“菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕 (角川スニーカー文庫)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010年8月31日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041595107
作品紹介・あらすじ
"菜々子さん"が突然、3年前の事故は「事件だった」と語り出した。それは病床の僕にとってもはや検証不能な推理だけど、自然と思考は3年前に飛んでいた。そういえば、あの頃のキミって、意外と陰険だったよね-。"菜々子さん"が語る情報の断片は、なぜか次第に彼女が真犯人だと示し始める。"菜々子さん"が暴こうとしている真相とは一体!?可憐な笑顔の下に、小悪魔的な独善性が煌めく、まったく新しいタイプのヒロイン誕生。
感想・レビュー・書評
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全身麻痺で体を動かすことも物を見ることもできない主人公の過去を巡るミステリー。
特殊なシチュエーションと真相にたどり着くことだけが目的ではない異質なミステリーで面白い。
菜々子さんの「〜だわ」の使い方に違和感があって、小説や映画にある女言葉とはまた微妙に使い方が変で伏線かと思ったら全然そんなことはなかった。あれなんだったんだろう。
10年前くらいのラノベだから文章のくどさに懐かしさを覚えた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「彼女はぼくに自分の手柄を掲げて見せたのだ。」
ホームズワトスン関係の「青春ミステリ」語彙豊富な小中学生版
というよくあるラノベとは違うのだよラノベとはという
脱ラノベ志向風ライトノベルてきミステリかと思ったが
菜々子さんがちゃんとライトノベル風に「俗物」で「人間らしい」
魅力的なキャラクタとして描かれているのが面白い
文章はよいけれど構成はもうすこしひねらないほうが良いと思う -
「持病」を抱えるため、周囲からは嫌われず、好感度高いのに、実はちょっと「陰険」?な菜々子さん。菜々子さんが通っている病院にいるのは誰なのか……。逆転の逆転、なほんとのラストはなるほどねー、と思った。よいラストノベルミステリ。そして新人とは思えない安定感。ちょっと黒いけど、ほんとに灰色ぐらいの黒さなので、一般の方でも読めるかと思います。小学生時代の話がメインなんだけど、小学生にはこれができてこれができない、という線引きがなかなか秀逸だなあと思いました。黒「リンネ」かも。
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学園ミステリーなのかな?
ラノベにしてはライトでは無いな。
ある事故をきっかけに寝たきりになった少年が主人公
こういう状況なので、ほぼモノローグで物語がすすみます。
事故のきっかけを作ったのははたして彼女”菜々子”なのか?
案外、物語に入り込んじゃったので良しとします(笑)
ちょっと背伸びをしたい小中学生向き。 -
ある事故(事件)をめぐり、主人公と菜々子さんがお互いを疑い合う物語。主人公が、とある強制胡座椅子探偵状態という大変ショッキングな状況で物語が始まる。乱歩の芋虫状態に近いです。最後に真相が明かされるが、ストーリー的には枝葉のように感じた。
事件にまつわる菜々子さん特有の症状をきっかけに、彼女は主人公の前で事件の真犯人について推理を始める。その推理は菜々子さん本人が真犯人でないことを強調するものであった。そこで主人公は菜々子さんがこう思っていることに気づく。「あの事件の真犯人は菜々子さんではないか」と主人公が菜々子さんを疑っていると。主人公は菜々子さんに命をとられまいと、動かない身体を必死に動かして彼女を疑っていないことを示そうとするが……これホラーじゃないかと。
一番印象に残ったシーンは、菜々子さんが本心を隠せないところ。主人公が菜々子さんに事件を起こす動機がなかったことを指摘するのだが、実は動機ありますと長々説明してしまう。自白すれすれみたいな危ない道を歩いてしまうのは、主人公に好意を持っていたことの裏返しだろうか。
Nと主人公の人生がめちゃくちゃになる程の事件だったのに、菜々子さん「小悪魔」だから的な感じで主人公のなかでは真相が闇に葬られます。そこはキャラクター小説だからいいのか? -
デビュー作らしくミステリ趣向がこってり凝ってる。不良グループにいじめられるぼっち気質の真面目な僕と、頭とルックスは良いが性格は曲者のヒロインという組合せは、ぼっち学園ものの王道。ただ普通と違うのは、舞台が小学生なことと、被害者兼探偵の僕が全身麻痺なこと。やな奴代表のNを含めて、いかにもありそうな子どもカーストがダークぎみだけど、3年後に蒸し返された複雑な事件設定は、ミステリファンならチャレンジしたくなる。被害者なのか犯人なのか、自称陰険な菜々子さんに導かれた真相は、枠組みレベルの意外性もあるし、なにより動機がピュア&スイートなのが気に入った。マニア度高いが良作。
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極限なまでの閉鎖空間ミステリ
病室で全く動かない僕に対し、クラスメイトだった菜々子さんは事件について独白を始めます。この特殊な環境下でのみ成立する心理戦、恐怖感の演出がよく出来ています。プロットの巧さとクセのある文体が相まって、ありがちな展開から先の読めない展開へ。回想シーンが冗長気味なのが難ですが、ライトノベル系ミステリとしては頭ひとつ抜けていると思いました。
本文中では明らかにされなかった菜々子さんの謎が気になるところです。 -
ラノベ要素は少し既視感があるが、ロジックは相当に気合いが入っており、小説としての落としどころも好みど真ん中。
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昔起きた事故について、突如「事件だった」と言い始めた少女。
彼女の名前は、便宜上『菜々子さん』が使われている。
なぜならば、本名を呼ぶと発作が起きるから。
事件だったと話している『今』と、事故だった『過去』の
さらに過去が語られていく。
ので、物語というよりは、視点が定まった
歴史書を読んでいるような気分に。
『今』の自分達がどうしてこうなっているのか、というのも
徐々に分かってくるわけですが、途中で面倒になって
斜め読みして終了。
新しいタイプのヒロインらしいですが
単なる策士、ではないでしょうか? -
本名を呼ばれると起こる菜々子さんの発作。
全身麻痺で寝たきりの主人公。
1つの衝撃的な事件から始まる本作。
独白と、過去の回想を交えて、主人公は段々と真相に近づいていきます。
しかし、本作の魅力はそこではありません。
魅力的な菜々子さんというキャラクターを存分にいかしたストーリー展開。
そんな彼女の性質から訪れる最後には、あまりのいじらしさと方向のとんでもなさから、
読後は彼女のキャラクターにすっかりひきこまれてしまいます。
シリアスな展開を温かく彩る、二入のやり取りにぜひホッコリしてください。
著者プロフィール
高木敦史の作品





