楽しい古事記 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 759
感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041576236

感想・レビュー・書評

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  • 何度か触れたことのある古事記
    そして毎回「海幸山幸」までは楽しめるが、そのあとがおぼろげにしか記憶がない
    その辺りを復習したいと思い、そうだ!阿刀田氏がいらっしゃるではないか
    彼の親切心とユーモアできっと楽しめるはずと期待し読むことに
    氏のお人柄なのか、相変わらず目線と腰が低く、読者に寄り添ってくださるスタイル(優しいなぁ…)
    相変わらず少しでも難しい話しに流れそうになると
    これは「『楽しい古事記』だから、難しい話しはさておき」と相変わらずでニヤリとしてしまう

    が、結論
    どれだけ阿刀田氏の力量があっても私には面白くない…
    本当は海幸山幸より後ろを中心にレビューするつもりだったが、無理なものは無理!

    せっかくなので復習がてらあらすじを書いちゃうことに(海幸山幸までね)

    やっぱり最初の面白話はイザナギ、イザナミ
    阿刀田氏も「古典はおもしろい部分から入門するのがモットー」とおっしゃる(笑)
    「吾が身の成り余れる処を、汝が身の成り合はぬ処に刺し塞ぎて…」(この表現!凄すぎる…)
    お二人の格調高いセックスにより国づくりが始まる
    そして国づくりの後、さまざまな神を産み始めるのだが、火の神を産んだ時イザナミは下腹の大切な部分(要は陰部)に大火傷を負い、死ぬ
    最愛の妻を失ったイザナギは「火の神、お前のせいだ!」と首を斬り落とす
    (一応自分の子なのに、なかなかの残虐っぷり)
    そして黄泉の国のイザナミに再会するものの
    イザナミが「見ないでちょっと待っててね」…
    待てないイザナギ(あーあ)
    ウジだらけのイザナミの姿を見てしまった
    「よくも醜い姿を見たわね!」キレるイザナミ
    その後はドタバタ劇(悲劇だけどどうも喜劇に感じてしまう)
    黄泉の国を塞ぎ夫婦の契りはお終い
    「1000人ずつ殺すという」イザナミ
    「1500人誕生させるという」イザナギ

    その後、アマテラスが誕生し、弟スサノオが暴れたせいで天の岩戸へ隠れる
    (アマテラスしっかりして!)
    個人的に大好きなウズメちゃんが卑猥さと滑稽さを丸出しに踊りまくりアマテラス引きずり出しに成功
    そして出雲へ追放されたスサノオはクシナダ姫を救うため大蛇ヤマタノオロチを退治(その先に草薙の剣をゲット)

    さてさて、お次はオオクニヌシ
    兄弟に殺されかけ(お母様が何度も助ける)、そして有名な因幡のウサギを助けたオオクニヌシ
    彼はスサノオの娘スセリ姫と出会い、結婚したい!と父であるスサノオに申し出るが…
    スサノオは数々のが試練を与えるものの、オオクニヌシは見事に合格
    その後オオクニヌシはあちこちに愛人をつくり、子供は180人とも…(まぁ大げさな例えでしょうけど)
    (古代の考え方は絶倫ではなく、繁栄ですね ゼウスも然り)
    出雲大社も建て、国が繁栄
    そしてここで協力する助っ人、とても小さい(これまた個人的に好きな)スクナビコ
    可愛いけど優秀
    彼を登場させる意味は…
    小さい神が小粒の種(優良品種)を持ち込み穀物が増産した
    渡来人から最新の妙薬を手に入れた?
    医療に関わる象徴か?
    疫病の流行を鎮めたか?
    (そんな意味があるとは初めて知りました!)

    繁栄した出雲を征服したい高天原
    アマテラスが国譲りのため、使者を使わす
    最後はほぼ力づく(笑)
    オオクニヌシは壮大な社を作らせることを条件に引き渡しに応じ隠居
    これが「出雲大社」のいわれとされる

    そして天孫降臨
    優秀な孫のニニギを地上へ行かせる
    その際ウズメちゃんと道案内役サルタビコが出会う
    (ウズメちゃんのナイスなキャラをアマテラスがかっていることがよくわかるシーン)
    さてニニギ君
    美しいコノハナノサクヤ姫と出会う
    名前からして美しいことが想像されます
    彼女の父に結婚の許しを得るが、セットで姉イワナガ姫もつけられた
    イワナガ姫はコノハナノサクヤ姫と正反対で醜い
    ニニギ君は「姉さんは要らない」と突き返す(おいおい)
    がイワナガ姫をそばに置けば神の御子の寿命は石のように堅く、長く続くという
    コノハナノサクヤ姫は木の花が咲くように栄えるが命は短い
    天皇によっては寿命が短い理由をこのストーリーで神話づけしているようだ
    (おまけに出会ってすぐ子供が出来たからって疑いを持つニニギ君 ないかと人間くさいのだ)
    コノハナノサクヤ姫との間に生まれたのが兄の海幸彦と弟の山幸彦
    弟の提案で道具を替えっこし、兄は山へ、弟は海へ行く
    山幸彦が兄の大切な鉤を海でなくす
    怒る兄山幸彦
    海の神に出会い運気が弟へ傾く
    地上へ戻ると何をしても弟に敵わなくなり、兄は弟の配下になる
    古事記は弟が力を持つ
    天武天皇は兄天智天皇と対立し、兄の血筋を抹殺した経緯があるせいかも?
    (そういえばオオクニヌシも弟だなぁ…)

