- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041607534
作品紹介・あらすじ
刺殺された製薬会社の営業マンが寺に預けた骨つぼ。骨つぼをめぐる謎の人物を探っていた浅見はやがて、医学界の驚愕の真相にたどり着く。浅見光彦が医療の原罪を追う、感動作。
感想・レビュー・書評
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ひとつの骨壷をめぐるミステリー小説。
作中大きな位置を占めるものとして「脳死は人の死か」ということが取り上げられており、登場人物の目を通し著者の意見が見えてくるようであるが、脳死に対する考えが整理されておらず物足りなく感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フリーライター浅見光彦のシリーズ。テレビではおなじみなのでそれと同じパターンだ。臓器移植や脳死、戦争中の731部隊などを巡っての事件を解決していく過程で山口県の長門、萩、千崎などが登場。金子みすゞの詩なども織り込まれていた。
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バブル期ミステリ繋がりと思って、内田康夫を手に撮ったら、バブルが終わって落ち着いた足尾市だとかが舞台だった作品。
淡路島の寺に骨壷を納めに来た男が、帰京後に殺される。その後、骨壷を取り戻しに行ったはずの同僚も殺されるが、骨壷は謎の女に引き取られて行方不明となる…。
たまたまなのだろうけど、瀬戸内を航行するフェリー内でなにかが起こる、という内田康夫の別の作品を読んでいたので、既読だったかと不安になったが、とりこし苦労であったものの、もうちょい違ったシチュエーションを作って欲しい。
その後、金子みすゞを取材に山口、足尾銅山を取材に足尾と、旅情ミステリである浅見シリーズの醍醐味が続く。
全体に展開は「遅い」と言っていいほどだが、良く言えば「落ち着いた」作風。思わせぶりに無理くり引き伸ばしている部分は少なく、個人的に文章は読みやすく、好感を持てた。
ただし、脳死問題など、ちょっと内田氏の個人の意見を盛り込みすぎなところが食傷。テーマ的に731部隊ってのも、1996年に書かれたとしても今更感が否めないし、ちょっと広げすぎたのではないかと思う点がマイナス。
動機等に粗があるものの、大人向けミステリとしては成功している作品ではないかと思う。 -
密かに、内田康夫ブーム。
『天河伝説殺人事件』から入ったのだが、もう少し浅見光彦に付き合ってみようと思う。
この事件は光彦にとって、幾つ目の事件なのだろうか。
調査の手回しは、かなり熟れた印象を受ける。
特徴的なのは、推理を「物語」として構築することだ。
そこに違和感がないか、ぼんやりと組み立てる。
闇の中、破片が組み合わさり閃きにも似た光明を見つけ出す。
そんな彼は刑事ではなく、フリーランスのルポライター。
やっかいごとに首をつっこむ性分なのか、事件が彼を呼ぶのか、全く面白い奴だ。
この作品は、脳死や臓器移植といった重厚なテーマに取り組んでいる。
現実世界も医療の闇は囁かれているので、あながちフィクションと嗤えない。
当の作家 内田康夫は、自作解説を好むらしい。
そこでは、執筆についての姿勢についても書かれている。
ミステリーであってさえ、テーマや構成をしっかり用意していないそうだ。
思いつくままキーを叩き、物語を紡ぎ出す。
登場人物が動き出せば、筋書きや結末は後から付いてくるのだと氏は語る。
外部からの刺激が創作意欲となり、テーマが定まるそうだ。
いわゆる、小説の正しい作法で執筆しているのではないのだと。
そう考えると、浅見光彦は内田康夫だ。
警察の捜査の様に正しい作法は無いものの、独自の物語で推理する。
この部分が重なって、しょうがない。
最後に、この作品は童謡詩人「金子 みすゞ」ありきで書かれたそうだ。
内田康夫は、地域の歴史風土や偉人などを内包することで読者の琴線に触れる。 -
殺害された製薬会社の営業マンが、密かに淡路島の寺に預けていた骨壺。事件後、それを持ち去った謎の女性。さらに寺に現れた偽の製薬会社社員―。取材中に被害者と出会っていた浅見光彦は、錯綜する謎の接点を求めて、童謡詩人金子みすゞゆかりの地・山口県仙崎へ向かう。そこには、生命の尊厳と倫理を脅かす驚愕の真実が…。脳死、臓器移植など、最先端医療の原罪を追及する浅見、その死生観が深い感動を呼ぶ。
