中国火車旅行 (角川文庫 み 9-4)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041598054

感想・レビュー・書評

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  • 宮脇俊三氏による中国鉄道紀行。'85年~'87年のものなのでいささか古いのだが、火車(汽車)旅の醍醐味は十分に伝わってくる。この頃はまだ、中国国内を自由には旅行できなかったようで、色々と不自由かつ割高でもあるようだ。例えば、10日間の旅行費用が57万円もしており、当時の中国の物価水準からすれば、これはもう法外な値段だ。また、酔狂にも鉄道に乗るためだけに中国に来たというのは、ほとんど理解されることではなかったようだ。けだし「鉄道趣味とは、鉄道が斜陽化するにしたがって発生・増大するもの」なのだろう。

  • 宮脇さんのだから買ったけど中国の電車とか興味ないよのね、とか思ってたのに読んでみたらおもしろかった。
    そういや子供のころ親戚に中国で電車乗る旅しようとさそわれたことを思い出した。
    行かなくてよかった。

  • 初めての中国行きとなった「北京-広州」ほか、4編の中国鉄道旅行記を所収。
    宮脇さんらしいどこかせかせかした鉄道旅行だけど、それでも-あるいはそれゆえにこそ-中国の悠久さが存分に伝わってきます。

    異論はあるかと思いますが、読者に「ここ、行きたいっ!」と感じさせる事ができれば、旅行記として成功なんだと思います。
    その意味ではこれ、名作ですね。

  • 宮脇俊三氏は鉄道のためなら、地球の裏側や北極の近くまでも喜喜として出かけて行きます。しかしながら、近隣国である中国は後回しになつたやうで、その原因は単純に鉄道に乗る機会がなかつたからださうです。即ち宮脇氏にとつては、ある土地に行つたことがある、とは「鉄道に乗つたことがある」と同義語なのでした。
    何せ中国は広大であります。鉄道網も発達してゐて、その総延長は52000キロに及びます。宮脇氏は地図を眺めては、いつの日か乗りたいと、大事に取つておいた国なのでした。

    そして遂にその日はやつてきました。しかも三年連続で中国の鉄道旅が実現するといふ、それまでの渇きを一気に潤さんとするかの快挙です。日本交通公社(現JTB)と角川書店のお陰で、編集者同行、ガイド付きの旅行となりましたが、それまで一人旅が基本だつた宮脇氏としては、若干窮屈な思ひもしたらしい。まあ、海外では何が有るか分からないし、結果的にはこれで良かつたのですが。
    なほ念の為に添へると、中国語で汽車といふと、自動車を指します。日本語の汽車は、「火車」といひます。

    初の中国行は1985年(第一章)、北京-広州間2313キロの乗車であります。写真家の山内氏が同行し、現地では桂さんといふ中国人ガイドが付き添ひます。行程の時間的余裕があり過ぎて、北京で近場まで汽車で往復したいと所望しますが、予約が必要なので、突然の乗車は無理だとガイドに断られます。本当だらうか。中国人は、外国人に対して見栄を張るので、庶民の乗る汚くて古い汽車に乗せたくないのでは。しかし現地では勝手な行動を取ると、後々面倒なことになるので、渋渋従ふ宮脇氏であります。せめて地下鉄に乗らうとして、「地下鉄は予約しなくても乗れるのでしょう」と皮肉を込めた発言をしますが、中国人ガイドには通じませんでした。

    二度目は1986年(第二章)、上海-烏魯木斉(ウルムチ)間4079キロ。乗車時間は81時間(三泊四日)と、さすがに大陸鉄道で、スケールがでかいですな。ルートの後半は、まさにシルクロードをトレースいたします。角川書店の渡辺氏が同行。
    宮脇氏も感心してゐましたが、中国の鉄道は日本ほどではないけれど案外時間に正確なのですね。貨物列車も多く、単線区間も長いので、ある程度正確に走らないと混乱をきたすのでせう。ところが、予期せぬ事態に巻き込まれ、17時間以上の遅れが発生したのであります。烏魯木斉から乗る飛行機に間に合ふのか?