    海の世界で出会ったトヨタマ姫
    出産の際、決してのぞいてはいけません…
    (出ました出ました!「見ちゃいけない」第二弾 が、覗かない男がいないはずがない)
    トヨタマ姫は鰐の姿で出産
    「見―たーなー」(笑)
    本来の姿を見られたトヨタマ姫は子供を残し海中へ帰る
    とはいえ地中が恋しいトヨタマ姫は妹のタマヨリ姫を送り込む
    トヨタマ姫の子とタマヨリ姫が結婚し、生まれた四男が神武天皇だ
    こんな感じまでが上巻


    そして、神武天皇から始まる天皇のもっぱら系譜が多く頭に入らないワタクシ…

    これ以降で有名どころではもうあの人しかいませんね!
    そう十二代目景行天皇の皇子ヤマトタケル君
    力強く愛情深くエピソードに富み、悲劇的な最期を遂げる
    阿刀田氏曰く、ヤマトタケルは実在の人物ではない可能性が高いという
    長期に渡りいろいろな人がおこなった遠征をヤマトタケルに集約し、フィクションも交え英雄譚が成立したのだろうと…
    そしてエピソードは諸国から集められ、白鳥となって、諸国は飛び帰った
    (確かに私の近くにも「白鳥(しらとり)」という地名があり、ヤマトタケルが降り立ったことになっている)

    最後に目立つのがライバルをなぎ倒して君臨した二十一代雄略天皇(オオハツセの命)
    雄…雄々しく勇壮
    略…治める、かすめ取る、はかりごと
    名前から納得いくわがままで激しい気性、かつ個性的で女性関係も積極的だ
    (アバンチュールなエピソードがたくさん)
    殺して、まぐわって、歌を詠んで、また殺して、またまぐわって、歌を詠んで…
    が実際はなかなかの大王だったようで、
    崩れかかった大和朝廷の威信を回復し、国家財政の充実を図り、渡来人を重用して先進文化を取り入れたそうな

    とまぁこんな感じで…
    やたらレビューに「(笑)」を入れてしまったが、笑うしかないエピソードが多すぎなのですみません
    ギリシア神話にしてもそうなのだが、とことん人間臭い上、あまり優秀な感じもないし(失礼)、結構理不尽なことが多い
    一応古事記はいうのは「大和朝廷がいかに正統なものか後追いの形で作られた史書」なのだが、
    これでいいのかなぁ…と思ってしまうのは私だけではないはず(何度触れても面白いからいいけどさ)

    余談だが…
    以前里中満智子先生の漫画を読んでしまったので、あらゆる神様たちが里中先生のキャラクターで浮かんできてしまう
    覚えやすいし、好きな絵だからいいのだが、目から得る情報の強烈さと印象深さを改めて実感した

    • 淳水堂さん
      ハイジさんこんにちは。

      「海幸山幸」までしか楽しめない、ってなんかわかります。

      古事記は三巻あり、海幸山幸(コノハナサクヤヒメ周...
      ハイジさんこんにちは。

      「海幸山幸」までしか楽しめない、ってなんかわかります。

      古事記は三巻あり、海幸山幸(コノハナサクヤヒメ周辺)が語られる上巻は国の始ましから神々の時代で面白いんですよね。
      中巻では神々と人間とが融合し、下巻は十六代仁徳天皇から三十三代推古天皇の時代なので「教科書で知ってるよ!」でなんか神性が消えて人間の時代だから、特別感がなくなっちゃうんですよね。

      ハイジさんも書かれている通り、ギリシャ神話も日本の神様も人間臭いのですが、それでも上巻エピソードのほうが神秘的って読んでいる自分も不思議なんですけどね。
      2022/11/30
    • ハイジさん
      淳水堂さん こんにちは!
      コメントありがとうございます

      そうなのですよね
      中巻・下巻になるともはや歴史の教科書みたいで面白みに欠けてしま...
      淳水堂さん こんにちは!
      コメントありがとうございます

