- Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041690178
感想・レビュー・書評
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戦争篇の続きであるが、この篇では懐かしい風水師黒田茂丸と、満映の女優出島弘子、戦争篇にも顔を見せた甘粕正彦が話を牽引する。
今となっては想いを馳せるのも難しい満州という国、その首都新京を舞台に、地下に潜む鬼を巡ってそれぞれの思惑が交錯する。中国の魔術についての描写が面白い。
黒田が常識的な人物な為か話の展開が受け入れやすく読みやすい。満州という今もう見ることのできない街の描写への興味や、妙に脂の乗った感じがある怪奇描写のおかげか、帝都物語最終巻であるにも関わらずこれ一巻だけでも結構面白い読物として成立している感がある。
勿論背後で全てを掌握しているのは加藤保憲なのだが、この巻ではそういう側面より辰宮恵子に対する加藤の思いの強さの方が印象に残る。
このシリーズを読んでいて、書かれた当時の時代の空気のようなものを思い出す。うまく言えないが、終末への憧憬みたいな、カタストロフを求めるような気分がどこかに漂っていた気がする。
少なくともこの巻には他の巻よりも色濃くそんな雰囲気が立ち込めていて、読後に当時のことを色々と思いかえしてしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者が書きたかった満洲。地下大防空壕建設中に現れた鬼。本編の東京地下鉄道工事での鬼との攻防の再燃だ。魔人・加藤は、時に中国反乱軍の頭領、時に皇帝溥儀に取り入る商人に姿を変えて暗躍するが、本編に比べスケールが小さくなった感じ。また、恵子が関東軍に捕らわれた際の加藤の行動は、まさにこの物語の主人公ではないか! 結末はソ連侵攻で玉砕を覚悟する関東軍・山中少佐の電報で終わる。いささか竜頭蛇尾の感は否めない。
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帝都物語〈12 大東亜篇〉 (角川文庫)
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新京が、人口の都市で、なので風水師のやうな、ちゃんとした街に関するデフォルトが入ってるをっさんが迷ふとか、その都市を人体にパラフレーズして、ナニとかソレとかすると言ふのは、めまいがするやうな面白さはある。
スクリーミングおねいさん、なんかホラーものに出てくる、そこ行っちゃいかんだろ的な所へわざわざ行くやうな娘さんがなんかアレ。