待っている男 (角川文庫)

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  • 角川書店 (1986年5月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784041576038

みんなの感想まとめ

男女にまつわる不思議や恐怖を描いた短編集で、ユーモアとエロスを織り交ぜた物語が展開されます。著者は星新一の後継者とも称され、直木賞や吉川英治文学賞を受賞した実力派です。作品は1984年に発表されたもの...

感想・レビュー・書評

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  • 阿刀田高著『待っている男(角川文庫)』(角川書店)
    1986.6発行

    2025.11.12読了
    ◯待っている男
     男が女を待っている。待っても、待っても、女は一向に現われない。むしろ、来ない方がいい。なぜなら、男の企みが成功すれば女は現われないから・・・・・・。
     これは物語の設定が上手いなと思う。

    ◯朱いドレス
     銀座のクラブで勤める美紗子には瀬川という愛人がいる。ある日、美紗子は住宅街の薄汚い洋裁店で朱色のドレスに一目惚れしまい、思わず購入してしまうのだが、その洋裁店の女主人が自殺した瀬川の妻にそっくりであったことを後から知る。不吉な予感を覚えつつも、その朱色のドレスを着て、クラブに出勤すると・・・・・・。
     現代的な落とし方で意表をつかれた。

    ◯紙の女
     設計課に所属する北村桂介が自宅に戻ってみると、そこには水玉のワンピースの見知らぬ女がいた。その女は、自宅に掛かっている絵の女にそっくりで・・・・・・。
     阿刀田高らしい幻想的で不気味な雰囲気を漂わせる奇妙な味の作品。

    ◯俺と同じ男
     旧友からお前とそっくりな男がいると聞いた山本吾郎は、その男になりすまし、成り行きでその男の妻と肉体関係を持ってしまう。なりすましを白状したところ、なんとその妻から夫の殺人をお願いされて・・・・・・。
     これはラストが簡単に読めてしまった。

    ◯西瓜流し
     世話役の車で会津若松市から新潟へ向かう道中、私は5年前に般若顔の美人に西瓜流しを手伝わされたことを思い出す。それは旧暦のお盆に供物の西瓜を川へ流して供養するというもので、ちょうど今通ってきた道の火の見櫓近くの農家だった。目を奪われる美人であったために懐かしく記憶を語っていると、なんとその世話役はその女を知っているという。今からちょうど5年前、その女の家でとある殺人事件が起こったという・・・・・・。
     西瓜の重量から人間の頭部を想起することが容易いので、気づける人は気づける作品だったかもしれない。私はラストの一文に余韻があって割と好きな作品である。

    ◯鈍色の眼
     山手線でかつての愛人多恵子と出会う。多恵子は高校時代の2年後輩で、マリモの養殖や解剖の標本作りが得意な変わった女だった。彼女には変わった性癖があり・・・・・・。
     解剖の標本作りが得意というのが伏線になっている。

    ◯鳥
     圭子には和雄という愛人がいる。犬や猫を飼うようにせっせと寵愛して心を傾けなければいけない相手ではなく、さりとて金魚や熱帯魚のようになんの反応もない男でもない。ちょうど小鳥のような存在感の男。そんな和雄からむかし鳥になって飛んだことがあると告白され、精神異常を疑う圭子だったが・・・・・・。
     年上の女性の愛人となる若い男のことを「若いツバメ」と言うらしく、そこから着想を得た作品か。阿刀田高らしい奇妙な味わいが残る作品。

    ◯藁人形
     独身時代にさんざん放蕩し尽くした新婚夫婦が国内新婚旅行に出かける。行きの新幹線に乗り込んだところ、誰かが車窓に藁人形の写真を貼りつけて逃げ去ってしまい、新婚夫婦二人は互いに疑心暗鬼になってしまい・・・・・・。
     これは冒頭の導入が俊逸だと思う。

    ◯ありふれた誘拐
     仕事帰りのある日、主人公の西田英雄は、辻占いから「誘拐にご用心」と忠告を受ける。結婚はしているものの子供のいない英雄は、まるで信じなかったのだが、意外なものが誘拐されてしまい・・・・・・。
     まさかの下ネタ落ち。タイトルが意味深で良い。

    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001804479

  • 阿刀田高氏の短編集。単行本は1984年に刊行。

    阿刀田作品らしいブラックユーモアは、それほど強烈ではありません。初出誌、初出時期は不明ですが、エロティックなシーンを描いた作品が多く、幻想味がある作品も目立ちます。
    阿刀田高作品集・エロスと幻想篇、という感じです。


