僕って何 (角川文庫)

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著者 : 三田誠広
  • 角川書店 (1988年5月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (169ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041478059

僕って何 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 山田に誘われなんとなくセクトに関わり、北川委員長に憧れ、レイ子に翻弄され、海老原にオルグされて別の組織に移行、その中の黒メガネの男に影響され組織自体に疑問を抱く…。

    自分の意思で選びとっているようにみえて、実はそれは他人の影響。周囲の人間やその時の状況に流され、ふらふらしていく主人公。そんな姿こそ、僕って何。

  • 「自分自身でものを考えるということは、人間関係以上に大切なことだとは思わないか。自分の思想を貫くためには、親や兄弟とだって対立することもある」

  • 40年近く前の作品で、たぶん描いている世界はさらにさかのぼった1970年前後あたりじゃないかと思う。大学入学を機に地方から出てきた「僕」の数か月。学生運動に巻き込まれたり、先輩の女子とねんごろになったり、学生運動に入れ込む男子大学生たちとのつき合いの日々。
    これを読むと、大学生なんてまだ子ども。理想を熱く語ったり理想に盲目的だったり。それでいて、どこか地に足が着いていなさそうだったり。たぶん時代の空気がそういう感じだったこともあるんだろうな。今の大学生に比べればずっと大人なんだけど。
    「僕」は東京生活が始まろうとするとき、一緒に来てくれた母親が炊飯器や台所道具をそろえようとするのに憤慨し、入学式に出ようとしていた母親を追い立てて故郷へ帰してしまう。それが、学生運動に巻き込まれたり、彼女と同棲したりすることで何となく人生勉強をして、最後には妙に仲良くなった母親と彼女と食卓を囲み、3人でアパートで眠る。そして、自分は彼女たちにとって「男」なんだろうか「子供」なんだろうかなんて考えてみたりする。大人になるって、人の振る舞いを許せるようになるとでもいうか、取るに足らない自分を自覚するというか、こういうことなんだと思う。
    今となってはわりと普通な、いやむしろ考えているほうじゃないのって感じの「僕」で、同じような小説も多々ありそうな気がするんだけど、発表当時は芥川賞をとるなど衝撃作だったみたい。それは一人称が「僕」ってところに象徴されているように思うんだよね。インテリなら「私」、意気がり無頼きどりなら「おれ」とかだったのが、「僕」を用いて等身大の男子像を見せたという点で。『赤頭巾ちゃん気をつけて』を継いで「草食文学」の地歩を固めた記念碑的作品といったところかな。

  • 1977年上半期芥川賞受賞作。タイトルは、何というナイーヴでプリミティフな問いかけだろう。これでは、思春期前期の問いではないか。読む前は、このタイトルからノンポリ学生の傍観者的な手記のようなものを想像していた。小説の冒頭はそんな風に始まるが、それ以降はなかなかに緊迫感に満ちた展開だ。あくまでもフィクションだが、読者もまた早稲田闘争の渦中にいるかのごとき臨場感に包まれる。たしかに甘いのだが(恋を絡めるからよけいに)「僕」の抱える煩悶は時代の抱えた状況をよく伝えている。ただし、エンディングは再びの幼児退行だ。

  • ふとした流れでB派に入り学生運動を始めることになってしまった「僕」。そこで出会った部長のレイ子と恋仲になるが、B派からの脱退と全共闘への参加を海老原に持ちかけられたときに、B派へ入ることが自分の本意ではなかったと気付き、自分の意志を持って(或いは意志を持ったと思い込んで)B派からの離脱、そしてレイ子との別れを決意。だがしかし、その後も異なるセクトを転々と漂流することとなり、心身共に疲弊した「僕」は、あの疎ましかったハズの母と、そんな母といつの間にか親しげに話すレイ子のいる自分のアパートに戻る。
    主体性の無い、でも個人として自立した考えを持ちたいという思っている大学生が、周りの学生の意見に流されて異なる派閥の間をフラフラ漂流する話。今の中年サラリーマンの原型がここにあるのではないか、というのは個人的な勝手な想像。
    果たして純粋に自分の意志で生きていくことは可能なのだろうか?折しも自民党の新憲法草案では「個人」という言葉が「人」に置き換わっているらしい。組織に入れば嫌でも人間関係がまとわりつく。自分の意志なんてものは所詮幻想に過ぎないのか、それでも尚それを求めるべきなのだろうか。個人的には最大限自分の意志を持ちたいと思う。というか、自分自身の意志だと後から意味付けすることで、自分の意志になるのではないか、と思う。様々な要因が一つの結果を招くわけで、その一要素に過ぎない意志なんてものは所詮後付けに過ぎないのではないか。
    恐らくほとんどの人には、自分の意志で世界を切り開きたいという欲望があるはず。この小説で描かれるのは、その欲望と、そうはならない現実でもがく一人の若者の姿なのだ。

  • 国語便覧を眺めていて、芥川賞受賞作を読んでみようと思い立ち、図書館で借りた

    『ノルウェイの森』の最期を読んだときと、同じ感覚だ
    どこにいるのかわからない、どこに向かうのかわからない自分
    私って何

  •  軟弱な大学生、今で言えば「ぼっち」あるいは「非リア」が主人公の小説。読みやすくて面白かった。芥川賞を取るにはやや平凡な感は否めないが、それは時代背景というものだろうか。

     学生運動に携わりつつも、当の主人公には社会的な思想は特に無い。受動的に生きつつも能動性の獲得を目指す。そこがいい。

     不満点。コンドームを買いに行くときの心理などは、もう少し丹念に描写して欲しかったなと思った。初体験も時間が飛んだ間に済ませてしまっていて物足りない思いをした。あんまりそこに焦点当て過ぎるると半ばポルノと化してしまうかもしれないけれど、ある程度は描いて欲しい部分だった。

     しかし随分あっさりした終幕だったように感じた。えっここで終わり、というような。

  • 77年の芥川賞受賞作。
    かなり気に入った!
    地方から上京してなんとなく大学生活を送る青年が成り行きで学生運動のセクトに関わるようになり、常に冷ややかな目で周りを見つつもそこに居場所を見出す。
    上手く恋愛要素を絡めながらユーモアを交えて揺れる青年期を描いた傑作。

  • 読むのに体力が必要。
    大学紛争時代の青年の話し。
    周りに流されなんとなく過ぎ女に振り回され。
    誰もが経験するような、怠慢や疑問にあふれる年頃。

    大学紛争そのものを想像し難く、感情移入ができず、
    薄手なのに読破するのに一週間近くかかってしまった。

  • 最近の安穏とした学生生活から振り返ると、学生運動はこんなに激しかったのか、とびっくりする(今までも村上龍『69』とかは読んだことあるけど、こんな風に描写されてたかな?)。
    主人公の主体性のなさは確かに最近の小説に通じる部分もある。当時の感覚からすると新しかったのかな。
    ただ最近の小説はすっかりこういう政治的な題材とかは扱わなくなっていると感じる、というよりやっぱり学生運動とかマルキシズムとかがあったころは、今と全然空気も違ったんだろうか。

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