銃口 下 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.04
  • (14)
  • (20)
  • (10)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 167
感想 : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041437261

作品紹介・あらすじ

昭和16年、北森竜太は治安維持法違反の容疑で、7カ月も勾留、釈放されたものの退職させられ、追い打ちをかけて召集される。苛酷な軍隊生活で身も心も衰退した20年8月15日、満州から朝鮮への敗走中に、民兵に銃口を突きつけられた-。純粋な心根の青年教師が戦争に翻弄されていく悲劇。かつて北森家で命を助けられた朝鮮人労働者金俊明の運命。軍旗はためく昭和を背景に戦争と人間の姿を描いた感動の名作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 大正天皇の御大葬から昭和天皇の御大葬まで、昭和史のような時代を背景に生い立ち、教師として生きていく主人公「北森竜太」を描く。

    裕福な家庭に生まれた素直な少年の彼が、小学校時の受け持ちの先生の影響を受けて教師となる。

    天皇のご真影を拝する学校教育に何の疑問も感じず、その時代のごく普通の教師であった。

    しかし、情熱を持ってした綴り方指導が言論統制の当局の目にとまってしまった。

    治安維持法で勾留され、教師をやめさせられ、教師なら免除になって逃れていた軍隊への召集もかけられ戦争に参加しなければならず、さまざまな苦難を味わうことになるのである。

    ストーリーは太平洋戦争のあとさきに限られており、戦後の教師はどうだったかというテーマもあれば昭和をたどったことになろうが、そこまでは筆が及ばなかったようである。

    だから教師の昭和史と言うより、国策により権力を持った憲兵が、自分の保身のためどんな風に悪知恵を働かせ罪を作って個人にかぶせ翻弄させられるか、さすが三浦綾子さんの筆運び、迫真に描かれてあり、読後すごく怒りを覚えさせられた。

    思えば状況は今も同じようである。
    実際検事局が状況証拠を捏造したりするのをまのあたりにしたのだもの、油断ならない、怖ろしい。

  • 主人公が置かれた戦時中の描写がショッキングだった。どんなに苦しくても善を自問し生き抜いた主人公から生きるヒントを貰えた気がする。

  • 日本の悲しい歴史。

    あたたかい人に出会えた竜太。民族は関係なく人であると言った父

  • 近堂上等兵のように生きたい。

  • 小説「銃口」は、小学館「本の窓」誌1990年1月号から1993年8月号まで37回にわたって連載された。取材を開始した時期から数えると4年の歳月を要したことになる。非常に長い小説を書き終えたという思いと共に、なぜか本当に終わったという気がしない。
    当初、編集者の真杉章氏から「昭和を背景に神と人間を書いて欲しい」との新連載のテーマを提示されたのであるが、昭和の年代全般に亘ることは到底できなかった。戦時を重点に、最後は昭和天皇大葬の日をもって形を整えるにとどまった。やはりもっと書かねばならなかったという思いが残る。(412P)

    三浦綾子は「あとがき」でそう述べている。どんなに手を尽くした看病をして親族が亡くなってもあとには後悔が必ず残るように、我が子同然の作品を書き終えた直後には、書き切らなかったことが見えて仕方ないのだろう。しかし、それはまさに仕方ないことである。

    私は当初「綴方教育に情熱を注いでいた教師が、不当に治安維持法で逮捕されて、不屈に頑張る話」だと勝手にこの長編小説の内容を予想していた。ところが、下巻に至ると物語は予想外に満州戦線での話に移る。

    上巻でも下巻でも、主人公の他に必ず良心的な人間(ほとんどはキリスト信者ではない)が登場する。主人公はむしろ彼らに学びながら成長する物語の語り手のような存在であった。

    戦争という「人類の最大の罪」とも言うような事態の中で、本来「善き者」「であるべき」人間の取る行動は、どのようなものだったのか。政治の動く中枢から遠く離れた旭川と満州が舞台の、普通の人間たちの物語である。

    普通の人間たちの様々な「選択」が、ここに描かれている。
    「どうしたらよいかまよった時は、自分の損になる方を選ぶとよい」
    そのように云う坂部先生は、一つの理想像である。理想像は非業の死を遂げる。

    もっとも象徴的なエピソードは、帰還の汽車を待つときに出会った焼け出された子どもと竜太の話だろう。貴重なおにぎりを分け合うべきか竜太は躊躇する。あれをどう取るか、でこの小説の感想は様々に分岐するだろう。
    2015年3月27日読了

  • 国のかたちはその時代の法律で簡単に変わってしまって、思想や生き方が国家に不都合という理由だけで投獄され、拷問を受ける。その失意も醒めないうちに戦争に駆り出され、さらに理不尽な世界を目の当たりにする。

    それはほんの70年前、この国で起きていたこと。何を大切に生きるべきか。辛い体験と、尊敬すべき人たちとの交流を通して、小学校教師の若者がたどり着いた結論。それこそが、悲惨な戦争でこの国が学んだ教訓だったのではないか。忘れてはいけないことがある。

  • 人間、とっさの言動がその人間の真価

  • 上巻に記載

  • 治安維持法違反の容疑で勾留された竜太。釈放されても辛い日々が続く。芳子とやっと結婚できるという時に、戦争に召集される。過酷な軍隊生活。

  • 旭川などを舞台とした作品です。

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1922年北海道旭川市生まれ。小学校教師、13年にわたる闘病生活、恋人との死別を経て、1959年三浦光世と結婚し、翌々年に雑貨店を開く。1964年小説『氷点』の入選で作家デビュー。約35年の作家生活で84にものぼる単著作品を生む。人の内面に深く切り込みながらそれでいて地域風土に根ざした情景描写を得意とし〝春を待つ〟北国の厳しくも美しい自然を謳い上げた。1999年、77歳で逝去。

「2021年 『残像 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三浦綾子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×