九月の空 (角川文庫)

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感想 : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041458020

感想・レビュー・書評

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  • 剣道に打ち込む勇の青春小説。ものすごく真っ直ぐな勇は相手が先輩であろうと不良であろうと美少女であろうと母親がスナックママの醜男であろうと水商売の女であろうと対等に接する。こんな子誰だって惹かれちゃうね。続かないのかな。読みたい。

  • 親父から譲り受けたシリーズ。青春を感じるが、どこか感情移入できず。ただし、剣道の試合・稽古の際の研ぎ澄まされた感覚の描写は素晴らしい。

  • 「五月の傾斜」
    高校の剣道部員である主人公は
    ストイックな個人主義者を気取っていて
    上級生を優先する部のなあなあ体質に不満をぶつけるも
    一方には、悪い仲間とのつきあいがあり
    痴漢へのリンチに参加したりする

    「九月の空」
    ガールフレンドは主人公のことを
    「ずるい人」だと思っていたらしい
    よくわからないけどたぶん、隠れて不良をやってるとか
    そういう意味だろう
    しかし剣道に真剣な彼を間近に見て
    認識をあらためる
    芥川賞の受賞作品だけど
    「五月の傾斜」を読んでなければ、ややわかりづらいか

    「二月の行方」
    ガールフレンドからわけのわからないことを言われたせいか
    主人公の剣に乱れが生じる
    何か変に身構えてしまって、真っ直ぐ打ち込んでいけない
    あげくには先輩から「やくざ剣法」と言われてしまう
    他者の底知れなさを前に委縮してるのか
    それはつまり、未知の物語に圧倒されているということである
    剣道場でそんなこと気にしても仕方ないんだけど
    …しかしそういうスランプの時期にあって
    家の貧乏な彼は、新たにアルバイトを始めるのだった
    クラスメートの虚弱児に紹介されたアメリカ兵向けの酒場で
    ボーイをやるのである
    彼はそこで、虚弱児の意外な素顔に触れる
    そんなことから
    他者への理解に対する、一種の諦念を獲得していく

  • とにかく細かい表現の使いが、読んでいて面白かった。ストーリーも、剣道をやっていた事があるのでらより一層楽しめたし、なんとも言えない主人公とあの子の距離が良かった。最後の方はもうちょっと詳しく知りたかったなーって思ったけど、いろんな登場人物が出てきてそれぞれの視点からもみれたし、ずっとこの先どうなるのかなって、うずうずしていた。親子のなんとも言えない、寂しいようななんというか、母親との思い出なども印象的でした。

  • 十年以上前以来の再読。暴力的な衝動を生来から内在させている高校一年の主人公の、剣道に明け暮れる学生生活が描かれた短編集。表題作は芥川賞を受賞している。

    まず、主人公、勇のストイックさがいい。ちょっとウブでとてつもなく硬派な剣道バカなんだけど、青春小説特有の爽やかさはない、っていうのが、人物の造詣として非常にツボ。剣道に心身ともに没入しながらも、煩悩を断ち切れきれていないハンパさも、青少年って感じが出ている。
    次、描写が綺麗。とてつもなく異化がうまい。『味のない寒天を食わされた思い』とか『頭の芯に何千もの針が突き刺さってくるような静けさ』とか『神経だけが琴の弦のように一本の線となって◯の中央で張りつめていた』とか、いちいち出てくる比喩がクール。それでいて嫌味がない。かっこいいの一言に尽きる。
    とどめ、芥川賞作品なのに筋書きがちゃんと面白い。芥川賞作品って、芸術性を重んじすぎてあらすじがわかりにくくなっている作品が多いんだけど、この作品はそんなことがない。テーマはおそらく、青春期特有の暴力衝動とストイズム。全編においてそれらがちゃんと、作品の背骨として機能している。それでいて話の起伏、起承転結の筋道が成立してるから読みやすい。こりゃ取れますわ。

    いい刺激をもらった。

  • ある模擬試験の小説問題で、この作品が使用されていた。主人公の勇が、年功序列で大会出場が決まった3年生の先輩に、大会出場を辞退してほしいと頼む場面。理由は勿論、「試合を、剣道を、思い出にされたくないから」、そして「自分が出場したいから」だ。