    以下は簡単に各作品の感想を↓

    待っている男
    携帯電話も無い時代、待ち合わせ客が多くいる喫茶店で、読者を待ち合わせ客と設定して、同じく待ち合わせ客として相席になった中年男性から一人語りを聞かされるという叙述スタイルをとった一編。
    男性の過去が語られるこの叙述スタイルに、何かトリックがあるのか、と期待しましたが、そんなことはなく、オチの落差も、阿刀田高作品にしては弱いですかね。

    朱いドレス
    妻のいる男と不倫関係のホステスが、何かに導かれるように訪れた不思議な雰囲気の洋品店で、朱いドレスを購入する物語。
    不倫関係相手の妻が自殺したと聞かされ、その妻と洋品店の女が瓜二つだったことから、朱いドレスに死んだ妻の恨みがこめられているのではないかと不安になる心理を描いたスリラー。
    阿刀田高作品にしては、結末が明確
    でない、不思議な雰囲気のまま終わります。

    紙の女
    精密機器会社の設計課の社員が主人公。ある晩、酔っぱらって自宅の団地に帰ると、自室に妻ではない見知らぬ美女がいて、という話。
    『ウルトラセブン』の「あなたはだぁれ?」と導入部はほぼ同じ。
    翌日、男が帰宅すると、昨日は実家に帰っていた妻が友だちからもらったという、絵を飾っていて、絵に描かれた女が昨夜の女にそっくりで、という展開。
    平面図から物を立体的に見ることに優れた男と、平面に描かれた女との、平面を超えて立体、更には時間も超えた不思議な展開が待っています。

    俺と同じ男
    自分と瓜二つの男がいると知った男が、その男を巡る殺人計画に巻き込まれるサスペンス。
    最後に生き残ったのが誰なのか、わからないままなのが、物語に余韻を残します。

    西瓜流し
    会津若松から新潟への山間の道を、クーラーのない自動車で通り過ぎる男が、喉の渇きに耐えかねて立ち寄った民家で、若く美しい女性に、供養のためにと川に西瓜を流してくれと頼まれるという物語。
    5年前の出来事を、同じ道で回想するというちょっと変化球的な構成です。
    のどかな田舎だと思っていたのに、厭な人間関係が浮き出てくる、ブラックでありながら抒情的な一編。

    鈍色の眼
    妻の浮気現場を見て欲情する夫と、浮気現場を見せて燃える妻。
    一度、浮気相手を務めた男が、三年後、未亡人となった女と再会、再び体の関係を持つと、夫は死んだ筈なのになぜか視線を感じて、というエロティックなスリラー。
    一筋縄ではいかない意外な結末を迎えます。


    妻子ある男性と肉体関係を持っている女性が、ふとしたきっかけである若い青年と体の関係を持つ。その青年は、以前、鳥になって空を飛んだという記憶がある、という幻想的な一編。終わり方も幻想的ですが、ややグロテスクさもあります。

    藁の人形
    新婚旅行に出かける夫婦が乗る新幹線の窓に、発車間際に何者かに藁人形の写真が貼られる。
    東京から名古屋までの間、二人共に恨みを抱いていそうな男女関係を思い出す、という内容。
    それだけで特に何も起こらない話ですが、最後にちょっとした奇跡のようなことは起こります。

    ありふれた誘拐
    誘拐にご用心、と占われた男を描いた一編。
    男には妻との間に子供は無いため、誘拐サスペンスとはならず、むしろ半年前に出来た愛人から借金を迫られる、という愛人が出来た喜びと金を無心される苦しみが主に描かれます。
    急な終わりを迎えるラストで、やっとタイトルの意味がわかります。


  • 待っている男
    俺と同じ男
    藁の人形

  • 星新一死後の第一人者的存在って言われてるだけある、待っている男紙の女藁の人形ありふれた誘拐が好きだった。

  • 中学生から20代の頃にかけて、阿刀田高さんの本を読み漁ってました。
    この本もその頃に読んだ一冊。
    今まで読んだ阿刀田高さんの本の中ではこれが一番面白いと思っています。
    何度も何度も読み返してましたが、知人に貸した所そのまま返ってこず・・・。
    今回図書館で借りて久々に手にしました。