      そうなのですよね
      中巻・下巻になるともはや歴史の教科書みたいで面白みに欠けてしまって…
      にしても、上巻部分は面白すぎますよね
      いきなり、離婚、我が子殺害って(笑)
      大和朝廷の威厳を感じさせるような少しスマートな内容にしても良かったのでは…とつい思ってしまいます
      (現代の我々には喜劇的で楽しめるのでいいのですが)
      というわけで日本書紀は面白みが欠けそうなので読む気になれず…でございます

      確かに人間臭いけど、神秘的!
      ってわかります
      矛盾しているようですが、実際にそうですもんねぇ…
      2022/11/30
  • 大好きな阿刀田高の古典解説シリーズ、今回は『古事記』。
    いつもながらの知識ダダ漏れの阿刀田節、というよりは古事記そのままの大らかな雰囲気の中、「まぐわって」「歌って」「殺す」物語を著者と共に味わう感じの作りになっています。
    もっと早く読んどきゃ良かった…過去の旅先で、古事記にまつわる多くの場所を知らずに通り過ぎていたかと思うと悔やまれます。

  • 前半の神話的な部分(本辞というらしい)はやっぱり面白い!  イザナギ・イザナミの国造りも、アマテラスの岩戸隠れもスサノオの命のヤマタノオロチ征伐もオオクニヌシの命の因幡の白ウサギも、国引き物語も海幸彦 & 山幸彦の物語も。  あとはやっぱり神武天皇の東征とヤマトタケル伝説は、ストーリー性もあれば、歴史的事実のたとえ話的な要素もあって楽しめます。  でもね、後半の天皇家の系図的な部分(帝紀というらしい) は正直なところ、「ふ~ん」という感じ ^^;  誰と誰が「まぐわって」何人子どもを残して、「殺して」「歌って」の部分は文字を追って一応読んではいても頭には何も残らない・・・・・そんな感じでした。

    (全文はブログにて)

  • 著者のツッコミ?が面白いです。

  • 「旧約聖書を知っていますか」「ギリシア神話を知っていますか」などの知っていますかシリーズがおもしろかったので、古事記にも手をのばす。

    古事記入門書として、これを最初に読めばよかった。小難しいところはざっくりまとめてあり、古事記解説のほかに出雲や高千穂を訪れたルポがはさまれており、飽きずに読み進められる。

    #出雲松江旅行本

  • 2019年、8冊目は、主に隙間読書用に読んでいた一冊。『古事記』にまつわる紀行文や、作者の見解等を絡め、極ライトに読み解いたモノ。

    今から四半世紀位前、おそらく、平成一桁の頃、一度、現代語訳的なモノを読んでいたはずなのだが……。その後の引っ越しの時、処分してしまったか、手伝ってくれた知人にあげてしまったか、とにかく、現在、手元になかったので……。

    特に改元にあたって、のつもりではなく、たまたま、伝承、神話的なモノが読みたかっただけです。

    イザナギ&イザナミ、アマテラス、スサノオ、八俣の大蛇、稲葉の白兎、海(幸)彦&山(幸)彦、ヤマトタケル、……etc。しかし、忘れてるコト多いなぁ。日本神話でコレじゃあ、ギリシャ神話何て、どれだけ覚えてるコトか……。

    あくまでも、『古事記』入門書であり、「良き先達」。更に興味があるなら、現代語訳を読めばイイと思う。

    「みとのまぐはひ」イイ響きだが、使う機会はおとずれるのだろうか⁉️

  • 古事記+史跡巡り 読みやすい さすがアトーダワールド

  • 古事記とはどういった内容のものなのかを何となく知ることができる。
    てか、古事記なんて普通は読めないのでこういったものがあると助かる。

  • 数年間探し回って、漸く本屋で見つけた本。
    毎年夏あたりに文庫で出ているはずなのに、どうして、今まで近所の本屋はこれを置いてくれなかったのだろうか……。

    作者のつっこみを交えつつ、古事記の大体のあらましを追っていく感じ。

  • ギリシャ神話に出てくる神様もそうだったが、古事記に出てくる日本の神様もみな恋多く嫉妬深く慈愛に満ちていて残酷で戦さ好き、なんて人間的なのだろう。その人間臭さが、当たらずも遠からずの人物や出来事があったんだろうなと感じさせる。何々の命(みこと)が代を重ねるごとに徐々に天皇の話になっていく様が面白い。

著者プロフィール

作家
1935年、東京生れ。早稲田大学文学部卒。国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、78年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。79年「来訪者」で日本推理作家協会賞、短編集『ナポレオン狂』で直木賞。95年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞。日本ペンクラブ会長や文化庁文化審議会会長、山梨県立図書館長などを歴任。2018年、文化功労者。

「2019年 『私が作家になった理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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