    そして三度目は1987年。大連-哈爾浜(ハルビン)間944キロ(第三章)と、成都-昆明間1100キロ(第四章)の2路線。同行するのは、『シベリア鉄道9400キロ』でもお馴染みの、角川書店の「ヒルさん」。全行程をガイドするのは、中国人女性の「鮑淳彦」さん。漢字だけ見ると、日本人の感覚では男性かと勘違ひしさうであります。この人、やる気があるのか無いのか分からぬところがありますが、最低限の仕事はしてくれます。
    今回は10日もの旅程であります。2路線のみにしては長丁場ですが、ガイドの要請で必要以上に乗り継ぎに時間をとるかららしい。特に哈爾浜から成都への移動に二日もかけるので、全体にゆつたりとしてゐます。

    行程があらかじめ決められてゐて自由度が少ないとか、外国人専用の上等な車両にしか乗れなかつたり、庶民用の美味しさうな弁当は食べさせてもらへないし、ホテルではVIP扱ひされたり、気軽にふらりと汽車に乗れなかつたり、写真を撮れない区間があつたり、ビールは冷えてなくて温いし(現在の中国は冷えたビールがあります)と、何かと日本とは勝手が違ふのですが、我が宮脇氏は悠々と全てを受け入れます。
    やはりこの国に来ると、日本でせかせかしてゐたことを忘れ、すべてがどうでも良くなる傾向があります。現在は経済成長とともに、昔よりも忙しなくなつた印象ですが。それが良いことか、悪いことか、わたくしには分かりませんなあ。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-638.html

  • 16/05/04、神保町・澤口書店で購入(古本)。

  • 読んでいると不思議に、
    汽車に乗りたくなってしまう。

    1985年から3年間にかけての話ですが、
    ずいぶん今とは違う感じがしている。 

    北京→広州    2323キロ 車中2泊
    上海→烏魯木斉  4079キロ 81時間
    上海 11時27分出発→4日目 20時30分烏魯木斉着
    大連→ハルピン   944キロ
    成都→昆明    1100キロ 車中1泊
    成都 16時15分発 →  翌日 15時10分 昆明 

  • この間古本屋で見つけてホクホクと買いました。

    もう20年以上前のことになるのでずいぶん当時と変わっていることもあるかと思いますが変わらないこともあるだろうなあ、なんて思いながら読みました。それにしても広い中国を分断するように走る鉄道に時間を気にせず乗ったら面白いだろうなあ…とは思いました。が、自分はまず近場の鉄道にでも乗ろうと思います。ハイ。

  • 時間のとまった旅、それが中国火車旅行。
    火車とは、中国語で列車のこと。
    昔石炭で走っていたからかな。

  • 「火車」とは中国語で「汽車」のこと。日本中の国鉄(当時)を乗り尽くした鉄道旅マニア宮脇俊三さんの中国汽車旅エッセイ。中国はさすがに広くて車中3泊4000キロなんてものすごい路線もあったりして。4路線のほぼ車内オンリーの旅レポを相変わらずのちょっと覚めた宮脇節で語ってくれます。<br />元は1988年の発行の本だそうで、かなり古さは感じますが(いくらなんでも今の中国はここまで規制は厳しくないだろう・・・)時代を感じる、という意味でも楽しい本です。いつか火車で烏魯木斉(ウルムチ)に行ってみたい!!<br /><br />今回は出版社等の依頼で行っているので、どの旅も旅のお供さんがついています。・・・お供さんご苦労様(^^;

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著者プロフィール

宮脇俊三
一九二六年埼玉県生まれ。四五年、東京帝国大学理学部地質学科に入学。五一年、東京大学文学部西洋史学科卒業、中央公論社入社。『中央公論』『婦人公論』編集長などを歴任。七八年、中央公論社を退職、『時刻表2万キロ』で作家デビュー。八五年、『殺意の風景』で第十三回泉鏡花文学賞受賞。九九年、第四十七回菊池寛賞受賞。二〇〇三年、死去。戒名は「鉄道院周遊俊妙居士」。

「2023年 『時刻表昭和史 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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