・十津川が出てこないけど、練りに練られた短編ミステリ小説集
昭和40年前後に発表された小説たち(あとがきの編集部注による)なので現代人なこの書評を読んでいる方々には実際には読みにくいこともあるし、西村京太郎作品なのに十津川が出てこないことはそれだけでマイナスなのかもしれない。
ただ、僕はそうは思わない。なぜなら、西村氏はもともとハードボイルド小説が得意で、江戸川乱歩賞を受賞した「天使の傷痕」も十津川は出てこない。
今昔で作品のスタイルがかなり違うことも、西村氏を精読するうえでは押さえておきたいポイントである。
〇失踪計画
自分のうだつの上がらなさと昇進させない課長へのいら立ちが募っている「おれ」は、同僚の木村が金庫の金を盗み失踪したと見せかけることを企てた。実際には成功したように見えたが…推理が冴える刑事が起こす行動は。
〇くたばれ草加次郎
模範囚として出所した吉田は仲間を集め、草加次郎の名を借り、仲間を募りつつある事務所から金を盗んだ…と思いきや。さすが有名な草加次郎、というところか。
〇裏切りの果て
出世を望む吉田は、人事の中沢部長から言いつけられた場所を向かうと、同僚の振動を罠にはめろという。まんまと罠にはめることはできたか?そして吉田の昇進は。
〇うらなり出世譚
晋吉は生まれてからも体が弱く出兵もできないほどであった。そんな新吉は敗戦後気になる人ができて…?
〇夜にうごめく
接収される直前の「どぶ鼠横丁」に入り込んだ青木。そこで死体を見つけてしまうが気づくと無くなっていて、誰も信じてくれない。調査に入る青木が見たものは。
※個人的にはこれが一番面白かった。そんな突拍子もないことって、現代社会にはもうないよね。
〇第六太平丸の殺人
航行する第六太平丸に入電したのは「殺人犯がいる」。船長と無線士と4人の乗組員、いったい誰が犯人か。
〇死刑囚
共同弁護をしている渡辺から「お前の抱える古賀弁護士と奥さんとは何か怪しい」と言われ2人の関係を怪しみだし復讐しようとする田中弁護士。しかし殺人犯・荒井の弁護をきっかけにして…
短くとも読み応えのある7編。
ぜひ読者の皆さんに楽しんでほしい!