    「待っている男」
    誰かを待っている男が、同じように人を待つ男に話しかける。
    その一方的な男の話がそのままこの物語となっている。
    「知っていますか。人は一生に三回だけ真剣に待つことがあるそうですよ。」
    男は自分がこれまでに真剣に待った経験を語り始める・・・。

    待つという事に焦点を合わせた物語。
    待ち人来たらず・・・は幸か不幸か。
    この話は印象的で、はっきりと内容もオチも覚えていました。

    「朱いドレス」
    主人公の女性は友人の新居を訪問した帰り、一度も通った事のない道にふと入り込む。
    すると、もの静かな家並みの中に、ぽつんと寂れた洋品店が。
    その店には不釣り合いな素敵な朱いドレスが飾られており、彼女は目を奪われる。
    出てきた洋品店の貧相な女に値段を聞いたところ、信じられないくらい安い。
    彼女はお買い得で素敵なその朱いドレスを迷わず購入するが・・・。

    これは不気味でゾッとした。
    何が恐いって女主人の様子を後で思い出した時が恐かった。

    「紙の女」
    泥酔して自宅に帰るとそこには見知らぬ女がいた。
    男は女を思わず抱いてしまうが、翌朝目を覚ますと女はいなかった。
    その夜、実家に泊まった妻が持って帰った絵の中の女を見て、彼は「昨夜の女だ」と思う。
    それから1年後、彼はまた幻の女と出会い、衝動的に彼女をナイフで刺し殺してしまう。

    これは本当によく出来たお話です。
    設計師という、立体と平面の橋渡しをする主人公の職業が生きた話。

    「俺と同じ男」
    主人公は自分と不気味なくらいそっくりの男と出会い、その男の後をつけ、男の妻と関係をもってしまう。
    その女は主人公に夫を殺して欲しいと依頼する。

    「西瓜流し」
    講師として訪れた土地で、以前その土地の風習である「西瓜流し」を手伝ったという思い出話を語る主人公。
    それを聞いた地元の男性はかつてこの地で恐ろしい事件があったと話し始める。

    これも衝撃的かつ印象的でずっと記憶にあった。
    西瓜を見る度にこの話を思い出してしまう。
    田舎というと、長閑で人ものんびりしていて・・・という勝手なイメージがあるけど、それはただ通り過ぎていく者の幻想かもしれない。

    「鳥」
    劇団員の男性とスポンサー的男性を天秤にかける女性。
    劇団員の男性は過去に鳥になった記憶があると言う。
    そんな彼が突如姿を消して-。

    これは最後が気持ち悪い。

    「藁の人形」
    新婚旅行に旅立つカップルの座席の窓に藁人形が貼りつけられた。
    貼りつけた犯人は誰なのか、新婚夫婦はお互いを責めるが、実は二人とも心あたりがあった。

    これもオチがいい!
    よく出来た話だと思う。

    「ありふれた誘拐」
    「誘拐にご用心」と辻占いに注意された男。
    しかし、男には子供はいない。
    バカにしながらも何故かその言葉が気がかりな男。
    実は彼には生真面目な妻と魅力的な愛人がいて-。

    途中で、「ははぁ~ん」と読めましたが、これもよく出来た話だと思います。

    今回読み返して、やはり面白かった!
    この本は各タイトルのページに奇妙なイラストが描かれていますが、それも妙に話に合っている。
    奇妙でゾッとする珠玉の短編集です。

  • 短編集ですべて男女におこる不思議や恐怖を描いた作品。
    ユーモアとエロスを中心にして、物語は展開していく。
    直木賞や吉川英治文学賞を受賞し、星新一に続くショートショートの第一人者とされている文豪だが……実は読むのは初めて;

    1984年の作品で、描写にちょっと古さを感じる。
    が、時代がもう少し過ぎてもっと古くなると、逆に気にしなくなるかもしれない。

    切れが良くてかなりブラックですが、新鮮味はあまり感じません。
    それだけ展開が、手本とするべき古典として広まっているということかも。

  • 「待っている男」をドラマでやってて改めて読み直したら面白かった('-'*)短編集?

  • 短編集。ブラックジョークとちょっぴり怖い要素が満載。全9話。

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著者プロフィール

作家
1935年、東京生れ。早稲田大学文学部卒。国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、78年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。79年「来訪者」で日本推理作家協会賞、短編集『ナポレオン狂』で直木賞。95年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞。日本ペンクラブ会長や文化庁文化審議会会長、山梨県立図書館長などを歴任。2018年、文化功労者。

「2019年 『私が作家になった理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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