イヤリング (角川文庫 緑 552-7)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041552070

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  • THE・女という表現がぴったりの短編集。
    夫婦関係の破綻、男と女の愛の脆さが、婚約、結婚、離婚、そして不倫、それぞれの状況で描かれている。

    ミステリ小説じゃないのに、ミステリ小説を読んでいるかのようにハラハラドキドキして、先が気になった。
    隠す女、探る男。立場が逆になったとしても、その駆け引きの怖さは、ミステリに近いものがあるのかもしれない。
    秘め事を秘めたままにしておくのはきっと女のほうが上手だし、それが明かされた時さえも、もしかしたら女の計画によるものなのかも、と考えると女という生き物はとても恐ろしい。

    登場人物の女たちは、わりと恵まれた暮らしをしているパターンが多く、恵まれていて何不自由なく暮らしているからこそ、突然の空虚感に襲われて“ここではないどこか”に手を伸ばすことになる。
    満たされているから、こその落とし穴。
    贅沢な悩みであり贅沢な状況であることは確かだけど、理解は出来る。
    満たされすぎると本当は何が欲しいのか分からなくなる、その感じは。

    美しい文章はさることながら、心理描写というか人と人の駆け引きの描写は凄みさえ感じる。
    ほんの短いやり取りでも、お互いの心の中をあぶり出したら、実際こんな風になるのだと思う。その、関係性によっては。
    ほんとに恐ろしいよ。笑

    しかしながら、すっかり森瑤子ワールドに魅せられました。
    洗練されたカッコイイ女。でありながら、巻き起こる感情に嘘をつかない女。
    これを書いていた森瑤子さんが、妻であり母であり女であった、という事実を思うと、ますます凄みが増す気がする。

  • 田辺聖子が ポジティブとしたら
    森瑶子は ネガティブで 陰気な感じがする。
    ニンゲンの品性が 悪意に満ちているようだ。
    夫婦が たがいに無関心であることが、
    すれ違いの物語をつくり出す。

    イヤリング
    些細な妻のたじろぎと言葉の使い方で
    妻の浮気を見破る夫。しかし、その夫は、
    怒りもせず、ただなじるだけであった。
    なんという不愉快な出来事を不愉快というだけで、
    たがいに 関心を失っていると言える。
    なぜ、妻が そこに落込んだのか?
    ということさえもわからない。

    一等待合室
    シルバーフォックスのコートを着ているだけで
    チケットもなく、国際線の空港でパスできるわけもない。
    見栄を張っているオンナの浅ましさ。
    だいたいファーストクラスのオンナが所帯染みているのが
    痛々しい。普通は 掃除などは、お手伝いさんがやるでしょう。

    指輪
    デザイナーの賞を獲ったら、結婚しようと言う話が
    何となく、結婚がご破算に。なぜ?もよくわからない。
    指輪を海に捨てると言う結論から始まった。

    女たち
    気の合うのか合わないのか、よくわからない女たちが
    集まって、それぞれの弱点を言いあうことで、群れている。
    エマは、なぜ 夫が サクラの髪の形を知っていたのかを
    不思議に思いながら、疑惑に 突き当たる。
    発情した メス猫の集まりのようだ。

    ケアレスウィークエンド
    いつもと同じパターンな妻に、いつもと同じように対応する夫。
    自分に対して頑固なんでしょうね。保守的な生活。
    突然に ストーンと何もかもが 嫌になってしまう。
    妻の好きなバラを買って、ゴミ箱に捨てる夫。
    そんなふうな 暗い気持ちを持て余している。

    不倫の理由
    小説家が 不倫と決めつけて、不倫の物語を
    描いてしまうところに、大きな限界がある。
    手あかに汚れすぎている言葉に、居座っている。
    『今でも あそこのレストランで夕食を食べたい』
    なぜか、薄汚れている。

    蒸発
    妻が子宮を摘出した。
    夫は、何をしたら喜ぶか?ということを、
    妻を中心に考えずに、自分のやりたいことで
    喜ばそうとする。そりゃ。違うだろ。
    咖啡のいれ方を熱心に勉強して、咖啡のコップなど
    高価なものを買い入れる。妻は、喜び様がないだろ。

    別れた妻
    別れた妻は なにかと 別れた夫に
    かまってほしいので、言いよる。
    夫は、再婚したので、もう勝手にしろと言いたいが
    息子は 別れた妻のところにいる。
    仕方がなく、妻に会うが 妻にも愛人がいた。
    互いの 無関心が 悲劇と喜劇を生み出す。

  • 短編集。
    大人の話。
    女の性を卑下しないで道徳観も世間体も持ち込まないで書かれている。
    森瑶子さんだから書ける話だと思うが、バブル期直前、男女雇用機会均等法など男女平等が盛んに言われていた時代だからとも思う。
    (図書館)

  • かなりえぐいといわれる部類に
    入るであろう作品です。
    これは特に彼女の作品の中でも
    セクシュアルな要素を押している作品なので
    人によっては不快感を感じます。
    扱っているのも婚外恋愛ですからね。

    ですが…
    時に魔のさす、という心理の描写は
    まさにそのとおり、と思うことも。
    特にストーンの描写は悦に入りました。
    恋愛でなくても、ふと起きてしまう感覚。

    さまざまの辛苦を味わってこねば
    これらの心理は分からないことでしょう。

  • わたしは、表題作のイヤリングが一番すき。

  • 不倫の恋を暴露したイヤリング…。夫婦関係の破綻、男と女の愛の脆さを、婚約、結婚、離婚というそれぞれの状況の中で鮮やかに描く作品集

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著者プロフィール

森 瑤子(もり ようこ)
1940年11月4日 - 1993年7月6日
静岡県伊東市出身。本名、伊藤雅代。東京藝術大学器楽科入学。広告代理店、コピーライターを経て専業主婦に。1978年、池田満寿夫『エーゲ海に捧ぐ』に刺激されて『情事』を執筆し、第2回すばる文学賞を受賞しデビュー。直木賞、芥川賞の候補に度々ノミネートされるが、1993年に胃がんで逝去。
代表作に『情事』、テレビドラマ化された『デザートはあなた』など。

森瑶子の作品

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