こんな人間がいるのか、こんな家族があるのか」と
深く感じ入ったのである。
私にとってはこの小説のメインは
未洗礼だろうが、キリストを知らなかろうが、
貧しかろうが、学がなかろうが
美しく優しい、正直な心を持った人間がいた、という部分にある。
そしてその人間が営んだ家庭だからこそ、
経済的には豊かになれなくとも、こころは世界で一番豊かで、
おもいやりに満ちた美しい家族が育まれたのであろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自身の誕生日にこの作品を読み終えたことがとても感慨深いです。
物語の語り手やその時代に生きた人々の『苦』を想像すれば自分の人生で感じた悩みや苦労の小ささを知ることができ、彼らの『苦』の万分の一をも満たしていないことを思い、胸中の受け皿がよりいっそう大きくなったことを実感しています。
本当の『強さ』『やさしさ』『幸せ』について、もう一度零から見つめる決意を固めました。
一文だけ引用させていただきます。
「誰だって、隣の人とは仲よくつき合っていきたいんだよね。うまいぼた餅つくったら、つい近所に配りたくなるもんね。むずかしいことはわからんども、それが人間だとわだしは思う」
この中の『つい』が今までの、そしてこれからの自分の心の中に[在る]ことを信じて -
「蟹工船」の作者、小林多喜二の母が語る物語。
三浦綾子さんが参考文献と取材で仕上げた一冊ですが、なんだかリアリティーが迫る。
本当、こんな感じだったんだろうなー。と。
小中学生の頃「お勧め図書」的に、いろんな文学とかと共に紹介される中にもあったはず「蟹工船」。
もう少し年が経ってから読んだはず。
例えば
誘拐され、奴隷船の中で働かされる奴隷。
徴収され、軍隊の中でいたぶられる兵隊。
戦争中、収容所で苦しめられる捕虜・国民。
親に売られ、奉公や女郎屋で苦しむ子供。
そういう本は限りなく有る。
時代も場所も作者もどれも同じではなく。
こんな事実があった。そういっている気がする。
世界は奪い合いで満ちている?
自分自身は共産党でもキリスト教でもありませんが…
本を読む事はいろんな事を考えさせてくれる。
このページを開いた時に自分が感じた事を
他の読者も感じているだろうかとか。
こういう本達が読める時代が続けば良いなとか。
そういう事を考えてしまいます。 -
小林多喜二の母・セキさんが生涯を語り聞かせる形を取った物語。
高齢の方が語って聞かせる昔話というのは、文章で読んでも、ゆったりと、しみじみと、染み込まれていくように感じるものなのだろうか。
文中でも語られているが、話が前後したり、同じことを繰り返したりというのはある。物語ならば読みにくいと感じるところだが、おばあちゃんが語る話ということで、すんなりと受け入れられた。
小林多喜二についての予備知識は何もなかったのだが、読み進めるごとに、こんな明るくマジメで、家族思いの人だったのかと知って、胸が温かくなった。
そんな息子が、あんな惨い死に方をするなんて。
セキさんがたびたび嘆き、白黒つけてほしいと願った気持ちを思うと、たまらなくなる。
あらためて、蟹工船など、小林多喜二の本を読みたくなった。 -
小林 多喜二の母の物語。
母の愛、無償の愛に感動しました。
小林 多喜二などの人物、時代背景などの予備知識無しでも
読み進めることができるのでお勧めです。 -
かの『蟹工船』作者、小林多喜二氏の母の物語。
とにかく純粋かつ真っすぐ、そして計り知れないほどの愛が伝わってくる小説です。この本を読んだ後に『蟹工船』を読んでみても良いのかも。
この本を読んだのは高校生の頃でしたが、母・セキさんによるおばあちゃん口調で進められるので非常に読みやすく、感情が入りやすくなっています。 -
獄中で非業の死をとげた小林多喜二の母セキが自身の生涯を聞かれ、その中で家族や社会、貧しさゆえの苦悩、心のあり方を優しげな方言で実に素直に語る物語だ。小賢しい教育からは生まれない、素の感じ方には刺激される。
多喜二さんが繰り返す「世の中に貧しい人がいなくなって、みんな明るく楽しく生きられる世の中にしたい」 という言葉を同じように願う母。貧しく余裕のない生活でも笑いや歌が常にある家庭を営み、貧しさを恨むよりは、その中でさえより困った人に手を貸そうとする無類の強さ。売られた娘タミちゃんを引き取り、息子の嫁に……と考えられる本物の人格者。
キリスト教徒には、多喜二の活動と死がキリストのそれに薄く重なる部分もあり、特別の思いとして読めるかもしれない。小説ではあるけれど、登場する人々がそれぞれに美しい気性を見せる。良き人の周りには、また良き人が集まるということか……。 -
なんにもできんでも、そばにいてやりたかった。
この一文が母のこころをめいっぱい表していたと思う。
切なぁ -
読み終わって一言。しんどい。とにかくしんどい。
読んでいてこれ程までに胸を締め付けられるような小説がこれまであっただろうか? そう自問する。
読めば読む程、(殺されていい人なんていやしないのだけども)この人程、こんな死に方をしてはいけない人はいないだろうに、そう思って苦しくなる。
こんなに優しい人が、こんなに家族想いの人が、どうしてあんなに酷い死に方をしなければいけなかったのか。そればかりが頭の中でぐるぐると回った。
作中でお母さんも口にした疑問。小林多喜二はあんな目に遭わなければいけないような極悪人だったのか。そんなわけがない。元からそう思ってはいたが、この小説を読んでますますその思いが強くなった。
人一倍優しくて、誠実で、真面目な普通の人だ。
今ならば誰に咎められることもないような、当たり前のことを当たり前に言って、殺されるなんて。そんなことがあっていい筈がないのに。
ただただ悲しくて、それだけがぐるぐると胸の内に渦巻いているような、そんな感覚。
会ったこともない、それどころか私が生まれるずっと前に亡くなった小説家に、随分と惚れ込んだものだな、と自分でも不思議な気持ちになる。
知れば知る程、彼の小説を読めば読む程、彼が遺した作品は勿論のこと、彼自身もどんどん好きになっていくのだから本当に不思議なものだ。
それ程長くはないとはいえ、最初から終わりまでほぼ一気に読み切った。頁をめくる手を止められなかった。文字を追うのをやめられなかった。悲しい最期は知っているのに。
いつも以上に何もまとまらないけれどこれ以上書こうとしても悲しいとか辛いとかそんなことしか書けない気がするのでこのあたりでやめにしましょう。また読んだ時に、もう少し整理して何か書けたらいいと思う。
何度読んでも同じことになりそうではあるけども。
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