- Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041616512
感想・レビュー・書評
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日活無国籍アクション映画を進化させた冒険小説。
「俺たちは天使だ」(1979)、「探偵物語」(1979)や「プロハンター」(1981)に興奮し、コナン・ドイル、イアン・フレミングやフリーマントルで世界の扉を開いた気でいた頃。この本に出会い、こんな小説があるのか、とそれまでの娯楽小説を陳腐化させた本。
上巻だけで、カンボジア、香港、ドイツ、フランスと舞台が移動し、当然、人物もその土地の人間に加え、英国人、米国人などが登場するが、主人公は日本人である。翻訳小説でなら時折あったが、日本人の小説で、いくつもの国籍の外国人が登場し、人物が描かれ、違和感が無かったのは、多分、初めての経験だった。
田中康夫以前に、武器、宝飾、自動車、ホテルなどの固有名詞をたくさん登場させ、情景描写、性格描写に使うことも、国産小説ではあまり見たことが無かった。
1980年にやっと中学生だった私にとっては、中華街と欧米の映画、翻訳小説しか、現代世界を感じることなど無かった。
奥手、初心といえばそれまでだが、カンボジアとベトナムの区別は地図帳のちょっとした左右の違いしかなく、C46、M16、450SL、フローラン・ルイ、スマイリーなどはそれが飛行機、ライフル、車、酒、人物を示しても、価格も意味も、全くわからないことだらけ。辛うじて、ハッシュ・パピーの靴が履く英国のスパイが分かった位だ。
ライフル撃った、三八式を撃った、AKを撃った、セーヌの左岸と右岸の違い、注釈も無ければ、地の文で説明もしない。しかし、それが意味することは、歴史、政治、社会、経済、文化的に異なり、教科書に書いている事以上に覚えるべきことは多く、そしてそれは魅力的なことを、netも無ければ、街でLVの鞄をそうは見なかった頃、ようやく遅ればせながら、実感した。
広辞苑を横に置いても、固有名詞の多くは出てこなかったが、この本のお蔭で、車、米国以外の諸外国、ファッションなどに興味が広がった。
そんな読み方は、二十歳を過ぎた大人はしないだろうし、かなり個人的な体験だろう。ただ、四十を過ぎても固有名詞を含む細部に拘って破綻の無いこの小説は、大変興味深く、この水準の冒険小説はそう多くないことは請け負う。
巌窟王、深夜プラス1、ハヤカワミステリの冒険小説が好みなら、是非。
1983にカドカワノベルス、1986に角川文庫で読了。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
はっきりいって格好良すぎます!!その辺のハードボイルドなんて軟弱に思えるくらい、しびれます。また題名が鳥肌立つくらい格好いい!!!!
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