箸墓幻想 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041607626

作品紹介・あらすじ

邪馬台国の研究に生涯を費やした考古学者・小池拓郎が殺される。浅見光彦は小池が寄宿していた当麻寺の住職から事件解決を依頼され、早春の大和路へ。古代史のロマンを背景に展開する格調高い文芸ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  •  ルポライターの浅見光彦が探偵役として活躍する、内田康夫の推理小説シリーズの一作。
     奈良県の箸墓古墳とホケノ山古墳を題材に、邪馬台国論争に一石を投じたとされる長編作品。
     邪馬台国畿内説の証明に人生を懸けた考古学者の死を皮切りに、考古学界を揺るがす銅鏡の発見と、発掘関係者の殺人事件が続く中、渦中の老学者の遠き過去に潜む怨念の構図を、浅見が丁寧に紐解いてゆく。
     内田氏の著作に目を通すのは今回が初めてだが、どことなく舞台脚本に近いタッチによる、会話劇とも言える淡白さが印象的だった。
     主人公の推理法を厳密に鑑みるならば、物証を積み上げての科学的な推測というより、想像力を駆使した推論の連鎖なので、ミステリとしての評価は難しいのが実情。
     しかし、卑弥呼の墓を巡る古代史ロマンと、戦中戦後日本の男女の愛憎劇が絡み合い、表題通り、湿度の高い妄念と生々しい野望が幻想的に投影される、不思議な味わいの一篇となっている。
     また、日本の考古学史の汚点の一つである、旧石器捏造事件に近似した偽装工作と、事件発覚前の予言めいた言及の符号も見逃せない。
     個人的にも、奈良は大好きな土地であり、幾度となく現地を旅した経験がある。
     あの牧歌的で美しくも物悲しい風景を想い、時代を超えて繰り返される、人間の業の度し難さが遣る瀬無い。

  • 箸墓古墳、ホケノ山古墳、二上山など知らなかったので勉強になった

  • 内田康夫作品を読んで思うのは、内容が濃いということ。
    今回の作品もまた濃いなぁと思いました。
    そして楽しめました。
    浅見光彦の推理は当たり前に、女性との絡みもまた
    楽しみのひとつ。
    今回の舞台は、奈良。
    古墳、邪馬台国、卑弥呼などとても興味深い内容でした。

  • 内田康夫の浅見光彦シリーズ。今回は奈良県のホケノ山古墳、箸墓古墳が舞台。 展開としてはまあ予想通りかな。全体的には、自分の好きな分野の古代日本史に関連しているので、おもしろく読むことができた。ただ、著者が日頃公言しているのが本当なら、プロットを書かないで新聞に連載していた作品とのこともあって、ちょっと説明不足やご都合主義では?と思える部分がめずらしく気になった。というのも、例えば犯人のうちの一人の人物描写があまりなく、突然犯人だよって言われるような印象を受けたり(極端に書いてます)、数少ない主要登場人物同士の(過去数代に遡った)関係が強すぎたり(そんなことあり得ないよなあと言うレベル。だから小説になってるんだけど)。

  • 奈良を主な舞台にした浅見シリーズの歴史ミステリー、と言うべきか。
    一言で言えば、邪馬台国を研究していた学者の死の謎と背景を探し解いていく話。
    話自体は面白いが、話のラストが、ちょっと私好みのものではなく、歴史的な部分で明らかにおかしい点が存在し、何より被害者の周りの人間関係が複雑すぎること極まりない。

  • 内容紹介

    浅見光彦が追う卑弥呼と邪馬台国の謎!
    邪馬台国の研究に生涯を費やした考古学者・小池拓郎が殺される。浅見光彦は、小池が寄宿していた当麻寺の住職から事件解決を依頼され、早春の大和路へ向かう! 
    古代史のロマンを背景に展開する格調高い文芸ミステリ

    内容(「BOOK」データベースより)

    邪馬台国の研究に生涯を費やした孤高の考古学者・小池拓郎が殺された。その直後、彼の発掘していた古墳から邪馬台国の手がかりと思われる銅鏡が発見され、考古学界は騒然となる。浅見光彦は、小池が寄宿していた当麻寺の住職から事件解決を依頼され、早春の大和路へ向かった。老考古学者が遺した一通の古い手紙と色褪せた写真―住職の娘・有里とともに事件を追う浅見は、いつしか時を超えた女達の妄執に搦め捕られてゆく。古代史のロマンを背景に展開する格調高い文芸ミステリー。

    内容(「MARC」データベースより)