    真っ直ぐで強い、清々しいまでに青い高校生男子の姿に思わず読み惚れた。純粋に、続きが知りたいと思った。こういう形の出会いは、昔から割と好きだ。

    初めて読んだときは気がつかなかったけれど、本を取り寄せて改めて出版年を確認してみると、初版が昭和54年、だいぶ古い本だったということが分かった。私が生まれるより前だ。確かに、場面の抜き出しを読んでいただけでは分からなかったが、通して全体を読み始めてみると、今の高校生とはかなり雰囲気が違うというか、むしろ現代の感覚では大学生に近い趣のある描写だった。単純に、今の方が幼稚化が進んでいるのかもしれない。今の高校生では、この、独りで決めてぐいぐい進んでいく感じとか、暮らしのために働く感覚とか、もっとライトで薄いものなのではないだろうか。

    剣道に臨む場面は、どこも緊迫感と清涼感があって、良い。少々物足りなく思うシーンも何回かあったが、一気に華々しく駆け上がらない点が、当時としてはリアルで面白い生々しさだったようにも思う。

    総じて、派手に何かが動くということはなく、淡々と日々が進んでいく感じで、たぶん、イマドキのエンターテイナーな作家さんならもっと分かりやすくドラマを盛り込んでしまうのかもしれない。登場人物の性格や考え方も、掴めるようで掴みきれず、なぜそんな判断を下したのか共感出来ない流れも多い。じゃあ何が価値なのかといったら、だからこそ伝わる当時の生活感というかリズムのようなもので、今とはちょっと違う、でもどこか共通する胸の疼きを抱えた、男子高校生の青春の姿とでも言えるだろうか。男尊女卑めいた描写がやや気になるが、時代によるものだろう。気にせずともよい。

  • 少し前、剣道のことを知らなければいけないことがあって購入したまま放置していた本です。
    その後、別に剣道のことを知る必要はなくなったんだけど、読んでみたら実は芥川賞受賞作だったらしいことが判明。でもまあ、なんか思いっきりエンタメ系だった。

    ただ、それぞれ別々の作品を無理やりくっつけて長編にしてるので、特に到着地点がないまま終わってしまって、アレ結局何がしたかったの?とあいまいな気持ちになりました。

    あと、何事もなかったかのように作者の父親が解説文を書いているところも良く分からなかった。

  • 1978年上半期芥川賞受賞作。36年も前の作品とはいえ、当時の芥川賞の選考委員達が、この小説のどこに新しさを感じ、また小説の新たな可能性を見ていたのかわからない。難解であればいいというものではないが、それにしても実に平明だ。主人公の勇は硬派の剣道少年。これに対置されているのが高校生にして性的経験を積んだ軟派の秋間。また、女子校に通うグラマラスで積極的な片桐と、幼さの残る松山。キスシーンも、なんだか唐突で不自然だ。見方を変えれば、万事がそんな風にぎくしゃくしていることこそが、まさにリアルなのかもしれないが。

  • 風景描写が秀逸。1ページ読むのに、ところどころ滞り相当の時間を要した。ただ、三部作のどれもこれも青春。三作目はかなりダレた。表題作はまことに見事なのだが。

  • 高校剣道部のお話。五月、九月、二月の三部構成。最初に読んだのが高校生のときだったので、「世の高校生はこんなに刺激的な部活ライフを送っているのか!!うちらと違う。うちら田舎だからか!?」と衝撃を受けた。でもさっき、ざっと目を通したら、児童書のカテゴリーとも言えそうな・・・

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著者プロフィール

1948年1月5日、大阪府で作家・高野三郎の長男として生まれる。2歳より東京杉並で育ち、サンフランシスコ州立大学創作科、早稲田大学第一文学部を中退。テレビ局員、ホテルマンを経てスポーツ紙記者在職中の74年『退屈しのぎ』で第17回群像新人文学賞を受賞。以後、作家に専念。78年『九月の空』で第79回芥川賞を受賞。
主な作品に『葡萄畑』『怒れど犬』『天使を誘惑』『坂道を越えた国』『猫はときどき旅に出る』など。エッセイ『こんな女と暮らしてみたい』はミリオンセラー、『真夜中のボクサー』を映画化、脚本、監督を務める。『Dr.タイフーン』『セニョールパ』といった劇画の原作も多数手がけ、近年は、時代小説に新境地をひらいていた。近作には、『さすらいの皇帝ペンギン』(集英社)、『作家がガンになって試みたこと』(岩波書店)、『悔いなく生きる男の流儀』(コスミック出版)がある。2021年8月17日逝去。
2021年11月13日、未刊の最後のエッセイ集『人間の懊悩』(青志社)刊行。

「2022年 『枳殻家の末娘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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