悪夢喰らい (角川ホラー文庫)

著者 :
  • 角川書店
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感想 : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041626122

感想・レビュー・書評

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  • この本を最初に読んだ時、面白い!と思い夢中になり、その後何度も読み返しました。
    今でもこの本は私にとってはお気に入りの一冊です。

    ジョギングを日課とする男は、ある日同じようにジョギングをする老人に初めて「お先に」と声をかけた。
    その後、彼は背後にピタピタという足音を聞く。
    その声の主は囁く。
    ”もっともっと-”
    頭に響く子供の声にせかされるように男は走る。(鬼走り)

    ひとをからかうのはおもしろい。
    酒の席で上司をバカにしていた所を、バカにしていた当の本人に見られた男。
    男はその後、久々に一人で春山を登山する。
    途中雨に降られた男は山小屋を見つけ避難する。
    そこに次々と男女がやって来て、血の饗宴が始まる-。(ことろの首)

    人が死んでから49日間とどまるという、あの世でもこの世でもない処、中有に漂う男の話。(中有洞)

    人からいつも無視される存在感のない男。
    実はその男には不思議な力があり、慰安旅行で同僚たちの話からある秘密を知った事と暴力がきっかけとなってその力が目覚めてしまう。(のけもの道)

    人が誰でも一生に一度はやってくる骨董店。
    そこにはその人が昔失くしたものが揃っており、そこで一つだけ買い戻す事ができる。
    画家になるのが夢だった男の取り戻した物とは-。(骨董屋)

    全9話の不思議で奇妙で恐い短編集です。
    私がこの中で一番印象に残っていた話は、「八千六百五十三円の女」です。
    無職の青年はある日、街角で十代と見える少女を連れた初老の男と会う。
    その男は、青年にこう切り出す。
    「この娘を買っていただきたいのです」
    実は男本人がちょうど一ヶ月前、見知らぬ男から彼女を買ったのだと言う。
    男はさらにこう言う。
    「この娘を買った者は、買った日から数えて28日以内に、この娘をまた別の者に売らねばなりません。しかも、必ず、自分が買った時より、高い値で売らねばならないのです。」
    男の言う通り、少女を買った青年はすっかり少女に溺れてしまい-。

    ほどよい恐怖。
    ほどよい残虐さ。
    ほどよいグロテスク。
    そんな黒い話があふれるほどに詰まった一冊です。

  • 夢の世界やふとした時空の歪みなんかは好き
    骨董屋に入るまでの行動や霧の中の登山などのさりげないところからふっと世界が変わるところが好き

    堕天使のSFなんかは肌にあわない

  • あまりの読みやすさに驚いた。
    多分自分にあった小説なんだろう。

    どれも面白かったけど、のけもの道、突然のSF謎展開に戸惑った四畳半漂流記で作者の幅広さを知り、霧幻彷徨記のふとした美しさなどが好みだった。

    なんとなく見かけたからリストにないけど買ってみたのが正解だった。

  • 夏の角川ホラー文庫祭。角川ホラーにしては、割と表紙デザインが好き。

    夢枕獏の短編集。ショートショートみたいなものから、時空の歪で抜けられなくなる軽いSFまで、たくさん網羅している。また、夢枕獏と言うと山モノ(でいいの?)なので、登山関係が半分くらい。

    角川ホラーなのに、文章はちゃんとしていて、話の内容もちゃんと怖くて意表を突かれた。大御所の作品だから当たり前だろうと言うところはあるが、ホラー方面は、古典的な怪談を、そのまま現代にもってくるだけではなく、きちんと現代風に調理してから書かれていて好感。比較は誰とは言わないけど。

    また、SFものは、インパクトはそれほどないものの、きちんと「なぜそうなった」が考えられているあたりも良い。

    ただ、もともと角川文庫から出ていた同名の本から、数作削って作られたとのことが最後に書かれているが、そういうところは角川ホラーなんだよな。良い作品の最後でがっかりさせる。

    というわけで、ホラー文庫版でない方がオススメ。

  • 中有洞 | 骨董屋 | 霧幻彷徨記

  • 救いようのない気味悪さが暑い季節にぴったり! 「これ思いつきで書いて途中でやめただろ!」とツッコミたくなるようなものや、「日本昔ばなし」のような教訓めいた短編も入っていたりして、とにかく夢枕獏の独特な魅力がつまっている作品だと感じた。個人的には結構好き。

  • 「悪夢喰らい」夢枕獏
    オカルトホラー。乳白色。
    獏さんのエキス満載短編集。

    あまり特筆する作品もないかと思いますが、暗澹として濃密で異常な猥雑さをもったホラー、が主です。
    確固たる矜持というか、独特の世界観がバックに構築されているから、引きずり込まれる感覚が自然だと思います。
    あとは、ホラーといってもトラウマになるような怖さはないかと思います。人間臭さのある短編ばかり。
    和やかって意味ではないですけれどね・・・。

    角川ホラーでの再文庫化のものを読んだのですが、20年前の作品とは思えないような新鮮かつ斬新さ。かな。
    収録作のなかでは「霧幻彷徨記」が好きでした。
    ホラーとは銘打ってありますが、SF色も魅せてくれる作品です。

  • 3.5

  • 朝のジョギング。脳内に子供の声が響く。“―もっと速く、もっと、もっと―”子供の声に急かされ死に向うように走り続ける男たちを描いた「鬼走り」。ほんの些細な超能力を持つさえない男が激しい怒りを覚えた時、力が暴走し始めた―後の一連の伝奇バイオレンス作品の一端が垣間見える「のけもの道」など7篇収録。山好きの著者のこともあり、山を舞台にした作品が3篇含まれているのも特徴と言えるか。

    初版は今から18年前だったとのこと。その際のあとがきで著者は自らの真情と希望とを、「雨月物語」になぞらえて書いている(詳しくは文庫の解説を参照されたし)。ともすれば「キマイラ」「闇狩り師」「餓狼伝」等々、伝奇やアクションものの作家とのイメージを抱いてしまいがちだが、その根底には日本人の心底にある恐怖というものへの並々ならぬリスペクトがあったのだなぁ、と再確認。それが昨今の「陰陽師」ブームへの火付け役を担うことにもなったのかも(ちなみに未読)。

  • ジャケ読み
    07.12.11

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著者プロフィール

1951年、神奈川県出身。第10回日本SF大賞、第21回星雲賞(日本長編部門)、第11回柴田錬三郎賞、第46回吉川英治賞など格調高い文芸賞を多数受賞。主な著作として『陰陽師』『闇狩り師』『餓狼伝』などのシリーズがあり、圧倒的人気を博す。

「2016年 『陰陽師―瀧夜叉姫― ⑧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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