高校時代 (角川文庫 緑 478ー1)

著者 :
  • KADOKAWA
3.22
  • (3)
  • (1)
  • (12)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 69
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041478011

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1978年4月から1979年3月まで、旺文社の大学受験雑誌『蛍雪時代』に連載された三田誠広氏の自伝的小説。
    三田氏自身を投影させた真(マコト)が、1964年に高校入学するところから、翌年の秋の運動会に高校を辞めるところまでが描かれています。
    安保闘争が盛り上がり始める時代を描いているので、中盤過ぎくらいまでは、熱い内容になっています。
    真が、初めてのデモ参加で、自分の無力さを感じてからの終盤は、内省的な内容になります。
    この熱さも暗さも、両方とも自分の好みで、最初から最後まで興味深く読みました。

    それにしても、『蛍雪時代』は高校三年生が読者であるはずなのに、主人公が高校三年生ではない、いやそもそも、読者が受験生なのに主人公がドロップアウト。かなり挑戦的な内容ですね。
    しかし、ベルトコンベアに乗せられたような人生を始める前に、ちゃんと自分のことを考えなさい、という三田氏からのメッセージであれば、逆に受験生が読むに相応しい内容だと言えます。

  • この作品の舞台になっているO高校は三田氏の母校であり、私の母校でもある。出席番号が女子が先とか、定時制があるから17:30完全下校とか懐かしい…。本作は決して楽しい話ではない。三田氏の私小説である。高校生という社会とも世間ともうまく馴染めない微妙なお年頃を丁寧に描き出した作品。2011/311

  •  記憶というものは、消えていくのではなく、
     心の奥底にしまい込んでいるものなのかもしれない。
     ふとしたことが鍵となり、しまい込んでいた箱が開けられ、記憶が蘇る。
     
     折りたたんだ皺くちゃの紙を広げながら、
     色あせた記憶の中に時折鮮やかに浮かび上がる懐かしい記憶。
     すっかり忘れていたはずのあんな光景、あんな気持ち。


     この作者の本を確か持っていたはず、と実家の本棚から取り出したのはごく薄い一冊。
     表紙の絵には記憶があるが、その内容はまたしてもまったく覚えがない。
     たくさんの本を乱読していた数十年前。そんな頃の一冊。


    舞台となっているのは、ちょうど自分が生まれた頃。
    学生運動の話題が別世界の印象を与える。

    が、読み進むうちに、何かがほぐれていく。
    進学のための勉強。熱心だったとは言えない部活動。
    若さが抱える不満と憧れ。
    自分は何がしたいのか、何になれるのか。

    異なる時代の若者の悩みに、自分の過去を重ね合わせる。



    あの頃の自分がどんな思いを持ってこの作品を読み終えたのかはわからない。
    続けてこの作者の作品を読んでいない所を思えば、不満だったのかもしれない。
    物語としての期待と違ったのか。主人公の中途半端な決断を肯定できなかったのか。

    今、記憶の箱を開ける鍵として、再び出会ったこの作者の作品を、
    今度はもう少し読んでみようと思う。

    「蛍雪時代」のずっしりとした重みを思い出した。
     

  • 進学校に進んで、社会に対して疑問を持ち始めた主人公は、疑問の根源的な問題は自分の進むべき道であることに気付く。っていう高校生らしからぬ姿が描かれた私小説。

  • 読んでいると知識欲が沸いてくる。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

(みた・まさひろ)小説家、武蔵野大学名誉教授。1948年生まれ。1977年、「僕って何」で芥川賞受賞。主な作品に、『いちご同盟』、『釈迦と維摩 小説維摩経』『桓武天皇 平安の覇王』、『空海』、『日蓮』、『[新釈]罪と罰 スヴィドリガイロフの死』、『[新釈]白痴 書かれざる物語』、『[新釈]悪霊 神の姿をした人』、『親鸞』、『尼将軍』、『天海』などがある。日本文藝家協会副理事長、日本文藝著作権センター事務局長も務める。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三田誠広の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×