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普通に面白く読める。疲れたときに良い。
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刺殺された製薬会社の営業マンが寺に預けた骨つぼ。骨つぼをめぐる謎の人物を探っていた浅見はやがて医学界の驚愕の真相にたどり着く
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*浅見光彦シリーズ・レビュー
そもそもインパクトはない。
トリックも大したことない。
キャラも浅見を含めて色が強いわけでもない。
会話だって地味で武器にはならない。
でも、面白い。
それが浅見光彦シリーズです。
このシリーズの最大の特徴は探偵役の浅見光彦と読者が情報を共有し、共に真相に迫っていく『冒険』にあります。
解くミステリではなく、読ませるミステリ。
作りは全く無関係に思われる出来事から浅見が動き出し、調べていくうちに事件が二転三転し、読者も犯人が誰か分かる展開を辿り、無事に浅見が解決するというオーソドックスなものです。
でもその話の転がし方が上手いのです。
まず非常に丁寧に転がしていくので置いていかれる心配が無い。話と話の空きがあるので時間を置いて読むと誰が誰か度忘れする心配はありますが、それでも浅見と一緒に事件を整理して行くので情報の漏れが少ないのです。
デメリットとして犯人が分かってしまうという欠点があれますが、それは話の流れで検討がつくのでどうやって追い詰めるか、どうやって証拠を押さえるか、そういった部分に焦点が移行するので心配ありません。
そのおかげで事件がゆっくりと浅見によって紐解かれていくので、途中多少ダレても読み進めていってしまう節があります。
そして一番意外に思うのは犯人でも展開でもなく、浅見の行動でしょう。
彼自身がぶっ飛んだキャラではないのですが、ストーリーを引っ張っていく探偵としては十分に機能しています。もし情報Aが目の前に現れたとき、読者は情報Bを読み解くかもしれません。ですが、彼は情報Cを読み解くのです。これをずっとひた隠しにされると恐らく解くタイプのミステリになります。
しかし即座にその情報が浅見によってバラされるため、読者は予想外のことに驚き引き込まれます。
加えて活劇要素として浅見光彦には黄門様の印籠があります。
浅見必殺の印籠、それは……兄が警視庁刑事局長であること。
探偵役の浅見は一般人のフリーライターとして事件に巻き込まれていくのですが、時として事件に近すぎるため警察に疑われたり、協力を必要とするときがあります。
そんな時に(本人いわく申し訳ないそうですが)威力を発揮するのが兄。浅見の正体(刑事局長の弟)が分かるとさっきまで素人と舐めて掛かっていた刑事が手の平を返してヘコヘコしだす様は爽快です。
あと忘れてはならないのが地味にあるラブ・ロマンス(笑)
浅見光彦。彼は良い所の坊ちゃんで一人身です。いわば独身貴族。
そんなちょっと抜けていて常識のない男が、事件に巻き込まれた女性の手助けをする。
もう王道ですね。毎度毎度この恋愛が中心になるわけではありませんし、ヒロインポジションが居ないときもあります。けれども、そういう要素もある事でまた違った楽しみを提供してくれていて、途中で事件が停滞してもカバーしてくれる時があります。
狙って楽しむものではないですが、これも話を盛り上げるのに一役買っているのは事実でしょう。こういう恋愛要素はラノベに近いかもしれませんね(ただし微弱
私としてはこのちょっとした驚きと恋愛要素、そして実態の見えてこない事件の全容を少しずつ暴いていくのが浅見光彦シリーズの醍醐味ではないかと思っています。
気軽に読む一冊としてこのシリーズをオススメします。
ただし! 当たりハズレが存在するシリーズなので、購入するときはレビューの確認をお忘れなく。 -
臓器移植法成立かどうかという時期。
製薬会社の社員が殺された。
行きずりか?計画的な殺人なのか?
偶然に淡路島のフェリーで社員と会っていた浅見光彦が事件の謎に乗り出す。
戦時中の事柄が強い影響を与えている。