    奈良・箸墓古墳の謎を追究していた考古学研究所の元所長が殺される。真相を追う浅見光彦を待ち受けていたのは、歴史を超えた、女たちの冥い情念だった…。戦慄の展開、驚天動地の結末。『毎日新聞』日曜版連載の単行本化。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    内田康夫
    東京都出身、現在は軽井沢に在住。1980年、『死者の木霊』を自費出版してデビュー。1982年には、浅見光彦が初めて登場する『後鳥羽伝説殺人事件』を上梓。以来、全国を旅して日本人の心の琴線に触れるミステリーを書き続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

    本の感想(オフィス樋口Booksより転載、http://books-officehiguchi.com/archives/4783004.html

    奈良県橿原市の箸墓古墳が舞台となった歴史ミステリー小説である。箸墓古墳辺りは邪馬台国があった場所と言われていて、注目されている。

    この小説は、考古学者小池拓郎が殺害された事件で、浅見光彦が事件の真相を追うストーリーである。歴史小説が好きな読者に勧めたい1冊である。ただ、休筆を宣言したため、今後内田康夫氏の浅見光彦シリーズを読むことができるかどうか気になるところだ。

  • 古代史の一部を勉強するには秀逸

  • 邪馬台国の研究に生涯を費やした孤高の考古学者・小池拓郎が殺された。その直後、彼の発掘していた古墳から邪馬台国の手がかりと思われる銅鏡が発見され、考古学界は騒然となる。浅見光彦は、小池が寄宿していた当麻寺の住職から事件解決を依頼され、早春の大和路へ向かった。老考古学者が遺した一通の古い手紙と色褪せた写真―住職の娘・有里とともに事件を追う浅見は、いつしか時を超えた女達の妄執に搦め捕られてゆく。古代史のロマンを背景に展開する格調高い文芸ミステリー。

  • 「この『神の手』の評価に翳りが生じた。『神意』どころか『人為』を疑われたのである。」

    箸墓幻想は毎日新聞日曜版に平成十二年四月二日から六十三回にわたって連載された新聞小説です。

    単行本としては平成十三年八月三十日に毎日新聞社から刊行されました。

    発売日当日には、新聞全国紙各紙に全面広告というミステリー小説としては異例のプロモーションがあったように記憶しています。

    センセーショナルな出来事は、小説連載中の平成十二年十一月に発覚した旧石器捏造事件(神の手事件)発覚の事実と、フィクションの箸墓幻想の古墳偽装があまりにも似通っていて予言めいていたからでしょう。

    また旧石器捏造事件のスクープをしたのが毎日新聞、連載小説も毎日新聞という符合も出来過ぎとの疑念もありました。

    著者と新聞記者との世間話のなかで、藤村新一氏のことや毎日新聞が藤村氏を追跡しているなどの話題があったかもしれません。

    ただ、物語は悲恋の様相に移り変わっていき、たくみに幻想化されます。

    このあたりの技が内田康夫さんの真骨頂でありました。

    藤村氏の事件とは別に、

    この小説をきっかけに卑弥呼大和説が強まったといわれています。




    (ものがたり)

    卑弥呼の墓とも言われながら、実際はベールに隠された奈良・箸墓古墳。
    その謎を追求していた、敏傍考古学研究所の元所長・小池拓郎が殺される。
    真相を追う浅見光彦を待ち受けていたのは、
    歴史を超えた暗い情念だった。
    闇は御霊たちの呪いのように、冷たく、深い     。
    やがて起きた第二の殺人に、浅見は・・・・・・・・。

    (じけん)

    旧石器捏造事件(きゅうせっき ねつぞう じけん) は、考古学研究家の藤村新一が次々に発掘していた、日本の前期・中期旧石器時代の遺物や遺跡だとされていたものが、全て捏造だったと発覚した事件である。中学校・高等学校の歴史教科書はもとより大学入試にも影響が及んだ日本考古学界最大のスキャンダルとされ、2000年11月5日の毎日新聞朝刊で報じられたスクープによって発覚した。

  • 夏前に買ったものの別の本に浮気したりした結果ようやく読み終えました。

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著者プロフィール

1934年東京都北区生まれ。1980年に自費出版した『死者の木霊』で衝撃的デビュー。主人公の信濃のコロンボこと竹村警部が活躍する作品に加え、1982年に刊行された『後鳥羽伝説殺人事件』で初登場した浅見光彦を主人公にしたミステリー作品は大ベストセラーに。映像化作品も多数。2018年逝去。

「2022年 『箸墓幻想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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