日本探見二泊三日 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041598078

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  • 種村直樹に続き古本で見つけた宮脇俊三。種村直樹読んだときに「宮脇俊三の方が文学的、叙情的」とか書いたけど、そうでもなかった。まぁ本にもよるやろうし、久しく読んでないから思い込みもあったかな。宮脇俊三もけっこう俗っぽかった。しかし、宿の実名挙げて「うら寂しい」とか「今夜泊まるとなると気が滅入る」とか今じゃ書けないよなぁ、時代かなぁ。で、熊野古道とか白神山地とかB級観光地扱いなのも時代を感じる。世界遺産になろうとはねぇ。

  • 月刊誌「旅」にて、「日本ふるさと探見」の題で連載されてゐたものをまとめた一冊であります。単行本刊行時に、『日本探見二泊三日』に改題されました。その理由は、宮脇氏によると「一泊や三泊もあるが、大半が二泊三日なので」ださうです。かういふアバウトさは嫌ひではありません。しかし、そもそも改題の必要はあつたのか、元の題でも良いぢやないかと勘考するところです。

    本書の概念は、単行本の帯にある惹句によると、「ねらい目は、B級旅行地」ださうな。B級なになにといふ言ひまはしは余り好きではないけれど、まあ言はんとするところは分かります。
    即ち、旅行ガイドには必ず載つてゐて、大ホテルが林立し観光バスが雁行する有名観光地を仮にA級とするならば、逆に秘境と呼ばれ、交通不便で訪問には若干の体力と忍耐を要する、知る人ぞ知る穴場をC級だと思ひなされ。「観光地にランク付けするな!」と叫ぶそこのお方、ごもつともな意見ですが、ここは目を瞑つてください。
    その中間に当る、A級ほどの知名度は無いが、C級ほどの秘境ではなく、それなりの交通機関は通じてゐて、まだ自然も残されてゐる場所が本書の狙ふところであります。

    そんな基準で登場するのは、熊野古道・親不知・豊後水道と日豊海岸・秋田・南淡路・阿武隈・五島列島・夕張・広島県三次・四国お遍路・岐阜県蛭川村などであります。
    熊野古道なんかは、現在では超有名観光地ではないかと思ひますが、連載時の27年前の時点ではそれほどでも無かつたのでせうか。

    宮脇氏は編集部の注文に対し、真正面から向き合ひ応へてゐます。必ずしも鉄道に乗れる旅ばかりではないのに、ご苦労なことであります。
    熊野古道では雨に祟られ、秋田で「火振りかまくら」を体験し、日豊海岸に「昔の日本」を感じ、阿武隈の霊山では足がすくむやうな道に肝を冷やして、五島列島では隠れキリシタンにインタビューし、炭鉱からメロンへの変貌を遂げた夕張で感慨に耽る。
    或は、三次の江川で鵜飼を愉しみつつ鵜を哀れみ、四国八十八か所のキセル体験をし、蛭川村でマツタケを採取しながら「マツタケに眼の色を変えるのが阿呆らしいような気がしてきた」と言ひ放つ。

    かういふところでこそ、日本の良さはより深く味はへる。無論宮脇氏と同じやうな旅をする必要はありませんが、先入感に捕はれずに自らの五感で体験すれば、例へ有名観光地でなくても、記憶に残る旅のポイントは有ると申せませう。
    まあ、どこへ旅行へ行つても日常の延長の遊びを期待し、著名な行楽地が無い土地では若干の優越感と僅少の侮蔑を含んで、「なんだ、何もないところだね」と呟く人々には無縁の一冊かなとも思ひます。

    と、いささか挑発的な言辞を持つて、本項を締めくくることにしませう。
    ぢやあまた、今日の日は左様なら。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-580.html

  • 斜陽の炭鉱都市夕張はメロンで町興しで成功をおさめた‥
    夕張今昔
    今は破綻した都市だ
    解説にもあるように宮脇氏の旧著の在りし日の各線は、かつての実感がこもっている、と。

  • 宮脇さんの作品が好きで良く読んでいる。しかし、やはり宮脇さんの文章の魅力は、車窓を通したものが抜群に面白いと思う。この本のように「移動」ではなく「旅」がメインとなってしまうとその魅力が半減してしまうように感じるのは自分だけだろうか。個人的には親不知や夕張などの編が楽しめたが、全体としては凡庸な印象。

著者プロフィール

宮脇俊三
一九二六年埼玉県生まれ。四五年、東京帝国大学理学部地質学科に入学。五一年、東京大学文学部西洋史学科卒業、中央公論社入社。『中央公論』『婦人公論』編集長などを歴任。七八年、中央公論社を退職、『時刻表2万キロ』で作家デビュー。八五年、『殺意の風景』で第十三回泉鏡花文学賞受賞。九九年、第四十七回菊池寛賞受賞。二〇〇三年、死去。戒名は「鉄道院周遊俊妙居士」。

「2023年 『時刻表昭和史 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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